社会

ABEMA NEWS

2025年11月9日 09:30

医療費削減の重要項目「OTC類似薬の保険適用除外」は実現可能か 薬代高騰への不安も ひろゆき氏「始まってしまえばジェネリックによって安くなる」

医療費削減の重要項目「OTC類似薬の保険適用除外」は実現可能か 薬代高騰への不安も ひろゆき氏「始まってしまえばジェネリックによって安くなる」
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 日本維新の会が医療費を4兆円削減し、現役世代の負担を年間6万円減らすことを目標としている。そのために病床削減とともに進めようとしているのが、「OTC類似薬の自己負担見直し」だ。連立を組む自民党の高市早苗総理も、国会でこれについて言及した。

【映像】こんなに違う!OTC類似薬と市販薬の価格

 OTC類似薬は、市販薬とほぼ同じ効果ながら、医師の処方箋が必要な薬だ。現在は保険適用により患者負担は1〜3割だが、維新は適用から外すことで、数兆円規模の医療費削減につながるとしている。一方で、日本医師会などからは、反対の声も大きい。果たして適用除外は実現可能なのか。『ABEMA Prime』では維新議員と医師と考えた。

■日本人に求められる「セルフメディケーション」

OTC類似薬

 維新が掲げている4兆円の削減案は、「OTC類似薬を医療保険の対象から外す(効果は1〜数兆円)」、「全国150万のベッド数を11万減らす(効果は1兆円)」、「年齢にかかわらず収入・資産に応じて医療費を負担する(将来的に高齢者も3割負担に)」といった内容だ。

 作家で維新の参議院幹事長である猪瀬直樹参院議員は、自民、公明との3党合意を取りまとめた。「日本は医薬品の生産側が強く、消費者側が非常に弱い。日本は社会主義国家的なところがあり、常に生産側が優位になっているが、物事は『利用者に役立つか』で見る必要がある」。

 そして、「OTC類似薬は薬局で買えるような薬ばかりだが、『医師の処方箋がないと買えない』となると、大した病気でなくとも診察してもらうことになる。そうなると、診察費やあらゆる薬で、クリニックがもうかる構造ができる」と、現状の問題点を指摘する。

 「ふらいと先生」こと新生児医・小児科医の今西洋介氏は、「世界の流れとしては、賛成せざるを得ない。アメリカでもOTCが普及し、市販薬の価格もかなり安い。市場作用が働き、求めやすくなったので、そうした方向に行けばいい」と感じている。

 一方で「95%が反対というアンケート結果もある。持病のある人や、社会的弱者の場合には、負担が大きくなるという指摘も、一部の専門家から出ている。そのあたりの一時的なサポートは必要になるだろう」とした。

 WHO(世界保健機関)による“セルフメディケーション”の定義は、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」で、厚生労働省は「国民の自発的な健康管理・疾病予防の取り組みの促進・医療費の適正化にもつながる」としている。「風邪かなと思ったら栄養ドリンク剤を飲んで早めに休む」「頭痛などの場合、市販薬を飲む」「ケガをしたらばんそうこうを貼る」などが、その例だ。

 猪瀬氏は、現状の医療現場における課題として、「医師と薬剤師、看護師、理学療法士などのタスクシフトができていない。日本の薬剤師は、人口比で世界一の数がいる。相談すれば解決できる問題はいくらでもあるが、日本は縦割りのギルド(職業別組合)になっていて、全部開業医の所へ行く」と語る。

 今西氏は、医師の視点から「薬を出すことだけが僕らの仕事ではない。情報を得ながら、診断を付けることが大事だ。ただ、日本はあまりにもセルフメディケーションの意識が低い。とはいえアメリカのように、セルフメディケーションが進みすぎて重症化するパターンもあるため、バランスは必要だ」と話した。

■保険適用除外したら薬の値段は高くなる?安くなる?

セルフメディケーション

 OTC類似薬と市販薬の価格を比較した。アレルギー性鼻炎(1日1錠、28日分)の場合、OTC類似薬の一部負担額は170円(アレジオン錠20)なのに対して、市販薬の価格は2000円(アレグラFX)と12倍になっている。同様に、去痰(1日3錠、7日分)は60円(ムコダイン錠500mg)が2500円(ムコダイン去痰錠Pro500)の42倍、解熱鎮痛(1日3錠、4日分)は40円(ロキソニン錠60mg)から700円(ロキソニンS)の18倍、皮膚炎(1調剤、10g)は60円(ベトネベート軟膏0.12%)が2000円(リンデロンVs軟膏)の33倍となる。

 近畿大学情報学研究所所長の夏野剛氏は「市販薬は需要が少ないから高い。OTC類似薬の方が安いから、みんな医師に診察してもらう。需要が増えれば、値段が下がる。おそらくコストの約8割が、物流と在庫などの流通で使われている」と考える。

 ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「『アレルギー性鼻炎薬が2000円はもうかるから』と大量に出回れば、結果として安くなり、『処方してもらっても、薬局で買っても変わらない』となる。始まってしまえば、ジェネリックが大量に出て価格はどんどん下がる」と予想する。

 しかしながら、「持病の薬を処方箋でもらっていた人の医療費が増える」という側面もある。「高額療養費制度で返ってくるのは、あくまで保険対象の治療に関してだけだ。アトピー性皮膚炎の治療薬が保険適用外で自腹になると、医療費が上がってしまう人もいる」。  こうしたケースについて、猪瀬氏は「それはお医者さんに行けばいい。例外をもって、原則を否定してはダメだ。ひろゆき氏が言ったような例が出てきたら、お医者さんへ行き、それでも治らなければ大病院へ行けばいい。ただそれだけの話だ。そもそもの医療体制はできている」と返す。

 夏野氏はこれに同意し、「持病がある人は、定期的な診断が必要だ。症状悪化の有無によって、処方する薬の量も変わる」としつつ、「そうではなく、『ちょっと熱が出た』『腰が痛い』といったケースだ」とする。

 猪瀬氏は「行かなくてもいいのに行く回数が多い“頻回受診”がある。75歳以上は1割負担で安い人が多いため、頻回受診が多くなる。それを減らすだけでも、医療費はかなり削減できる」といった課題も示す。「アメリカではOTCが競争で、どんどん安くなっている。日本では『お医者さんに行くと7割引になる』と錯覚しているが、その保険料は自分たちが払っている」。 (『ABEMA Prime』より)

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