社会

ABEMA NEWS

2025年11月28日 11:45

クマを呼ぶ“放置柿”問題 木の上にはクマ棚も… 収穫代行業者に依頼殺到「収穫費用は無料」「柿の加工品を販売」

クマを呼ぶ“放置柿”問題 木の上にはクマ棚も… 収穫代行業者に依頼殺到「収穫費用は無料」「柿の加工品を販売」
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 全国各地で柿を狙ったクマの目撃情報が相次ぐ中、「放置柿」が問題になっている。放置柿とは高齢化や後継者不足などで収穫されずに放置されている柿のこと。空き家の庭などに放置されているものも多く、柿の収穫代行業者に依頼が殺到しているという。

【映像】柿の木に作られた“クマ棚”(実際の映像)

 ABEMA的ニュースショーでは、クマ被害が多発している秋田を取材。道の駅では様々なクマ対策が行われていた。クマが来ないようゴミ箱は全て屋内に。さらに自動ドアは正面を封鎖し、横からしか入れないようにしていた。道の駅「ふたつい」の工藤美幸さんは「私たちも気軽に出歩けなくなってしまった」と語る。

 そんな秋田で柿の収穫代行業者を営んでいるのは柿木崇誌さん。名前は本名だという。柿木さんに今年の依頼件数について尋ねると「昨年でいうと25件とかそのあたりだったが、今年はもう50件以上来ている。本当に毎日収穫依頼がくるので追いつかない状態」と明かした。

 柿木さんは「あれクマ棚ですよ」と木の上のほうを指さした。クマ棚はクマが木の実を食べる際、座布団のように枝を折って集めた跡のことで、国道沿いの柿の木にもクマが現れているのだ。

 依頼を受けた1件目の収穫場所に到着すると、柿木さんは「一応着けないと怖い」と鈴を身に着けながら、クマよけスプレーを携帯。いままでクマに遭遇したことはないそうだが、現場には箱罠が置かれており、「ここクマが出たみたいで、まだいるかもしれないから一応置いている」その時の写真を見せてもらうと、子グマが木に登り、柿を食べている姿がとらえられていた。

 木の根元を見てクマのフンがないかを確認した柿木さんは、今度は爆竹に着火。「音を出すので、クマに『いるよ』っていうのもそうですし、自分が安心する」とコメント。「やっぱり怖い?」という質問には「めっちゃ怖いです本当に」と本音を吐露した。

 いつクマに襲われてもおかしくない、危険と隣合わせの収穫。ここでは36キロの柿がとれた。「まだ少ないほうです」と多いときは1本の柿の木で100キロ近い柿が収穫できるという。

 依頼者に柿の木を伐採しない理由を尋ねると「両親はもう亡くなっているので。両親のことを思い出す木だから」とコメント。柿の木は秋田県民にとって身近なものだという。庭に植えた柿を収穫して軒先に吊るし、干し柿にして保存食に。秋田の厳しい冬を乗り越える先人の知恵だ。しかし高齢化や過疎化で多くの柿の木が放置されているのが現状だ。

 柿木さんは「もともと広島から移住して、柿の木の多さにビックリして。誰も(柿を)とらなくて非常にもったいない。それがクマを呼んでいるとかいろいろな問題を引き起こしていた。名前が『柿木』なのでやり始めた」という。

 別の現場の依頼者は、柿の木を切らない理由について「(父親が)木を買ってきて、子どものころに植えた木がこれ」と思い出がある木だと説明。しかし伐採も考えているそうで「クマが来なければまだこんなに(柿が)なってるから切りたくないけど、クマ騒ぎでこれだもの。こんなに騒いだことない、初めてだ」と複雑な胸中を明かした。

 依頼者が「とった柿は何に使ってるんですか?」と問いかけると、柿木さんは「ドライフルーツとかお酢にしたりとか」と加工品にしていると説明。柿の収穫代行はすべて無料。その代わり収穫した柿はいただき、お好み焼きやスムージーなどに加工して、キッチンカーやワゴン販売で収益化している。最近では熟れた柿を柿酢にするなど、新たな商品化も進めているという。

 柿木さんは「伐採には補助金が出るけど、この活動には補助金とか全くない。そこで予算が出ればそのお金で活動できて、この収穫したものを加工して販売して、ふるさと納税の返礼品とかにすればまた税収が増えて、と循環ができると思う」と提言した。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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