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ABEMA NEWS

2025年11月24日 09:15

息子からの同性愛カミングアウト 母の想いと葛藤「子どもか世間体か、“やっぱり子どもを選ばな”と」

息子からの同性愛カミングアウト 母の想いと葛藤「子どもか世間体か、“やっぱり子どもを選ばな”と」
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 11月19日から24日まで公開されている舞台『カラフル―私の息子は“弁護士夫夫”です―』。描かれるのは実話を元にした、「息子からゲイだとカミングアウトされるも、その事実を受け入れることができなかった母親」という物語。

【映像】“弁護士夫夫”南和行氏の結婚式の様子

 脚本を書いたのは、2011年に同性のパートナーと結婚式を挙げた南和行弁護士だ。自身の体験を元に、芝居の結婚式のシーンは、母親は着物ではなくスーツで出席。その服装に、式を素直に喜べない思いが表れている。

 ただ、中にはカミングアウトをきっかけに、家族という関係性が崩れてしまう場合もある。「もし絶縁されたら…」「拒絶されたら…」。そうしたリスクを恐れるあまり、調査でも半数以上の人が「誰にもカミングアウトしていない」のが現実だ。

 自分のセクシュアリティを伝える難しさ、そして、それを受け止める側の葛藤について、『ABEMA Prime』で南弁護士親子と考えた。

■ヤヱさん「子どもを選ぶか世間体を選ぶか…」

 南氏の母・ヤヱさんは、息子からカミングアウトされるも、当初は拒絶。受け入れるまでに10年かかった。当初の思いについて、「性的嗜好で不純なこと、世間では認められてないことやと。一時的なものだと本当に思っていた」と語る。

 「ゲイ」という言葉は知っていたものの、「悪いことをしている」「不謹慎」という感覚に加え、「育て方を間違った」と悩んだ。また、カミングアウトされた後も、数年間は世間体が気になり受け入れられなかった。

「子どもを選ぶか世間体を選ぶか、“やっぱり子どもを選ばな”っていう。8割わかっているけど、かっこ悪いとか、みんなから受け入れられへん、否定的に言われるやろうと思った。親友と姉たちに言って、心にあった“鉄の塊”は少し軽くなった。でも、それから公然と言えるようになるのにまた時間はかかった」

 南氏の結婚式でヤヱさんがスーツを着たのも実話だ。「吉田くん(南氏のパートナーの吉田昌史弁護士)もご両親が亡くなっているし、私の主人も亡くなっていたので、格好つかないから私が行かなと。そこで最後の2割が落ちたというか、結婚式やってくれてよかったなと今は思う」と振り返る。祝福してくれる人の多さを目の当たりにし、「認識が間違っていた」と気づいたということだ。

南和行弁護士

 南氏は、大学4年生時にカミングアウトした際の状況を振り返る。「父と祖父の法事の帰り、南海電車の中で、家に着く前に兄と母にカミングアウトした。びっくりするだろうけど、“やっぱり家族だから言っておきたい”と。母はお芝居みたいに泣き崩れるし、兄には『何でそんなこと言うんだ』と激怒された。その後、母と近くに住みながら、一緒にご飯を食べて自分の家に帰ると、『やっぱり同性愛はおかしいと思う』と語る母からの留守電が入っていた」。

 舞台で描いたのは、カミングアウト“された側”の葛藤だ。「僕と母はこうして仲良く喋っているし、ギクシャクもしてないけど、全部わかり合っているとも思わない。カミングアウトはこちらの気持ちでするけれども、全否定されて、“お前がカミングアウトしたから悪いんだ”という言われ方をすることのショックもある。そういったことを考えてもらえるきっかけになれば」と複雑な心境を明かした。

■兄と関係悪化、母の再婚相手から拒絶「家族が増える時は揉め事も増える」

 女性パートナーと不動産会社を経営するREYANさん。思春期に自身のセクシュアリティを自覚し、友人にはカミングアウトして相談。母親には、現在のパートナーと付き合った20歳の時に打ち明けた。当初は難色を示すも、徐々に容認。ただ、兄と関係が悪化し、母親の再婚相手にも容認されなかった。

REYANさん

 当時の経緯について、「母が伝えたのだと思うが、再婚相手から『レズビアンなの?』とド直球なメッセージが来た。『私はそういうセクシュアリティをよく思っていないし、それを知ることで幸せじゃない』と。外国籍ということもあって、宗教的に否定的だというのは後々知った。離れて暮らしているので、メッセージだけでは関係的に難しかった」と語る。

 なんとなく気づいていた母に対し、兄は反発したそうだ。「これも私からではなく、母から伝えた。お互いに触れないまま、直接ひどいことも言われなかったが、『なんでこんなことになってるんだ』と母づてに聞くことはあった。兄は“普通”に憧れを抱いているところがあって、結婚するパートナーに『妹はこんな人で〜』『こんな人と住んでて〜』『(義弟と)将来遊んだりできるかも〜』と打ち明けられると思っていたかもしれないが、全てなくなってしまった。家族が増える時は、揉め事も増えるのかな」。

 カミングアウトはしてよかったのか。「母には言ってよかった。時間はすごく大事で、8年ぐらい経ってじわじわと慣れ、今のパートナーとも良好な関係になった。あと、『結婚しないの?』『子ども可愛いよね』と言われることがグッと減り、実家に帰りやすくなった」と答えた。

■「受け入れる側が“認められない”と思える社会も大事」

 2020年公開の調査で、日本で「同性愛は社会に受け入れられるべき」と回答したのは、18〜29歳が92%、30〜49歳が81%、50歳以上が56%だった(出店:米ピュー・リサーチ・センター)。

ヤヱさんは息子の結婚式にスーツで参加(舞台練習の様子)

 港区議でオープンリーゲイの斎木陽平氏は、「自分はClubhouseという音声メディアで、“全員一斉に”みたいな形で言った。そこでネガティブな反応はなかったし、時代が変わってきていると感じた」と自身の経緯を明かした上で、「私も母に『受け入れられない』と言われてショックだったし、“社会もぱっと受け入れてよ”と思いがちだが、受け入れる側に対するケアは必要だと思う。“理解できないのは悪。いけないことだ”と決めつける風潮も良くないと感じる」と語る。

 また、カミングアウトの是非については、「する・しないは、最後は自分で決めればいいと思うし、しなければならないものでも全くない。ただ、“言いたいな”と思った時に言いにくい要素がないほうが、望ましい社会だと思う」との見方を示した。

 REYANさんは、「受け入れる側が“自分がどう思ってもいい”“認められない”“私には合わない”と思える社会も大事だと思う。私が自分のセクシュアリティを受け入れてほしいと思うのと同じように、相手の気持ちも尊重しないといけない。カミングアウトに“善悪”をつけてしまうと、否定するのは悪だとなってしまうので、両方の意見を受け入れられるような社会になってほしい」と訴える。

 南氏は「こうした仕事をしていると、ゲイカップルからの相談も多い。亡くなった後のために遺言を作っておきたいなどの一方で、死んでも絶対に関係がバレないようにしたいという人もたくさんいる。後者も尊重しないといけないし、カミングアウトをしたから正しいわけでもない。そして、言われたほうが動揺した時に、“なんで驚いてしまったんだろう”とゆったり考えられる社会であるべきだと思う」とした。(『ABEMA Prime』より)

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