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2025年11月11日 19:34

クマは急増でもハンターは減少…“ハンター育成”の最前線

クマは急増でもハンターは減少…“ハンター育成”の最前線
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 急増するクマ、一方でハンターの数は年々減少しています。その人手をどう確保するのか。ハンター育成の最前線を取材しました。

警察“クマをライフル駆除”へ

 各地の市街地でクマの出没が止まりません。

 福井県にある福祉施設の駐車場に走って現れたクマ。体長1メートルほどの成獣とみられます。

 近くには小学校や商業施設もあり、警察などが警戒を続けています。

 13日から、警察官がライフル銃を使ってクマを駆除できるようになることを受け、岩手県では、11日、警察官らが先月クマが出没した場所を視察しました。

河川敷にクマが出没
河川敷にクマが出没

 盛岡市役所の近くの河川敷に、先月23日、クマが出没。草むらを走り抜けたり、川を泳いだり。クマは神出鬼没の動きを見せます。

 警察や市の職員が警戒を続けるなか、クマは住宅街のほうへ移動し、姿を消しました。

 岩手県では、県外の警察から機動隊銃器対策部隊の4人が派遣されています。

 11日は、この隊員らに、猟友会のメンバーが市街地でライフルを使う際の注意点などを説明しました。

猟友会のメンバーが市街地でライフルを使う際の注意点などを説明
猟友会のメンバーが市街地でライフルを使う際の注意点などを説明
猟友会
「市内で銃を撃つ場合は“跳弾”が一番危険。街中の場合は1発で仕留めないといけない。1発撃って外してその辺で(クマが)暴れると大変なことになる」
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「命かけて時給1000円じゃ…」

 クマ対策の最前線にいる猟友会は、11日も対応に追われています。

 岩手県の花巻市猟友会の会長を務める、藤沼弘文さん(79)です。

藤沼弘文会長
藤沼弘文会長
「今向うのは、クマが柿の木に登って柿を食べているといつも報告がある場所」

 パトロールに向かう矢先、市役所の担当者から電話が。

市役所の担当者から電話
市役所の担当者から電話
猟友会
「どこ?」
市の担当者
「午前中の案件と似ているが、花巻南高校の近くで、高速道路側の所で子グマが1頭、水路の方に下りていったと」
猟友会
「さっきのだな。分かりました」
市の担当者
「よろしくお願いします」
猟友会
「向かいます」
「そっちに向わないと」

 クマの目撃情報があった現場へ向かいます。

藤沼会長
「きょうの朝出たクマ。子グマ。いつもこんなだ。次から次へと」

 高校の近くで子グマが徘徊(はいかい)する、緊急事態です。

「子グマがいると親グマは必死になって守ろうとする。子グマの行く先に人がいれば猛烈に襲ってくる」
目撃された場所の周辺では警察が警戒
目撃された場所の周辺では警察が警戒

 子グマが目撃された場所の周辺では、警察が警戒しています。付近を捜索したものの、結局クマの姿は見当たりませんでした。

ベテランハンター 菅実さん
ベテランハンター 菅実さん

 花巻市猟友会に所属する、菅実さん(74)。ハンター歴50年のベテランは、クマの出没が今年は異常に多いと驚いています。

菅さん
「いつもの倍じゃない。3倍、4倍。一般の人たちもクマを見ているし、それだけ危険も迫っている」

 実際、クマの個体は年々増えてきています。

クマの個体は年々増えてきている
クマの個体は年々増えてきている

 環境省の調査では、岩手県で、クマの推定個体数が2013年度には1100頭だったのが、7年後の2020年度には3700頭と3倍以上になっています。

ハンターの数は足りていない
ハンターの数は足りていない

 一方で、ハンターの数は足りていません。全国組織の「大日本猟友会」によりますと、クマに有効な散弾銃やライフルを扱える会員は、1974年度に37万人だったのが、2024年度には5万6577人まで減少しています。

 さらに、会員の高齢化が課題で、およそ10万人のうち60歳代以上が6割を超えるといいます。

 重たい箱わなの運搬や設置は重労働。さらに、クマがわなにかかった時の対応は危険も伴います。クマを駆除した後の処理も猟友会が行っています。

「危険を帯びて危険手当が1000円」
「危険を帯びて危険手当が1000円」
「『1時間1000円の手当が出ます』と言われて。こういう山に来て危険をおかして、自腹切ってまで駆除したって1時間1000円。危険を帯びて危険手当が1000円。ちょっと成り立たない」

 自治体から手当は出るものの、危険と隣り合わせの任務と見合っていないと訴えます。

 ごみの集積所にクマが侵入。盾を構えた警察官と、猟友会のメンバーが対応しています。

飛び出てきたクマ
飛び出てきたクマ

 猟友会が小屋の扉を開けた瞬間。ごみ袋の脇からクマが飛び出てきます。警察官が盾で防ぐと、クマは小屋の中へ。

 しばらくすると…再び、クマが突進してきます。一歩間違えれば、クマに襲われ、大事に至る危険が常につきまとうのです。

「クマ1頭で5万円10万円出すなら考え方が変わるかもしれないが、結局クマが出たから『猟友会退治せよ』ってだけ。クマ退治のための猟友会じゃない。でも今は結局猟友会に頼らないといけない状態。猟銃を持っているのは猟友会しかいないから」

 住宅から近い林に仕掛けられたたシカのわなにクマがかかった時の映像です。中央の木の裏にクマが潜んでいます。連絡を受けた猟友会が状況を確認。

シカのわなにかかったクマ
シカのわなにかかったクマ
猟友会
「大きい。大きい」
突然クマが威嚇
突然クマが威嚇

 すると、次の瞬間。突然、クマが威嚇してきます。幸い、くくりわなにかかっていたため、襲われずに済みました。

菅さん
「クマだって生きている。自分たちだって生きている。人間が怖いから、クマからみれば。だから刃向かってくる。いざ(クマが)立ち向かって『なんだ人間って弱いな』と思うと、次からどんどん攻めてくるようになる」
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“ハンター育成”の最前線は?

射撃訓練をする人たちの姿
射撃訓練をする人たちの姿

 クマと対峙するハンターの需要が高まるなか、11日、兵庫県にある“ハンターの育成施設”では、狩猟やクマ対策に備えて、射撃訓練をする人たちの姿が。

 ハンター歴60年の男性(83)は。

「今緊急銃猟があるでしょう。町内でライフル銃持っているのは私一人。実費で出動要請があった場合、練習して失敗しないようにきょう来た。人命に関わることだから、我々はやっぱり行く」

 課題は、ハンターの高齢化です。

兵庫県立総合射撃場 藤本恵一朗場長
兵庫県立総合射撃場 藤本恵一朗場長
兵庫県立総合射撃場 藤本恵一朗場長
「クマの緊急銃猟を市町村から委託を受けて撃つハンターは、それなりの技術が求められるので、若く高い狩猟技術持つ人の育成は急務と感じる」

“義務はないけど守りたい”

 岩手県で、ベテランハンター・菅さんがクマ対策の見回りをしていると…。

クマ対策の見回りをしていると…
クマ対策の見回りをしていると…
菅さん
「すごく立派なシカだね。最近のシカじゃないか」
「これがオスね」
「(Q.太っている?)だってエサを食える。草食うから」

 近年、増加しているシカが、エサを求めて人里の近くまでやってくることも、クマの出没に関係しているといいます。

「結局こういうシカはここを縄張りにしている」

 わなにかかったシカを狙うクマ。近年、人里の近くまで、シカが出没していることで、獲物を追うクマが、市街地まで行動範囲を広げている可能性が指摘されています。

「一般の人たちを危険な目にあわせたくない」
「一般の人たちを危険な目にあわせたくない」
「俺らも民間人の安全を確保してやらなければならない。ところが実際はそういう義務は俺らにはない。だけど、一般の人たちを危険な目にあわせたくないと猟友会はみんな思っている」
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