社会

ABEMA NEWS

2025年11月18日 07:15

台風から1カ月も…八丈島の復興は長期戦 必要な支援は?舛添元都知事「もう少し機動的に動けないか…町議会の意見を」

台風から1カ月も…八丈島の復興は長期戦 必要な支援は?舛添元都知事「もう少し機動的に動けないか…町議会の意見を」
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 先月、2つの台風で八丈島は甚大な被害に見舞われた。1カ月が経った現在も、復興の遅れが深刻な問題となっている。

【映像】言葉を失う八丈島の“悲惨な光景”(現地の様子)

 八丈島は東京都心から約290キロ、人口約6700人の離島。相次ぐ台風22号・23号により土砂災害は約100カ所、建物被害は約600軒に及び、一時は約2700軒が断水した。島内ではいまも生活も産業も大きな影響を受けている。

 ABEMA的ニュースショーが現地を取材。「木が折れて山肌が見えている状況」「木がなぎ倒されている。根っこからもいっている」。八丈島パークホテルでは「屋根がすべて吹き飛んでいる。はがれ落ちている。むき出しに……」と爪痕がいたるところに残っていた。

 ゲストハウス「HOTEL SUI -翠碧-」も深刻な被害を受けた。東京諸島リビングサービスの持丸沙代子代表は「大きな穴が開いてましたので、雨風をしのぐために応急処置として(パネルを)貼っている」「室外機が壁と一緒に崩落した状態で使えなくなっている」と説明。開業7日前に台風被害に見舞われ、「雨戸やドアが壊れたり、すべての建物で屋根がはがれていて、このままだと雨漏りしてしまう。公的支援がない状態では廃業せざるを得ない」と訴えた。

 「ロッジ わいるる」も、8部屋中3部屋が破損。加藤桂丞支配人は「ここの上が落ちたところ。そこから水がバーって入ってきて、中の天井が崩れ落ちた」と明かす。キャンセル作業に追われており「きのうは風で飛行機が飛ばなかったので、延泊されるお客さんと来られなくなったお客さんでちょうど相殺した感じ」と、厳しい状況を語った。

 最も被害が大きかった南東部の末吉地区。当初避難所に指定されていた旧末吉小学校にも土石流が押し寄せ、建物を破壊。けが人こそ出なかったものの、19人が再避難した。

 八丈町役場によると、台風による災害廃棄物は約3万6000トン。倒壊した家屋なども含め、約11年分に匹敵する量になると見込まれている。

 断水の影響は島の主要産業にも大きな被害をもたらした。6年前に移住してきた、レモン農家「kimi レモン」の吉田公新さん。一般のレモンの倍以上の大きな実をつける八丈島のブランドレモン「八丈フルーツレモン」は皮ごと食べられ、驚くほどみずみずしくほんのり甘い。ハウス栽培で丁寧に育てあげたレモンは、1玉2500円以上の値をつけることもある。

 「ここのハウスだけで(水を)1週間で20トン使う。水の出るところから往復して、実際に使用する量の3分の1とか4分の1ぐらいの量で、だましだまし繋いできた。今年は贈答用は取りやめ」と語る吉田さん。現在ハウスと水は復旧したが「見習いでずっと1年間来ていた方が、将来希望が持てないという感じで離島して……。収入がない状態で出費が続いているので、ちょっときついところはある」と、リアルな実情を明かした。

 「藍ヶ江水産 干物食堂」の高山広海店長は「いやーきつかったですね。漁協の機械が断水だったので、氷が作れない。保管するところもないので。一次産業が止まっちゃうと、何も回ってこない」と振り返る。

 漁協の断水と冷凍設備の故障で、漁は1か月停止。ようやくカツオや地金目鯛がメニューに。高山さんは「完全復興というわけにはいかないが、徐々に元気を取り戻してくるみたいな。そういう感じは嬉しい」と語った。

 観光客に人気の「ゆーゆー牧場」も深刻な被害に見舞われた。島で唯一残る酪農事業者、リードホテル&リゾートの歌川真哉代表は「上のほうにある子牛のいるエリアの小屋が全部風で飛んでしまったので、ひとまず仮で単管とトタン屋根をつけて復旧してありますけど、これを直さなきゃいけない」と嘆く。

 さらに断水の影響で搾乳した牛乳を殺菌できず、大量に廃棄せざるを得なかったという。牧場とホテルを経営する歌川代表。現在営業は再開したが「お客が完全に戻ってくるのはたぶん、来年の夏ぐらいだと思うので、それまでに1億5000万円ぐらい売り上げが落ちる」と語った。

 なかには資金繰りに苦しみ休業、廃業を余儀なくされた人も。八丈島生まれの「アットアイランド」伊藤奨代表理事は、台風被害に遭った事業者の支援を始めた。「わらをもつかむじゃないけれど、手元の資金がショートしてしまいそうだったりとか、今月末、来月末、3か月後生き残れるか、みたいな事業者さんも、50社以上話を聞いているが、かなり厳しい状況の方々もいる」と現状を説明。

 伊藤さんが伴走役となり始めたクラウドファンディングは現在7社が参加。2つのプロジェクトで目標を達成した。伊藤さんは「八丈島の経済がこれを機に停滞してしまうことが大きな問題。『本当は続けたいけど、事業を続けられない』といったリアルな声を集めて、一体何に困っているのか、どういうところが足りないのか。実は助けられる人がいるのであればマッチングするとか、そういうことが唯一できるのかなと」と語った。

 そんな支援を求めているお店が町中華の「菜々屋」だ。創業27年、ラーメンが自慢の島民に愛されるお店だが、台風で壁がはがれ落ち、屋根もすべて吹き飛びほぼ全壊状態に。店内には厨房機器が散乱。調理台や食器など使えそうなものは運び出したが、ほとんどが使えない状態。建物の修繕と電気工事だけで約1400万円かかるという。

 菜々屋2代目店主の土方克哉氏は「(お店に着いたのが)お昼ごろぐらいですかね、たどりついた時には全部なかったので『あぁない!』って、ビックリしましたね。こんなことがあるんだなと思って」と振り返る。罹災証明では「半壊」という判定で思ったより支援金がもらえず、伊藤さんに助けを求めた。現在は335万円の支援金が集まった。

 「ゴールがどこにあるのかわからない」と語った土方さんだったが、毎日建物の修復に力を注いでいる。「島の人たちがすごく助けてくれる。毎日誰かしら声をかけてくれる。おにぎりを持ってきてくれたり、弁当を持ってきてくれたり」と語った土方さんについて、伊藤さんは「地域の信頼、愛着があるから力強い応援が集まった」とし、「長距離走だと思うので、得意な人が得意なことを生かして、できる範囲で貢献できるみたいな。そういう場づくりみたいなことも頭に入れてやっていきたい」と再建への思いを語った。

 東京都の支援金はおよそ8億円。それだけではとても賄えないのが実情だ。

 この状況について元東京都知事の舛添要一氏は「どうやって現場の声、現場の要望を汲み取るかが必要。八丈町の議会の議員はいっぱいいるので、私が知事だったら最初にやるのは彼らに意見を聴取する。地元だから、地元の住民が何が欲しいかがわかるはず。町議会の議員の話が全然出てきていない。相当頑張っていると思う。その意見をきちんと東京都の方で汲み取っているのかどうなのか」とコメント。

 その上で「今、東京都の予算は9兆円を超えている。9兆1500億円ぐらいだ。今の都の方針として2つ柱があって、1つは子育て、もう1つは災害対策をやろうとなっている。災害対策は、事前に災害に遭わないようにする町づくりはいいが、こういう状況になった時に復旧をどうするかはもう少し機動的に動けないのか。現場は一生懸命やっていると思うけれど…」との見方を示した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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