安倍晋三元総理大臣を銃撃し、殺害した罪などに問われている山上徹也被告(45)の被告人質問が20日に始まった。証言台に立った山上被告は、自分は「生きているべきではなかった」と述べた。
量刑が最大の争点か
まずは、山上被告の家庭環境についてみていく。
冒頭陳述書や裁判での母親の証言によると、山上被告の家庭は次のような状況だったという。
アルコール依存症で自宅療養をしていたといい、1984年に山上被告が4歳の時に自殺。
【母親】
旧統一教会の信者で、総額約1億円を献金し、自己破産している。
【長男(山上被告の兄)】
脳腫瘍(しゅよう)を患い視力障害があり、献金に反対し母親に暴力を振るうことがあったという。2015年に自殺している。
【次男】
山上被告
【長女】
山上被告の妹。
父親の死後は、祖父の家で生活していた。
裁判では、山上被告の生い立ちが事件の動機にどれだけ影響したかが一つの焦点となっている。今回、裁判の最大の争点とみられているのが量刑だ。
弁護側は、「被告の生まれ育った環境は“児童虐待に当たるべき”ということで、刑の重さを判断する際に十分考慮されるべき」としている。
一方、検察側は「不遇な生い立ちではあるが、犯罪をふみとどまれなかったこととは関係なく、刑罰を大きく軽くするものではない」という立場だ。
祖父「母親を殺害して自分も死ぬ」
20日の被告人質問では、山上被告が自ら生い立ちについて語った。
質問に先立ち、山上被告が2020年1月、SNSに「俺が14歳のとき、家族が破綻した」と投稿していたことが触れられた。14歳=中学2年生の時に一体何があったのか。
山上被告は「中学に進学して、どんな生活でしたか」という質問に対し、「中2で統一教会のトラブルが始まるまでは順調だったと思います」と答えた。そして、「中2になって入信を知ったのですか」と聞かれると「はい」と答えた。
当時何があったのか。母親が祖父の不動産を無断で売りに出そうとしたといい、山上被告や家族は、旧統一教会への多額の寄付を母親がしていると確信したという。山上被告は20日、こう述べている。
「母が帰ってきても入れないように、鍵を閉めて隠して『母親抜きでやっていく』と言われた」
また、母親について「基本的に悪い人間ではないが、統一教会に関わることは理解しがたいことが多々あった」と述べた。
一方、妹については、次のような思いを語った。
長男死亡時「遺体のそばを離れなかった」
20日の被告人質問では、母親だけでなく、兄に対して抱いていた特別な思いも浮き彫りになった。
山上被告は大学進学の断念について語った際、自分は海上自衛隊に入隊しながら、兄が受験勉強を継続したことに関して、こう述べた。
また、妹は長男についてこう証言している。
刃物を振り回したり、階段から突き落としたという。
その長男が死亡した際には、山上被告が「嗚咽(おえつ)を上げて悔し泣き。一晩中、遺体のそばを離れなかった」という。
銃撃事件9日前 鈴木エイト氏にメッセージ
山上被告からジャーナリスト・作家の鈴木エイト氏へ犯行9日前に届いたメッセージ。鈴木氏はメッセージの相手が山上被告だと後に分かったという。
安倍元総理銃撃事件があったのが2022年7月8日。その9日前に山上被告がSNSで使用していた「 silent hill 333」という匿名アカウントから鈴木氏にメッセージがあり、これに返信していた。鈴木氏の元にはメッセージが届いたことを示す画面が残されている。
事件後、山上被告の弁護士から「彼がメッセージを送っていたそうですよ」と連絡があった。
では、山上被告からのメッセージはどのような内容だったのか。すでにアカウントは凍結されていてメッセージは見られないが、山上被告はこのようなメッセージを送ったと弁護士に語っている。
「やや日刊カルト新聞(鈴木氏が主催を務める、旧統一協会の問題を取り上げたニュースサイト)を従前からずっと見ていました。家族に信者がおり、統一教会をウォッチしている者です」
「(2022年)7月10日、さいたま市民会館でキャパ2000人の何らかの催しがある旨知りました。参加者等ご存じのことはないでしょうか?」
これに対し、鈴木氏はこう返信していた。
それに対して、山上被告からは「ありがとうございます。よろしくお願いします」と返信があった。
鈴木氏によると、やり取り自体は記憶にあったが、事件からかなり時間が経ってから「これは山上被告とのやり取りだった」とようやくつながったという。
山上被告からのメッセージは法廷でも取り上げられることになった。先月29日の第2回公判で検察側がその内容を読み上げるなど、公判の中でも触れられることとなった。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年11月21日放送分より)








