全国の空き家の数は、過去最多となっていて、今後も増加傾向が続くとみられます。
最近では、空き家に居座るクマや、空き家が大規模火災につながるリスクも指摘されています。
解体するにも、売却するにも課題があります。どう対策すればいいのか、みていきます。
■クマ 火災 犯罪 空き家がもらたす新たなリスク
全国の空き家の数は、900万戸を超えていて、このうち『放置空き家』は約400万戸です。
『放置空き家』が最も多い都道府県は、大阪府で、22万7000戸。東京都、兵庫県と続きます。
『放置空き家率』(総住宅数に占める放置空き家の割合)が最も高い都道府県は、鹿児島県で、13. 6%。高知県、愛媛県と続きます。
空き家に関する様々な問題が発生しています。
『放火』『不法投棄』『悪臭の発生』『建物の倒壊』『スズメバチやハクビシンなど動物や害虫の発生』。
その他にも、『落書き』『雑草』『植栽の越境』『景観の悪化』など、近所トラブルの引き金にもなっています。
そして、最近の空き家問題、1つ目はクマです。
秋田市では、相次ぐクマの出没や被害で、空き家の管理と見回りの協力をお願いしています。
長野、山形など各地で、空き家に居座るなど、クマの出没が相次いでいます。
「雪の多い地域は空き家が増加傾向。冬季に動物のすみかになる危惧も」あるということです。
空き家問題、2つ目は、大規模火災です。
11月18日に発生した、大分市佐賀関の大規模火災は、延焼エリアの約4割が空き家とみられています。
大分市によると、延焼した約170棟のうち、70棟程度が空き家の可能性があり、延焼拡大に古い空き家が影響した可能性があります。
空き家問題3つ目、犯罪の温床です。
2025年8月、静岡県伊豆市で、空き家から大麻草と見られるものが、208本押収されました。
営利目的で大麻を栽培していたとみられます。
特殊詐欺グループの悪用です。
空き家に架空の表札をつけて、宅配便などを使って、現金を送らせる手口が報告されています。
不正薬物の送付先にも悪用されている、ということです。
そして、空き家を狙った、空き巣です。
2024年の空き家への侵入被害は、約9300件。被害額は約13億円。
空き家を狙った空き巣は、この5年間で件数は3倍、被害額は4倍に増えています。
そして、今後、予想される問題について、米山教授に聞きました。
●不動産価値に影響
長期に放置された空き家周辺の不動産価値が下がることも。不動産が下落すると、売却などに影響が出て、空き家化する住宅が増えるという、悪循環が生まれます。
●空き家マンション
老朽化して全戸が空き室になり、廃墟マンションが増える可能性も。外壁が崩壊するなど放置されたマンションを、行政が取り壊した実例もあります。
■なぜ減らない?解体・売却に壁 売りたくても売れない事情
空き家増加の背景です。
『少子高齢化』『都市部への人口集中』『相続問題』『新築住宅志向』などです。
そして、固定資産税の優遇も関係しています。
さら地では、固定資産税の優遇はありませんが、住宅が建っている場合、優遇があります。
200平方メートル以下の部分は、固定資産税は6分の1に減額されます。
200平方メートルを超える部分は、固定資産税は3分の1に減額されます。
ただ、固定資産税の優遇は、除外されるケースもあります。
『特定空き家』と呼ばれる、放置すると倒壊等の恐れがある空き家です。2015年から指定されるようになりました。
そして、『管理不全空き家』と呼ばれる、窓の破損など管理が不十分な空き家です。2023年から指定されるようになりました。
こうした空き家は、改善がみられない場合、固定資産税の優遇から除外されるようになりました。
実際に、空き家を抱えている人に話を聞きました。
空き家は、売りたくても売れない状況だといいます。
東京都在住の40代の女性Aさんは、独身で、一人っ子、母親はすでに他界しています。
1年前、父親が高齢者施設に入所し、実家が空き家になりました。
Aさんの実家は富山県内の市街地にあり、建築面積は約100平方メートル。
土地面積は約500平方メートル。
築約20年。
Aさんの父親のこだわりが詰まった家でした。
「売るか貸すかして、建物を残してほしい」と言われたため、1500万円で売り出しました。
Aさんは、当初、往復約3万円をかけて、月に1回実家通いをして、
「良い状態でないと売れないから頑張らなきゃ」と、家の掃除や庭木の管理などをしていました。
「父が大切にしていた家なので更地にはしたくないが、交通費もかさみ、さすがにこの頻度で通うのは限界。買い手が現れず、今後は価格を下げるべきか、賃貸にすべきか思案中」だということです。
解体費用も高額です。
全国の空き家の解体費用の中央値は、2020年は約140万円でしたが、2024年は180万円、2030年には241万円を超える予測です。
(※家具・家財がない場合の費用です。家・家財などがあれば、もう数十万円プラスになります)
リサイクル費・人件費・燃料費が年々高騰していて、10年で約100万円増える見込みです。
そして、『再建築』が困難なケースです。
埼玉県内に、築65年以上の木造2階建て物件を所有していた、70代のBさんです。
母親が亡くなり相続して、10年管理しましたが、経済的負担が大きくなり手放すことに。
しかし、不動産会社からは、「『死に地』でどうしようもない」と言われてしまい、再建築ができないと対応してもらえませんでした。
Bさんの家があるのは、幅4メートル未満の狭い路地に面した所です。
建築基準法では、幅4メートル以上の道路に、土地が2メートル以上接している必要があり、Aさんの家は『再建築不可物件』となり、土地を売却できませんでした。
その後、土地を国庫に返す制度で処分しました。
「住宅密集地に建っている空き家は、売りたい人が多い一方、法律の壁があることで放置され、老朽化が進んでいる物件が多い」ということです。
2025年4月に、建築基準法が改正されました。
木造家屋のリフォームは、改正前は、主要な柱を残せば、申請なしで大規模な修繕が可能でしたが、改正後は、大規模な修繕に申請が義務化されました。
安全性の担保のためです。
「改正前、『再建築不可物件』は、大規模なリフォームという形での修繕が黙認されていたが、申請が必要になったことで、非常に難しくなった」
■“空き家税”導入 ふるさと納税で空き家管理 各地で対策
空き家問題への、各自治体の取り組みです。
京都市は、空き家の売却・居住を促すため、普段、人が住んでいない住宅の所有者に課税をする『非居住住宅利活用促進税(空き家税)』を独自に導入します。
これは、全国で初めての税です。
2029年度から課税を開始する予定です。
税額は、土地と家屋の固定資産税の半額程度で、税収は、年間9億5000万円の見込みです。
導入の目的です。
「空き家の増加に歯止めをかけることに加え、子育て世代が京都市外に転出するのを防ぐ狙いがある。使われていない空き家が、中古住宅として市場に出回れば、子育て世帯は安くマイホームを手に入れられ、市は新たな税収を見込める」と話しています。
京都市の転入出の動向です。
30代に限れば、2020年10月からの1年間で、1885人の『転出超過』となっています。
三重県名張市では、遠方に住んでいて、住む人がいない住宅の管理に手が回らない人向けに、ふるさと納税の返礼品として、『空き家の管理サービス』を2025年8月から導入しました。
内容です。
サービスを請け負うのは名張市内の業者2社で、郵便ポストの確認や簡易清掃を行うほか、家の状況確認として、破損や劣化した部分を写真で報告します。
寄付額は1万3000円からです。
「居住するエリアはいたずらに広げず、都市計画上の線引きを厳しくする。その中で、長持ちする住宅を建てて、多世代にわたって活用すべき。ただし、現実的には『使えるものは使う』『危険なものは早めに壊す』ということが重要。また、解体費用を確保しておく仕組み作りも考えていくべき」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年11月27日放送分より)














