体重160キロを超える巨大なツキノワグマ。餌(えさ)を求め人里に活動範囲を広げています。一方で高い学習能力を活かし、巧妙にわなをよけるクマも。
クマ捕獲“最前線”に密着
「全部入っていた」
箱わなにかかったのは、親子のクマ3頭です。母グマが息を荒げて威嚇。岩手県盛岡市で、地元の猟友会が撮影した映像です。
クマの捕獲にあたる猟友会は、常に危険と隣合わせです。14日も、番組はクマ対策の最前線を取材。
猟銃を持って見回りに向かうのは、岩手県の滝沢猟友会会長を務める、佐々木幸文さん(75)です。
「(Q.きょうは何カ所?)2カ所。デントコーン畑と住宅街」
「クマが(山から)下りてくる通り道がある。住宅街に入る前に(わなに)かかるように設置」
「(今年は)令和5(2023)年度から2倍以上増えている」
住宅のすぐ近くに設置した箱わなにクマがかかっているか、猟友会が確認に行きます。クマはかかっていませんでした。
猛スピードで走るクマ。滝沢市の中学校では8月にクマが出没。部活に来た生徒たちが急いで避難します。クマは、校舎の中にも侵入していました。
同じ月に猟友会が牛舎の近くで捕獲したクマです。木の板を爪でひっかき暴れています。
「100キロある」
凶暴さを見せる巨大なツキノワグマが、次々と人里に現れています。
「だんだん大きくなってきた」
「腹が下がっている。すごい」
この巨大なツキノワグマが箱わなに入る瞬間をカメラが捉えていました。
クマの腹に注目。地面につきそうなほど、脂肪がたっぷりと垂れ下がっています。体重は165キロ。その重さにクマの専門家も驚きを隠せません。
「率直な感想はびっくりした。こんなに大きな太った個体がいるのかと。私の経験上これほど大きいのは見たことがない。普通は最大120キロくらい。120キロのクマを見るのも岩手では珍しい。160キロ強となると私は経験がない」
このクマは、近くの牛舎で牛の餌を食べていたとみられます。
「山にはエサがないので、これだけ体を大きくできるとすると、家畜の餌。牛を太らせるための栄養価の高い濃厚飼料を大量にクマが食べてしまうと、過剰にカロリーを短期間でとれるので、これだけ体重を増やしてしまう」
翌日、別のわなにかかったクマも、体重が168キロでした。
「これもすごい腹をしている」
人間とクマ“知恵比べ”
生身の人間では太刀打ちできない、巨大なツキノワグマ。
驚異的な身体能力だけではなく、高い学習能力も持ち合わせています。猟友会が仕掛けたわなを避けるクマもいるといいます。
「年齢を重ねると学習している。(わなに)入らないで周りをグルグル回っていなくなる。私たちと知恵比べ、最近のクマは」
学習能力が高いクマと、人間の知恵比べ。ヒグマが生息する北海道でも。
「驚くべきことが起きています。中のエサがない」
入り口が開いたまま、上から吊り下げていたシカ肉だけがなくなっていました。箱わなの上には、ヒグマが。
「おそらくこのヒグマは、箱わなに入るのは危険だとすでに学習しているヒグマ。入り口から入らず(わなの)上からシカ肉を引っ張り、餌として取っていった。これはどうしようもない。(クマとの)根比べ」
翌日、安全を確保して動作を確認すると正常に閉まります。その3日後、箱わなにヒグマがかかっていました。
「箱わなに上がっていたヒグマか確認します」
すさまじい、うなり声。
「かなり暴れています。初めて人を近くで見たのでしょうか」
「写真に写っていたヒグマとは違うかもしれない」
捕獲したクマは、体長2.3メートル、体重は230キロです。箱わなに乗っていたヒグマと同一個体なのでしょうか?
「大きさに違いがあることと、箱わなの上に上がり餌をとるヒグマが安易に中に入ることはないと思う。同一個体でないと判断したほうが間違いない」
地元猟友会が今年捕獲したヒグマは16頭。まさに、「根比べのクマ対策」が続いています。











