全国でクマによる被害が深刻化しています。群馬県みなかみ町では、冬眠を前にリンゴ園を荒らす巨大なクマの姿が見られました。
リンゴ食べ…カメラの向きを変えるクマ
10日、番組が向かったのは、今年だけで5人のクマ被害が出ている群馬県みなかみ町。出迎えてくれたのは、クマの被害に悩まされているリンゴ園のオーナー。先月20日から連日クマが出没し、旬を迎えたリンゴが食い荒らされているといいます。
クマの接近を防ぐため、花火を鳴らし、園内へ案内してもらいました。
農園の至る所に、クマにかじられたと見られるリンゴが散乱していました。さらに、オーナーを悩ませているのが…。
「こういう」
「(Q.あの枝が下のですか?)そうですね」
クマが木に登った際、その重さに耐えきれず折れてしまったという枝。ここまでの被害は初めてだといいます。
「(Q.被害額は?)1本の木で、5、6万円以上いっちゃう。それが今6、7本やられているから(約40万円以上の被害)。変な話、クマさんに来ないでくださいって頼むしかないですよね」
太い枝を折るほどの巨体を持つクマとは、一体どのようなクマなのでしょうか。
先週末、番組はオーナーに許可をもらい農園内に4台のカメラを設置。すると翌日、カメラを設置した時とは逆を向いていました。クマの仕業なのでしょうか。映像を確認してみました。
深夜3時、目を光らせて現れた一頭のクマ。ムシャムシャと音を立てながら、落ちていたリンゴを食べています。
すると次の瞬間…カメラの存在に気づいたのでしょうか、クマが設置したカメラに触れ、向きを変える様子まで映っていました。
同じ時間帯、別のカメラにも丸々と太ったクマの姿が。その巨体を揺らし、午前4時半ごろまでクマは農園内を歩き回っていました。
「暗闇で目が光っていて怖いね。やっぱり山では会いたくないって言ったらそれだけですよ」
映像を見た専門家は、次のように話します。
「(クマの大きさは)もう冬眠前の最大級ぐらいになると思います。かなり太っていて、栄養状態がすごく良いなっていうのは思います。人のものにかなり依存した個体は、もしかしたらいつまでも冬眠しないで、人の生活圏にあるものを餌(えさ)として認識して出没する可能性は高いと思います」
山内准教授によると、この状態が続けば冬眠時期である12月を過ぎてもクマが出没する恐れがあるといいます。
別のリンゴ園では、クマによって柵が壊される被害がありました。頑丈な柵でさえ、クマの力に耐えきれず破壊されてしまったといいます。
間もなく終わるリンゴの収穫期。ただ、山内准教授は引き続き、警戒を続ける必要があると指摘します。
こうした中、10日、みなかみ町によると、リンゴ農園の近くで一頭のクマが捕獲されたといいます。カメラに映っていたクマかどうかは分かっていませんが、町では依然として警戒を強めているといいます。
「緊急銃猟」すでに18件
全国でクマの被害が相次ぐ中、10日、富山県砺波市では住宅の敷地内の納屋にクマが居座る事態に。ハンターが銃を構え、その横で警察官でしょうか、大きく足を広げて身構えます。すると…。
「弾当たった」
警察などによると、地元の猟友会が「緊急銃猟」を実施し、2発を発砲してクマを駆除したということです。
入り口にはクマの足跡がくっきりとありました。駆除されたのは、体長およそ1メートルの成獣のメスだったということです。
「(Q.日頃ここに何が?)農機具入っていて、ここはジャガイモとか野菜。におい嗅いで、それか寒かったから入っていたのかな。とにかく家の二階へ上がりなさいという指示が、私のところに来た」
山形県酒田市でも10日、住宅の敷地内にある柿の木にクマ2頭が登っているのを付近の住民が見つけました。周辺では他にもう1頭いるのが確認されていて、その後市長が緊急銃猟を許可。合わせて3頭が駆除されました。
緊急銃猟は9月に制度が始まり、わずか2カ月あまりの間に全国で18件の実施。このうち最も多い5件に上るのが秋田県です。
10日、鹿角市で散歩中の80代の男性が体長およそ1.2メートルのクマに襲われました。
「(被害者は)左のこめかみのあたりと、もものあたりをひっかかれていた。こっちはやっぱり血が出ていて救急車を呼んだ」
襲われた男性の命に別状はありませんでした。
今年5月からツキノワグマ出没警報が出続けている秋田県。これまでに60人以上がけがをし、4人が亡くなっています。
教育現場に深刻影響 まるで「コロナ禍」
長きにわたる異常事態。教育現場にも影響が及んでいます。
「あの壁面の所に子グマが下から登っているところをここから見ていた」
先週、鹿角市の中学校では校庭にクマが出没。その中学校から目と鼻の先にある、尾去沢小学校では10日、児童の登校前の午前7時すぎ、校長自らクマを寄せ付けないための対策を行っていました。
「あそこで(クマが)出たんですよ。ここは通り道になっているので。クマの通り道ですね。まず、ここで1回鳴らします」
登校日の朝は欠かさず行うクマ対策。およそ20分、学校の周囲400メートルで爆竹を鳴らすなど対策を行った校長。それでも万全を期すため、児童は保護者が車で送迎しています。
「(クマが)近くまで出ているので(学校の)玄関まで送らないといけないと思っています。いつどこで(クマが)出てくるか分からないので」
9月下旬に始まった保護者による児童の送迎は、すでに1カ月以上続いています。
「普通であれば、外で中休みなど友達同士で遊んだりとか。土日も自由に遊んだりとか。それをまず禁止しているというのが、子どもたちには気の毒だなと思います」
現在、尾去沢小学校では屋外での活動は原則禁止。
「コロナ禍の時の制限にやはり近づいてきているというか。本当に正解が見つからないので、コロナ禍の時のように、本当にできることをやっていくというしか方法はないんじゃないかなと思っています」
別の小学校では、相次ぐクマ出没から苦渋の決断も。
校舎の裏に伐採された木が地面に横たわり、その横にはクリの実が大量に転がっています。
「クマが来ないように、本校にある立派なクリの木を2本切らせていただきました」
伐採された2本は樹齢30年以上。子どもたちにとって季節を感じる良い教材だったことから、これまで残していたものの、先月伐採を決断。
「何しろこの状況でクマが頻繁に出没するので、児童の安全を考えると、残しておくわけにはいかないなと判断しました。命あるものを切らなければいけないし、残念だなって思います」
市民生活に影「夢に出る」
市民の生活にも、暗い影を落としています。
「ちょっと精神的に外に出るのが怖いみたいなお話は、年配の方は特に。おちおち車じゃないとやっぱり。歩きだと買い物に出るのも怖いとか聞きます」
「私は本当に怖いですね。孫たち、子どもたちが襲われるようなことになったらどうしようと…」
こう話すのは、自宅の周りでクマの痕跡を何度も見ている70代の夫婦です。
スマホには、クマの出没を知らせる市からのメールが大量に届いていました。
「とにかく自分で自分の身を守りなさいという」
夫婦が自宅を出る際、必ず行うクマ対策があるといいます。
「こういうのを使います。こんな状態です」
「(Q.家出るのも、かなり警戒するような?)怖い感じがします」
外に出るたびに笛を吹き、フライパンで音を鳴らすことを行っているといいます。
86歳の女性は、日課の散歩も気が気ではありません。
「(Q.で、もう一回振り向く?)こういう所とか見て、歩いて」
「(Q.街中でも、それぐらい気になっちゃう?)その辺にも出ることなんぼもあるから。文化施設、あそこにも出たりするし。パトカーがたまにクマが出たって、気をつけろって。でも、やっぱり恐怖です」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月11日放送分より)























