今警察への相談が急増している「男性へのDV」。警察庁によると、ここ5年間で、男性からの相談件数が、およそ1.5倍に増加しているという。
【映像】10歳年下の妻から包丁を投げられたDV被害者(顔出し)
DVといえば、女性が被害者というイメージが強いが、被害者に話を聞くと「物を投げられるとか近くにいたらビンタされたり…」「肩であったり、背中であったり、感情にまかせて殴る。ときには蹴る」「近くを通っただけで舌打ちされたり、『お前には生きる価値もない』って言われた」。
専門家によると、DV=暴力ではなく、支配・非支配の関係があるのかどうかが、判断基準になるとのこと。
男性へのDVについて、Xでは「最近知って驚いた。もっと社会に周知すべき」「被害が増えているのではなく、これまで無視されてきただけ」「表に出ているのは氷山の一角なのかもしれない」などの声があがっている。男性へのDV被害は、今後どう受け止め、対処すればいいのか。『ABEMA Prime』では、実際に被害に遭った当事者とともに考えた。
■10歳下の結婚相手から包丁を投げられた被害者

10歳下の結婚相手からDVを受けた島村和宏氏は、「もうDVは大体受けた」と話す。「言葉による暴力、罵倒、身体的暴力、包丁を投げられる、スピーカーを使って殴られるとかもあった」。
「入籍してから徐々に罵倒からエスカレートして暴力になってきた」といい、暴れる理由については「嫉妬」だったそうだ。島村氏は「当時女性が多い職場に勤めてたので、それで『嫉妬して、イライラしちゃう』と言われた。『(仕事を)辞めたら落ち着く』と言ったので、仕事は辞めた」。しかし、暴力や罵倒は収まらなかった。
逃げ出すにも「男性用のシェルターが少ない」。警察に通報したこともあったが、「(警察は)2つに分かれて話を聞かれるが、僕が話したことよりも、妻の方を信じてしまった。警察では、おとなしくなったみたいで、泣きながら、『とんでもないことをしちゃった』と言ってたと聞いたので、信じてもらえなかった」。
島村氏は「元々離婚はしたかった」が、「加害者は暴力を振るいながらも、相手が好きなので、まず離婚届にサインしない」ことから協議離婚は難しく、「調停もやったが、男女別々に話すから、僕の言うことは信じてもらえなかった」と調停離婚もできなかった。
しかし、「他の方から『暴れたときに離婚届を出せばいい』とアドバイスをいただいて、3枚用意していた。それで暴れたときに『書いて』と言ったら、本当に書いてくれたので、そのまま提出した」と現在は離婚が成立している。
■栄養失調で心肺停止状態になった被害者

5歳上のパートナーから食事を与えられないなどのDV被害を受け、栄養失調で心肺停止状態になったこともある山田さん。DV被害について、「いきなり心肺停止になることはないが、それまでに徐々に徐々に削られていって、最終的に体重がかなり落ちて、食べられない状態になった」と振り返る。
また、言葉と物理的な暴力があり、包丁の柄で目や喉を殴られ、そのせいで声は変わってしまった。DVについては「結婚する前で、一緒に住み始めてから2、3カ月後」だったといい、20万円の借金があることを打ち明けたことがきっかけだったという。
そこから、「相手との約束事で、自分が日頃の生活でひとつひとつ丁寧にできなかった場合の罰として、『あなたは多分食べることが1番好きだから、それを抜くことが1番いいと思う』と言われて始まった」と説明した。
時期については、「今年の1月ぐらいからエスカレートして、倒れたのが今年の3月の頭だ」。仕事については、「僕はずっとリモートで仕事ができるタイプだったが、相手は仕事をしてない。『やりたいことがあるから、フリーランスで頑張る』と言うが、結局あまり行動には移さず、稼ぎは実質自分だった」と明かす。
パートナーについては、「洗脳かもしれないが、機嫌が良くて、普通に優しいときもあった」と述べた。
■「絶対に暴力を振るう側の責任で、加害者に原因がある」

DV被害者支援団体「白鳥の森」理事、山口凜氏は、男性へのDV被害について、「『どうして逃げられなかったのか』と、一般の方は感じられると思うが、徐々に洗脳状態が強まっていく」と話す。「2人っきりで、孤立させられて、周りの意見が全くない中で『お前が悪い』と言われ続けると、『やっぱり自分が悪いんじゃないか?』『自分が頑張れば、この状況を打開できるんじゃないか』みたいな発想に陥ってしまう」。
そして、「DVは加害者の問題だ。『被害者側には何も問題ない』と言うと、『絶対夫婦なんだからお互い様の部分がある』と思われるが、暴力が容認される理由なんてない。だから、絶対に暴力を振るう側の責任で、加害者に原因があると思う。被害者側は『結婚するまでわからなかった』っていう方がほとんどなので、本当に交通事故に遭うぐらいの感覚だ」と訴えた。
対策としては、「『この関係が少しおかしい』『日常がすごく辛い』とか感じたら、家庭の中で人権侵害が行われているので、自分の心に正直になって外部に助けを求める、支援機関に相談するなどの行動を起こしていただきたい。また、身近にちょっと様子がおかしい方、痩せてきたような人がいないかとか、『被害に遭う』っていう視点をもって見ていただきたいと思う」とした。
(『ABEMA Prime』より)
