17日も親子グマが住宅地の柿の木に居座りました。クマと人との距離をどう安全に保つのか、番組ではこれまでに人身被害が出ていない街を取材しました。
親子グマ、柿の木に居座り
雨が降る中、岩手県岩泉町の中心部にある住宅街に現れた2頭のクマ。柿の木に登っています。親子のクマとみられます。
太い枝の上にいるのが、母グマでしょうか。その下側にいるのが、子グマとみられます。
警察が警戒にあたる中、母グマが頭を前に出して、柿の実をほお張ります。子グマも、実を食べようとしますが、実が落下。さらに枝から落ちそうになる様子も。
通報があったのは、午前6時ごろ。親子のクマは、およそ半日、柿の木に居座っています。
「困ったもんだな。こんなことは今までなかった。よほど山に食べるものがない」
岩泉町は住宅などに被害が及ぶ恐れがあるとして、「緊急銃猟」での発砲は実施できないとしています。
260kg超“巨大ヒグマ”捕獲
恐怖を覚える、うなり声。北海道共和町で、先月、捕獲された巨大なヒグマです。体重は266キロ。
人里に現れる「アーバンベア」が急増する中、どのようにして人への被害を減らしていくのか。
番組の取材班が向かったのは、北海道の西部に位置する共和町です。
週末に、町が開いた「鳥獣対策講座」。クマ対策にあたる猟友会のメンバーなどが参加しています。
「ヒグマも例年以上に被害が増えている。箱わなも仕掛けたけど、なかなか入らなかった」
倶知安町で、猟友会の部会長を務める小松さんです。
今年、地元ではヒグマによる農作物の被害が相次いでいるといいます。
猟友会はこれまで、山と人里の境界に箱わなを設置してヒグマを捕獲してきました。
おりの中で暴れるヒグマ。鋭く長い爪を持っていることが分かります。
危険と隣り合わせの捕獲作業。対応にあたる猟友会の人手は足りていません。
人里で、人とクマが接触しないようにするため、北海道の自治体などが今、力を入れている対策の一つが「ゾーニング」です。
今月6日には、橋の上に巨大なヒグマが現れ、車に突進。さらに、子連れの母グマが襲ってくる事態も起きています。
ゾーニングとは、こうした被害をなくすために「人の生活圏」と「クマの生息域」をしっかり分けるという考え方です。
クマ「人身被害ゼロ」の秘密
ゾーニングの対策を取り入れることで、クマの人身被害が出ていない町がありました。
訪ねたのは、北海道岩見沢市の原田勝男さん(85)です。
原田さんは、農水省が登録する「農作物野生鳥獣被害対策アドバイザー」として長年、ゾーニングに取り組んでいます。
「私のゾーニングの第一は無駄な駆除をしない。無駄に動物を減らさないこと。わなをかけるにしてもゾーニング、動物と人間のすみ分けをしている」
ゾーニングの対策では、人とクマとのすみ分けを図るため、4つのゾーンに分けて、それぞれ対応を変えていきます。
住宅街などではクマを入らせない対策を取り、もし入ってきたら、すぐに対応します。
クマの出没が相次ぐ今年は、新たな対策として、自治体の判断で行う「緊急銃猟」が行われています。
畑や田んぼなどが広がるゾーンは、クマを寄せつけない対策です。そして、今後、クマ対策のカギを握るのが「緩衝地帯」と呼ばれる、山と人里の境界です。このゾーンで、「問題を未然に防ぐ」ことが重要とされています。
今年9月、緩衝地帯に設置した箱わなに、ヒグマがかかった時の映像です。
岩見沢市では、原田さんが所属するNPO法人「ファーミングサポート北海道」などがクマの捕獲にあたっています。
山奥から人里のほうへ近づいてくるクマを境界で捕獲することで、被害を未然に防いでいるといいます。
ただ、体が大きく、力が非常に強いヒグマが暴れると、箱わなが壊れてしまう危険もあります。そのため、箱わなの安全対策を強化しています。
クマの恐ろしさを知る原田さん。25年前、シカ猟で山に入った時にヒグマに襲われ、左目の視力を失いました。
岩見沢市は、猟友会やNPO法人と連携して「人の生活圏」と「クマの生息域」のすみ分けを進めてきました。その成果もあり、「クマによる人身被害ゼロ」を実現しています。
「実際に今年箱わなで27頭すでに捕獲している。箱わながなければクマが里にくる。それを箱わなで防止している」
共和町で行われた「鳥獣対策講座」に原田さんは講師として参加。
クマなどの鳥獣と人との境界線について、これまで培ってきたゾーニングの知識と経験をハンターたちに伝えました。
クマによる人の被害を減らすため、これからもゾーニングによる捕獲を続けていくといいます。
「放っておくとどんどんクマは人間の世界に入ってきても良いと誤解する。(クマが)出てきたらすぐおりを持って行って、その先になるところでおりをかけて捕獲する。先手を打っていかなければダメ」
ただ、必要以上の捕獲は望んでいません。
















