急増するクマ、一方でハンターの数は年々減少しています。その人手をどう確保するのか。ハンター育成の最前線を取材しました。
警察“クマをライフル駆除”へ
各地の市街地でクマの出没が止まりません。
福井県にある福祉施設の駐車場に走って現れたクマ。体長1メートルほどの成獣とみられます。
近くには小学校や商業施設もあり、警察などが警戒を続けています。
13日から、警察官がライフル銃を使ってクマを駆除できるようになることを受け、岩手県では、11日、警察官らが先月クマが出没した場所を視察しました。
盛岡市役所の近くの河川敷に、先月23日、クマが出没。草むらを走り抜けたり、川を泳いだり。クマは神出鬼没の動きを見せます。
警察や市の職員が警戒を続けるなか、クマは住宅街のほうへ移動し、姿を消しました。
岩手県では、県外の警察から機動隊銃器対策部隊の4人が派遣されています。
11日は、この隊員らに、猟友会のメンバーが市街地でライフルを使う際の注意点などを説明しました。
「市内で銃を撃つ場合は“跳弾”が一番危険。街中の場合は1発で仕留めないといけない。1発撃って外してその辺で(クマが)暴れると大変なことになる」
「命かけて時給1000円じゃ…」
クマ対策の最前線にいる猟友会は、11日も対応に追われています。
岩手県の花巻市猟友会の会長を務める、藤沼弘文さん(79)です。
パトロールに向かう矢先、市役所の担当者から電話が。
「どこ?」
「午前中の案件と似ているが、花巻南高校の近くで、高速道路側の所で子グマが1頭、水路の方に下りていったと」
「さっきのだな。分かりました」
「よろしくお願いします」
「向かいます」
「そっちに向わないと」
クマの目撃情報があった現場へ向かいます。
「きょうの朝出たクマ。子グマ。いつもこんなだ。次から次へと」
高校の近くで子グマが徘徊(はいかい)する、緊急事態です。
子グマが目撃された場所の周辺では、警察が警戒しています。付近を捜索したものの、結局クマの姿は見当たりませんでした。
花巻市猟友会に所属する、菅実さん(74)。ハンター歴50年のベテランは、クマの出没が今年は異常に多いと驚いています。
「いつもの倍じゃない。3倍、4倍。一般の人たちもクマを見ているし、それだけ危険も迫っている」
実際、クマの個体は年々増えてきています。
環境省の調査では、岩手県で、クマの推定個体数が2013年度には1100頭だったのが、7年後の2020年度には3700頭と3倍以上になっています。
一方で、ハンターの数は足りていません。全国組織の「大日本猟友会」によりますと、クマに有効な散弾銃やライフルを扱える会員は、1974年度に37万人だったのが、2024年度には5万6577人まで減少しています。
さらに、会員の高齢化が課題で、およそ10万人のうち60歳代以上が6割を超えるといいます。
重たい箱わなの運搬や設置は重労働。さらに、クマがわなにかかった時の対応は危険も伴います。クマを駆除した後の処理も猟友会が行っています。
自治体から手当は出るものの、危険と隣り合わせの任務と見合っていないと訴えます。
ごみの集積所にクマが侵入。盾を構えた警察官と、猟友会のメンバーが対応しています。
猟友会が小屋の扉を開けた瞬間。ごみ袋の脇からクマが飛び出てきます。警察官が盾で防ぐと、クマは小屋の中へ。
しばらくすると…再び、クマが突進してきます。一歩間違えれば、クマに襲われ、大事に至る危険が常につきまとうのです。
住宅から近い林に仕掛けられたたシカのわなにクマがかかった時の映像です。中央の木の裏にクマが潜んでいます。連絡を受けた猟友会が状況を確認。
「大きい。大きい」
すると、次の瞬間。突然、クマが威嚇してきます。幸い、くくりわなにかかっていたため、襲われずに済みました。
「クマだって生きている。自分たちだって生きている。人間が怖いから、クマからみれば。だから刃向かってくる。いざ(クマが)立ち向かって『なんだ人間って弱いな』と思うと、次からどんどん攻めてくるようになる」
“ハンター育成”の最前線は?
クマと対峙するハンターの需要が高まるなか、11日、兵庫県にある“ハンターの育成施設”では、狩猟やクマ対策に備えて、射撃訓練をする人たちの姿が。
ハンター歴60年の男性(83)は。
課題は、ハンターの高齢化です。
「クマの緊急銃猟を市町村から委託を受けて撃つハンターは、それなりの技術が求められるので、若く高い狩猟技術持つ人の育成は急務と感じる」
“義務はないけど守りたい”
岩手県で、ベテランハンター・菅さんがクマ対策の見回りをしていると…。
「すごく立派なシカだね。最近のシカじゃないか」
「これがオスね」
「(Q.太っている?)だってエサを食える。草食うから」
近年、増加しているシカが、エサを求めて人里の近くまでやってくることも、クマの出没に関係しているといいます。
わなにかかったシカを狙うクマ。近年、人里の近くまで、シカが出没していることで、獲物を追うクマが、市街地まで行動範囲を広げている可能性が指摘されています。

















