安倍元総理を銃撃して殺害した罪に問われている山上徹也被告(45)への被告人質問が20日から始まりました。山上被告は母親の旧統一教会への信仰が事件を起こした理由だとして、多額の献金で家族が崩壊した経緯を語りました。
山上被告の証言台での様子 声に“変化”
日本中を震撼させた安倍元総理銃撃事件から3年。殺人の罪などに問われている山上被告に対する、初めての被告人質問が20日、奈良地裁で行われました。
長く伸びた白髪交じりの髪を結び、黒い長袖を着て法廷に姿を見せた山上被告。一礼をして、証言台へと進み、かけていた眼鏡を机に置きました。
「年齢はいくつですか?」
「45歳です」
「45歳まで生きていると思っていましたか?」
「生きているべきではなかったと思います」
「なぜですか?」
「このような結果になってしまい、大変ご迷惑をおかけしたので」
ジャーナリスト 鈴木エイト氏
「(初公判では)ぼそって答えている感じで、なかなか聞き取れなかったんですけど、きょうははっきり明瞭な声で答えていましたね」
こう話すのは、旧統一教会の問題を20年以上にわたり取材し、山上被告の裁判の取材も続けるジャーナリストの鈴木エイト氏です。
事件の理由は「母の信仰」
山上被告は3年前に奈良市で応援演説中だった安倍元総理を、手製のパイプ銃で撃ち殺害した罪などに問われています。
先月行われた初公判で殺人罪の起訴内容を認めているため、争点となっているのは山上被告に対する量刑です。
弁護側の質問に対して、まず語られたのは、母親に対する思い。
「どんなお母さんですか?」
「基本的には悪い人ではないと思いますが、統一教会については理解しがたいことがありました。あれほど多額の献金がなければよかったのではないかと思います」
母親が旧統一教会へ入信したのは山上被告が中学生の時。18日に行われた母親への証人尋問では…。
「私が加害者だと思います。本当に徹也には申し訳ないと思っています」
「お母さんの話を聞いてどう思いましたか?」
「相変わらずだなと思いました」
「証人としてきたことについては?」
「非常につらい立場に立たせてしまったと」
「なぜですか?」
「母の信仰を理由として、事件を起こしてしまっているので」
「母親の証人尋問を聞いてどう思いましたかって時に、何も変わらないんだなっていうふうな、ちょっとやっぱりあきれているような回答が返ってきたんです」
母の破産と自殺未遂
山上被告は被告人質問の中で、旧統一教会に傾倒していく母親と同居していた祖父が激しく対立していた様子を明らかにしました。
「お母さんの入信についてはどう思っていましたか?」
「テレビのワイドショーか何かで90年代の最初のころ盛んに報道があったので自分も知っていたんですが、『実の母よりテレビのワイドショーを信じるのか』と聞かれると、それ以上何も言えませんでした」
「おじいさんは母親の入信についてどう言っていましたか?」
「『いずれすべて財産を持っていってしまうぞ』と言っていました。祖父は母を殺して自分も死ぬと包丁を持ち出したこともありました」
祖父は信仰を強めていく母に対し、家の中に入れないよう締め出したこともあったといいます。
「母が帰ってきても入れないように玄関の鍵を回収しました。『これからは母抜きでやっていく』と言われたこともありました。母がドアをノックして『開けてくれ』と何度も言うので開けてしまったこともありました」
祖父の怒りの矛先は、山上被告ら兄弟3人に向くことも…。
「祖父も田舎に引っ越すから『お前たち3人は出て行ってくれ』と追い出されたこともありました」
「徹也さんはどう思いましたか?」
「出て行ったほうが祖父のためにもいいんだろうと思いました。何時間か自宅のそばを歩いたり、駅のホームに座っていたこともありました」
高校3年生の時に祖父が亡くなると経済的に破綻。大学進学をあきらめた山上被告が高校の卒業アルバムに記した将来の夢は。
「石ころと書いたと覚えている。ロクなことはないだろうと」
山上被告は持病のある兄や高校生だった妹を経済的に支援するため、21歳の時に自衛隊に入隊。しかし、勤務先には母親から何度も金銭を無心する電話がかかってきたと言います。
「2004年の年末に勤務していたところに電話があって、『お金を送ってほしい』と。断ると『実は破産したんだ』と、2004年秋ごろから、そういう電話が何度か。統一教会の教義に照らしても神のために献金していれば救われる。破綻することはない。裏切られたというか、その事実にショックを受けていると感じました」
この電話の数カ月後、山上被告は兄と妹を保険金の受取人にして、自殺未遂をしました。
「生命保険を残して父のように自殺すれば、役割を果たせば、それでいいと思いました」
山上被告の感情に揺らぎ 妹への思い
鈴木氏によると、山上被告の感情に大きな揺らぎが見えたのが、2日間にわたって証人尋問に立った妹に対してでした。
「私が覚えていない細かいところをよく覚えているなと」
「(妹が)証人として来たことについては?」
「非常につらい思いをさせたと思います」
「本当に感極まって目に涙を浮かべているような瞬間があったように見えた。同じ親族に対しても、ちょっとそこに差があったのかな」
母親の旧統一教会への信仰が事件を起こした理由と述べた山上被告。今後の被告人質問では、安倍元総理を銃撃するに至った理由をどのように説明するのかが注目されています。
「家庭状況であったりとか、教団への憤りだったりとか、そういうものが、なぜ安倍元総理に向いたのかという点について不思議に思わなかったって妹さんが言っているんですね。今回の事件の一番のポイントである、なぜ安倍元総理が狙われたのかが、(今後)本人の口から明かされるんじゃないかと思っています」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年11月21日放送分より)















