安倍元総理を殺害した罪などに問われている山上徹也被告の裁判で、再び、山上被告が証言台に立ちました。
山上徹也被告は、旧統一教会に対する思いや、事件に向かうきっかけとなった“怒り”について答えました。
情状酌量を訴える弁護側は、事件に至るまでの経緯について質問を重ねます。
「兄が亡くなった日のことを教えてもらえますか?」
山上被告
「当時の勤め先で、母からメールか電話もらって、兄が、どっかから転落したと。遺体を見たときに、非常にショックで、悩んでたんだなと。助けてやれなかったなと。自分の罪悪感の象徴のようなことになりました」
母親は、父親の自殺や兄の大病を契機として、旧統一教会に入信。山上被告は、高校生以降、経済的に困窮したなかで育ちました。
1学年上の兄に対しては、“同じ境遇で育った兄弟”として、特別な思いを持っていたようです。しかし、その兄は、2015年、自ら命を絶ちました。
兄の通夜の日。
目の前で繰り広げられた光景が、旧統一教会に怒りが向くきっかけになったそうです。
「奈良の統一教会の会長が、若い2人を連れて『統一教会型のなんとか式を行います』と言い出して、母が頼んだんだと思うのですが、兄は、最後まで、ずっと母の献金に不満を持っていて、『統一教会型のなんとか式をするならやめてくれ、帰ってくれ』と言ったら、『わかりました』と言ったんですが、直後に、また『なんとか式を始めます』と言い出して、全く無視をして始めたので、びっくりしました」
その後、山上被告は母親と衝突します。
「兄が、生前苦しんでいたのは、いったん、神に捧げたお金を返金させるようなことをしたからだという理解になっていて。過去に、自衛隊にいるときに自殺して、お金を残そうとしたことですとか、一気にフラッシュバックして、『(母親に)お前が死んだらいいのに』と、いままでになかったくらい怒鳴った」
兄の死後、家族とは疎遠になり、怒りは、旧統一教会に対する攻撃へと向かいます。
2018年には岡山に、2019年には愛知に、来日した韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁を狙おうと、火炎瓶などを持ち、集会に向かうも失敗。その後、銃をつくり始めたそうです。
「距離が離れるほど、心理的抵抗がなくなる。ナイフが、一番、心理的抵抗が強く、距離を取らないと、到底、実行できないので、一番いいのが、銃だと思いました」
安倍元総理への攻撃を意識し始めたのは、事件の前年、2021年ごろと明かされました。
旧統一教会の関連イベントに安倍元総理が、ビデオメッセージを寄せているのをインターネットで見たときのことについて、問われました。
「現役の首相でなくなった後に、出た以上、これから出るのを拒む理由がないというか。非常に長い期間、務めた首相ですから、(旧統一教会が)どんどん社会的に認められてしまう。本来の姿の反対として、認知されてしまうと思いました」
弁護側
「認知された結果は、どうなると思いますか?」
山上被告
「被害を被った側からしますと、非常に悔しい。受け入れられない気持ち」
弁護側
「山上さん自身の感情は?」
山上被告
「絶望と危機感だと思います」
その翌年、旧統一教会へ再びメッセージを送ったことを知った山上被告は、事件直前に、安倍元総理を明確に銃撃の対象にしたと話しました。
一方、検察側は、山上被告の生い立ちは、刑罰を大きく軽くするものではないとしています。そのうえで、検察側も質問に立ち、自作した銃について聞きました。
「パイプ銃のデザインで、何か参考にしたものはありますか?」
山上被告
「海外の動画ですとか」
検察側
「銃身2本のダブルバレル(二連散弾銃)がある?」
山上被告
「一般的なものなので、ゲームをもとに作っています」
検察側
「ゲームでは、銃を使って倒す場面は?」
山上被告
「敵として、人が出る場面も、モンスターもあります」
検察側
「あなたが、最終的に散弾銃を選んだのは、なぜか?」
山上被告
「それだけ、威力が期待できる」
検察側は、殺人罪だけではなく、山上被告が自作した銃を撃ったことについて、銃刀法の発射罪にも当たると主張しています。












