大分市の佐賀関で起きた大規模火災は発生から4日目を迎えましたが、今も消火活動が続いています。この佐賀関は全国的なブランドの「関あじ」や「関さば」で知られる漁師町ですが、漁に使う道具を作る工場が被災して先行きが見通せない状況だということです。
「涙が出る」リフォームしたばかりの家が焼失
20日、大規模火災から3日目を迎えた大分県佐賀関。以前とはうって変わってしまった集落の風景。住民たちの日常はいつ戻るのでしょうか。
朝から活動をしていた消防団が記録した、まだ立ち入りが禁止されている規制線の中の映像を見ると、がれきを手作業で掘り起こして火がくすぶっていないかを確認しています。
まだ、火がくすぶっていそうな危険な個所は掘って放水、掘って放水を繰り返す、途方もない地道な作業。
「(Q.半島のほうは全部鎮圧した?蔦島はまだ?)そうですね」
そして、大分市は無人島の蔦島を除く佐賀関半島について山林も含め、午前11時に火の勢いが収まり、延焼の危険がなくなった鎮圧状態になったとしました。
一方、住宅街を囲う規制線は未だ解除されず、多くの住民が自宅に戻れない状態が続いています。
「入れないです。消火活動をしているのと、倒壊の恐れがあるので」
「次に進めないというかモヤモヤが、現場を見られるまで…やるせない」
自宅に戻れず、家の状況が分からないもどかしさが募ります。
「消防の人がずっと消火してくださってますので」
規制線内に入れない住民
「涙が出るわ」
警察官
「心苦しいけど、お気持ちお察しする。申し訳ない」
規制線内に入れない住民
「いいんです、いいんです」
規制線内に住む60代の女性。66年間住み続けた家を2年前にリフォームしたばかりでしたが、今回の火災で焼失してしまいました。
住民のなかには、警察官が付き添いで一時帰宅できた人もいました。
「お薬もし取れたら、一緒に取って帰りましょうか」
規制線内に住む住民
「お願いします」
警察
「欲しいものとかあると思いますので」
規制線内に住む住民
「ちょっと着替えてね」
警察
「私がついて行って、ダメだなと思ったら、途中でダメというかもしれないんですが」
規制線内に住む住民
「いいです、いいです。行ける所まで行ってみましょう」
一方、中に入れなかった人も…。
「(Q.さっきは何と言われた?)入られんて。はよいかんとダメでしょ」
「(Q.何をしに帰る?)猫が家にいるから心配になっている。餌(えさ)がないやろ」
最盛期が…漁に打撃「来月からどうするか」
打撃を受けているのは、住まいだけではありません。長年この地域を支えてきた漁業の継続にも、大きな不安が持ち上がっています。
古くから漁師町として発展してきた佐賀関地域。今も主要産業は漁業で、中でも大分を代表する特産品として名高いのが「関あじ」と「関さば」です。
佐賀関沖の海峡「速吸瀬戸」は、潮の流れが速く、海底の地形が複雑で餌が豊富。そこで水揚げされたものだけが「関あじ・関さば」と呼ばれます。
これは6年前、「関あじ・関さば」漁を取材した時の様子。
「(Q.網は使わないんですか?)網はないです。基本的に一本釣りですから。魚的には優しい、傷がつきにくい」
魚を傷つけないようにすべて一本釣で獲られ、大型で脂乗りが良く、身が引き締まった「関あじ・関さば」。希少なブランド魚として市場に出回り、値段は「関あじ」で1尾2000円以上、「関さば」は1尾3000円以上もする高級品です。
中でも「関さば」はこれからが旬で漁の最盛期を迎えますが、今回の大規模火災は漁師たちにも大きなダメージを与えています。
「同じ漁師仲間が被災して、何にもなくした人が何人もいる。もうちょっと胸が痛くなってさ」
漁師歴40年の男性は、自分の家が燃えるのをただ見ているしかなかったといいます。
「自分の船がこの辺にあるわけや。火の粉が飛んできてひょっとしたら、燃えたら困るなと思ってその付近にいた」
焼けてしまったのは家だけではありません。今、漁師たちが頭を抱えているのが…。
「一番のネックは針と鉛(おもり)。おれ1カ月分しかない」
すべて一本釣りで行われる「関あじ・関さば」の漁。これに欠かせないのが漁に使う針と鉛ですが、佐賀関の漁師たちは地元の「八潮工業」が作ったものを使っていました。しかし、その工場が被災してしまったのです。
「関さば」漁歴37年の漁師に話を聞くと、このような声が聞かれました。
「(Q.今残っているのはこれだけ?)そうです。だから困る。今、鉛を作る所がない」
「(Q.他のお店で買うわけにもいかない?)そうそう。探すのが大変。この手のかたちは釣具屋には売ってない。どうしてもどんどん縮小で製造中止が多くなる。八潮(工業)さんは地元だから、それで頑張ってくれた。今回燃えてしまった」
他にも、こうした鉛付きの糸や、針も…。
「(Q.これからシーズンで痛手?)ちょっと困ってます。来月からどうするか」
ペットのため車中泊「まだ残っているんじゃ…」
漁師町を襲った突然の火災。大分市によると、避難所には20日正午時点で70世帯108人が身を寄せていました。
渡邊榮子さん(88)
「(Q.今一番欲しいものは?)やっぱり下着類。上着も1枚きりだから、上着も替えが欲しい」
20日で避難生活は3日目。大きな課題は住民の衛生面です。
こうした中、市が始めたのが入浴サービスです。こちらの85歳の女性も久しぶりのお風呂です。
「ここに来てから入ってない」
医療機関の入浴施設まで車で送迎。
一方、ペットを飼っている人は避難所には入らず、近くで車中泊をしていました。
「(Q.上体を起こした状態ですね?)はい」
「(Q.食べ物は大丈夫ですか?)そこ(避難所)でもらっています」
今願っているのは、一日も早く自宅を見に行くことだといいます。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月21日放送分より)









