13日から警察官によるライフルを使ったクマの駆除が可能となります。これを前に11日、秋田県と岩手県では『銃器対策部隊』らの研修が行われました。一方で、駆除したクマをどう処理するのか。現場では急増に対処しきれない新たな問題も浮上しています。
柴犬くわえ 小屋ごと連れ去りか
秋田市では11日も市街地でクマが目撃されました。
「犬ちょっと騒いだから居間からのぞいたら、小屋と犬一緒に引きずられた感じ。見たことないくらいの大きさ」
市内ではクマが犬小屋を襲いました。小屋は10メートルほど離れた所まで引きずられ、近くにはクサリも落ちていました。クマは小屋にいた柴犬を咥えて、そのまま山へと連れ去ったとみられます。
ライフル使用を前に現地研修
13日から始まる警察官のクマ駆除を前に、県内では各地から派遣された機動隊『銃器対策部隊』らの視察が行われていました。今年4月からすでに30件以上、人身被害が報告されている岩手県では、先月23日にクマが出没した河川敷で、課題を説明。盛岡市は緊急銃猟の準備ができておらず“追い払い”に徹しました。
「猟銃を所持した方も配置できないかという依頼もあったが、その時は準備ができず、麻酔と追い払いで対応する方針でした」
実務を前に現場では具体的な質問も。
「今回の事例だと最初は草むら。ただ動き始めるとずっと行動しますよね。動いている時は」
「なかなかむずかしい。街中の場合は1発で仕留めないといけない。1発撃って外して、その辺で暴れると大変なことになる。跳弾が一番危険です。クマを射殺する場合は親の方から仕留めてください。子を先にやると親が向かってきます」
各地で被害 関東ではリンゴ園に
山形県米沢市では、散歩をしていた男性が体長約80センチのクマに襲われ、右の頬や肩を引っかかれるけがをしました。現場の周辺の柿の木は枝が折られ、実が食べられたような跡がありました。
被害は関東でも。今年5人のクマ被害が出ている群馬県みなかみ町。クマが上ったリンゴ園の木は重さに耐えきれず、無残な姿に。その巨体は監視カメラに捉えられていました。目を光らせ、はっきり聞こえる咀嚼(そしゃく)音。さらに、監視カメラ気付いたのか、クマがカメラを動かす仕草も収められていました。
「1本の木で(被害額は)5〜6万円以上いっちゃう。それが今6〜7本やられている」
今年度、本州に生息するクマのうち5366頭が、北海道では617頭が駆除されています。
ヒグマ出没の円山公園 全域閉鎖
「朝から作業したかったものが少し遅れたりしてきているので、なんとか間に合わせるように頑張りたいが影響は出ている」
札幌の中心部にある円山動物園。休園期間中の園内に11日もまたクマが忍び込みました。建物に入ろうとしているのか、窓枠にしがみつくような姿。周辺では積もった雪に足跡がくっきり残されていました。クマの出没により、円山公園全域で24日まで閉鎖せざるを得ない状況になっています。
「殺されるのはかわいそうと思ってしまうが、こっちへ来ると怖い気持ちが分かるような気がする」
処理施設では“対応 追い付かず”
仮に緊急銃猟で対応したとしても、ヒグマを処理する現場では新たな問題が持ち上がっていました。北海道の上ノ国町役場で職員が冷凍庫から運び出していたのは、ハンターによって解体されたヒグマです。
(Q.どれほどの大きさの個体)
「大体90キロぐらい。主には骨や内臓、頭部や毛皮の部分」
今年はヒグマの数が多く、冷凍庫に入りきらないこともあるといいます。
トラックで向かったのは隣の江差町にある、ごみ処理施設。ペットなど小動物を火葬するための焼却炉があります。上ノ国町など5つの周辺自治体で駆除されたヒグマの焼却を行っています。駆除したヒグマをその後どうするのかは、それぞれの自治体判断です。この施設で焼却するヒグマの数を聞くと。
「もう異常、今年は。去年は30頭くらいだった。今年はすでに110頭弱、来ている。4倍近く来ている」
処理能力を超える数が持ち込まれるのは初めてで、埋立地にそのまま埋めざるを得ないケースも出ています。さらに。
(Q.1度の焼却にどれくらいの灯油を)
「クマだと100リットル近く」
(Q.燃料の消費は)
「去年で年間3000リットルくらいだった。もう現時点で6000リットル。倍くらいになっている」
去年の灯油代は40万円ほどでしたが、今年はすでに80万円を超えています。ヒグマは大きく、それだけ燃料費もかさみます。これまで上ノ国町で駆除されたヒグマは昨年度の16倍となる96頭。過去最多となっている事態に、町役場の職員は。
「やはりクマばかりが仕事じゃない。農業・林業・畜産とあるなかで、普段の仕事が回らないという事態。やはり異常としか捉えようがない」
駆除したクマは食べられない?
クマの駆除数が増えるにつれて、どう処理するかという問題も出ています。駆除したクマを食肉にするという選択肢はないのでしょうか。
「駆除するクマはエサを求めて人里に下りてくる。脂がのっておらず、肉質が良くない」
「仕留めてから、すぐに処理をする必要があるので、他の市町村からの持ち込みは難しい」
「仕留めてから1時間以内に処理施設に持ち込むことが望ましい」
「食肉にするためには、菌の増殖などが進む前に速やかに処理施設に持ち込む必要がある。腹が撃たれているものは衛生的なリスクがあり、血抜きが適切に行われていないものは肉質が低下する」
つまり、駆除したクマを食肉にするのは簡単ではないといいます。
飲食店で食べられるクマ肉とはどう違うのでしょうか。実際にクマ肉を提供している飲食店に、どこから仕入れているのか聞いてみました。
「店で扱うクマ肉は、北海道や長野などの処理加工施設から仕入れている。できるだけ質の高い肉を確保するために、ハンターがどのエリアで獲ったクマなのかも把握していて、お互い信頼関係でやっている」
さらに、処理や加工も非常に厳しく管理されています。国や自治体などによると、クマやシカ、イノシシなどはジビエ処理加工施設で処理しなくてはいけません。全国に約820のジビエ処理加工施設がありますが、保健所で食肉処理業の許可を取る必要があります。加工する場合は食肉製品製造業などの許可も必要ということです。
また、クマを処理する場合には、天井が高くて広いなど、クマの大きさに対応することが必要です。また、銃で捕獲するため、弾を検出する金属探知機などの機械が必要になることもあり、全ての施設でクマの処理ができるわけではありません。
食肉としての活用を考えていくとしても、こうした施設や、クマをさばいて食肉にする技術を持った人材の確保が難しく、課題が多いようです。
























