先月、奈良市がDV被害者の住所を誤って、別居中の加害者に渡す事案があったと発表した。
DV被害者はたとえ逃げたとしても、居場所がバレ、再び連れ戻されることもあり日々怯えて生活している。
逃げる選択をした人達、また、逃げたいと悩んでいる人達に、社会は逃げ道をどう作るべきなのか。『ABEMA Prime』では、DV夫、毒親から逃げている当事者に話を聞いた。
■DV夫から逃げる選択をした当事者

「逃げることが人生で一番大変だった」と話すのは、あおいさん(40代)。過去に元夫からDV被害を受けていた。「交際してるときは全く分かんなくて、入籍したすぐ後から様子がおかしくて無視をされる、暴言・暴力もあるし、『子供を取るぞ』という脅しを日常的に行う人だった」。
子どもへの虐待、彼女の家族にまで暴力を振るうなどエスカレート。限界を感じ、遂に逃げることを決意した。「相手が仕事に行っているうちに、親戚が迎えに来てくれて本当に必要最低限で(他は)家に置いたまま離れた場所に逃げようということになった」と振り返る。
しかし、「事情を知らない身内から情報がバレて追いつかれた。無理矢理連れ戻されて、絶望に近く、もう諦めなきゃいけないのかなと思った」。自宅に戻った後も、DVはさらに激化したという。
その後は、再び相手が出勤中に子どもと逃走。児童相談所に駆け込み、保護を受けている。今も場所が特定される心配はあるものの、「はっきりとわかっていないと思う」と語った。
■精神的に追い詰める毒親から逃げる当事者

逃げる被害者は、DV以外も…。希空さん(30代)が逃げた相手は、ヒステリックに怒鳴り、精神的に追い詰める毒親だった。「もう殺すか死ぬかしかないと思った。でも逃げ出したら少なくともプラス1日は生きられると思った」。
親が不在の隙をついて、最低限の荷物を持ち、行く当てもないまま1人で逃げたが、「住まいの確保が結構難しく、選択肢がネットカフェかマンスリーになってくる。当然だが、お金がめちゃくちゃかかってしまう。持ち出したお金は、その月に使い果たした」と明かし、キャッシングで生活している。
現在も見つからないために、転々とする日々。しかも、持病がありすぐには働けなかったため、行政に頼ろうとしたが、「『いわゆる身体的DVがない、かつ配偶者の問題ではないので取り扱えない』。あちこち電話をかけているような状態だ」という。
金銭面に関しては「親の家賃まで私が払っている状況なので、かなり重たい」と話した。
■「全てを捨てて逃げるぐらいの覚悟をしないと難しい」

支援団体「ラフェリーチェ」代表の穂志乃愛莉氏は、DV夫については「職場や学校を変えずに通ってしまうと、やはり相手に追跡される恐れが高い」といい、「日本においては家庭内で離婚成立前だったら、明らかな暴力ではなく、『覗いている』とかだと、警察は捕まえることができないと思う」。
相手から追跡を受けないためには、「本当に全てを捨てて逃げるぐらいの覚悟をしないと、なかなか難しい現状がある」と述べた。
毒親の場合は、「最終的には介護で呼ばれてしまったり、相続で呼ばれてしまうことで、夫婦が別れるよりもうまくはいかない。どこかで繋がってってしまうのがあるというのが親子の難しさだ」。
また、「行政での支援がないことから、金銭的に苦しい方は確かに多い。だが、私たちのような支援施設の証明書を出すことで住所非開示を取ることができる。あとは寄り添いながら、『今離れてるから安心だよ』と、第三者から声をかけてもらうなどのメンタル面の支援が非常に大事だと感じている」と続けた。
弁護士の南和行氏は、「やっぱり逃げ出す局面になるのは、もうピークが来ちゃったわけだ。あまり意味がないかもしれないが、分籍という手続きは、戸籍を分けるだけ。でも、親の子分みたいな形の書類じゃなくなっただけで少し楽になる人もいるし、離婚が成立した途端に、今まで怖いと思っていたことが、言い返せる気になった人もやっぱりいる」との見方を示した。
(『ABEMA Prime』より)
