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2025年11月11日 19:43

リンゴに執着“巨大グマ出没”なぜ果物被害相次ぐ?専門家解説

リンゴに執着“巨大グマ出没”なぜ果物被害相次ぐ?専門家解説
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 相次ぐ市街地でのクマ出没に警察が本格視察に動きました。木の実などを餌(えさ)にするクマがなぜ果物に執着するのか。そこには今年ならではの理由がありました。

クマ対策本腰 警察が出没地視察

 群馬県みなかみ町のリンゴ園に設置したカメラが記録していたのは、巨大なクマがリンゴを頬張る様子と、その咀嚼(そしゃく)音でした。そしてカメラに近付くと、クマの息遣いまで聞こえてきました。

リンゴ園オーナー
「暗闇で目が光っていて怖い。やっぱり山では会いたくない。それだけです」

 連日のように人里に現れるクマ。対策が進められています。13日からは警察官によるライフル銃を使ったクマの駆除が可能に。それを前に…。

警察官
「クマ対策にかかる現地確認を始める」
警察官らによる視察が行われた
警察官らによる視察が行われた

 盛岡市役所の目の前を流れる川では、対応する警察官らによる視察が行われていました。

先月クマが出没
先月クマが出没

 この場所は先月、クマが出没。

盛岡東警察署 吉田知明署長(先月23日)
「現在も富士見橋約北方100メートルの地点、東岸沿いをゆっくり歩いている」

 住民に被害が及ばないように警察が指揮をとり、警戒にあたっていた場所でした。

猟友会
「ここにクマが出たという想定ではありますが、実際、クマは水も泳ぎます。川も泳ぎますし、急な崖も登ります」

 11日はその緊迫の現場で地元猟友会のメンバーからクマの特性や、市街地でライフルを使う際の注意点などの説明がありました。警察官からの質問も…。

警察官
「クマは今回だと最初はやぶから、でも動き始めるとずっと行動しますよね」
猟友会
「なかなか難しい。ですから、我々猟友会でよく言われているのは、山だと1発目外しても2回、3回も撃てる。ところが街中の場合は1発で仕留めないといけない。1発撃って外してその辺で暴れると大変なことになる」

柿やリンゴなど食い荒らす

 11日も各地でクマの出没や被害が相次いでいます。

何かを食べているツキノワグマ
何かを食べているツキノワグマ

 午前3時ごろ、何かを食べている様子の大きなツキノワグマ。これは富山市が設置したカメラが捉えた映像です。

鎖でつながれた犬がクマに連れ去られる
鎖でつながれた犬がクマに連れ去られる

 秋田市では、鎖でつながれていた犬が体長1.5メートルのクマに連れ去られるのを、住民が目撃していました。

柿の木の近くにクマが出没
柿の木の近くにクマが出没

 山形県米沢市では柿の木の近くにクマが出没。警察によりますと、近くを散歩していた75歳の男性が、後ろからクマに襲われました。顔や肩をひっかかれましたが、意識はあり会話はできる状態だということです。

 やはり柿の木にクマが引き寄せられているのは間違いなさそうです。

柿の木に登るクマ
柿の木に登るクマ

 秋田県大館市、時間帯は夕方です。トラックが走る道路沿いの木には、クマのシルエットが。柿の木に登る1頭のクマです。表情はうかがえませんが、じっと体勢を変えずにいます。  

撮影者
「(体長)1メートルないサイズだと思う。そこの畑は持ち主が高齢化して、ほぼ管理していない状態」
柿の木に居座るクマ
柿の木に居座るクマ

 福島県の喜多方市でも、名産の柿の木にクマが居座る様子が撮影されています。

撮影者
「会津地方はみしらず柿が特産だが、それぞれの家に(柿の木が)最低1本ある。ほったらかしになっている所もあちこちにある」

 撮影した人によると、周囲にはあちこちにクマが木の上で座るために枝を折ってつくる「くま棚」ができていたそうで、クマが柿の木に長時間居座っていたとみられます。   

クマ出没時の誘引物
クマ出没時の誘引物

 全国的な傾向かは分かりませんが、兵庫県内を調査したデータでは、クマを人里に引き寄せる原因となる“誘引物”は71%と圧倒的に「柿」が占めていました。ただ、それぞれが10%にも満たない「柿」以外の果物にも、今年は数多くクマが引き寄せられています。

クマが立ち上がり狙っているのは…
クマが立ち上がり狙っているのは…

 暗闇の中、2つの目が白く浮かびあがります。ツキノワグマです。ここは、山形県上山市の果樹園です。クマが立ち上がり狙っていたのは、意外な果物です。

 この「実」の形、洋梨です。

狙われていたのは「洋梨」
狙われていたのは「洋梨」
長沼果樹園 長沼由紀さん
「ツリーに飾るベルをイメージしたような、シルバーベルってクリスマスごろに食べごろになる大きい洋梨」

 これまでもクマの出没はありましたが、今年は異常な頻度で「シルバーベル」や「ラ・フランス」など重さにして2トンを超える食害に遭ったそうです。

長沼さん
「(シルバーベル品種の)8割食べられてしまって(被害額は)100万円くらいいくのかな」
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なぜ果物に執着?“巨大グマ”も

 さらに、被害は関東の果樹園でも。群馬県のみなかみ町。クマの接近を防ぐため、花火を鳴らし、案内してもらうと…。

クマにかじられたリンゴ
クマにかじられたリンゴ
リンゴ園のオーナー
「こういう被害が出ている」

 そこには、かじられたリンゴが…。

カメラを設置
カメラを設置

 リンゴ園のオーナーに許可をもらい、先週末、4台のカメラを設置しました。

 すると、翌日…。

リンゴを頬張るクマ
リンゴを頬張るクマ

 映像を確認してみると、巨大なクマの姿が。画面中央にクマはいます。クリアに聞こえるのは、クマが落ちていたリンゴを食べる咀嚼音。音だけでなく、はっきりとリンゴを頬張るクマの顔も映っています。

 そして、カメラの方に近付くと、カメラの存在に気付いたのでしょうか。クマが設置したカメラに触れ、向きを変える様子まで映っていました。 

別のカメラにもクマの姿が
別のカメラにもクマの姿が

 また同じ時間帯、別のカメラにも丸々と太ったクマの姿が。まるで、ヒグマのような体型のツキノワグマに、専門家は…。

岩手大学農学部 山内貴義准教授
「もう冬眠前の最大級くらいになる」
リンゴや柿などは腹持ちは良くない
リンゴや柿などは腹持ちは良くない

 本来、リンゴなどの果物は水分が多く、クマにとって腹持ちが良いとは言えないはずですが…。

山内准教授 
「相当頻繁に訪れていて常習的になり、これだけ体重を増やしているのでは」

 なぜ果物に執着するのでしょうか。専門家は執着せざるを得ないのが実情だと話します。

専門家「山に相当餌がない状況の表れ」
専門家「山に相当餌がない状況の表れ」
山内准教授
「脂肪をたくわえるのはドングリ、ブナのほうが効率はいい。ドングリが豊作の年は秋だったら全然(果物に)来ない。それだけリンゴに依存しているのは、山に相当エサがない状況の表れ」
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