社会

サタデーステーション

2025年11月30日 00:26

胸の“三日月”を目視で判別?クマの「個体識別」と「生息数の推定」の舞台裏

胸の“三日月”を目視で判別?クマの「個体識別」と「生息数の推定」の舞台裏
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場所によっては雪もちらつくこの時期になっても、クマの出没が続いています。そうした中、対策を講じる上で欠かせないとされているのが、「個体識別」と「生息数の推定」です。取り組みの舞台裏を取材しました。(サタデーステーション11月29日OA)

取材中も猟友会に出動要請

番組が同行したのは、秋田県男鹿市のハンター。取材中、出動依頼の電話が鳴ります。

報告・富樫知之ディレクター(29日 秋田・男鹿市)
「今クマの足跡があったという一報を受けて、猟友会の方が現地に向かいます」

現場は山から離れた住宅地です。畑に手のひらサイズの足跡が残されていました。
冬眠の季節になっても続く、クマの出没。秋田県など、東北各県で出没警報の期間が延長されています。

クマ出没長期化で箱ワナ不足深刻

“出没長期化”は、クマを捕獲する箱ワナにも影響しています。秋田県猟友会の佐藤さんの担当エリアでは、7基をフル稼働させるも足りず、新たにもう1基取り寄せたばかりですが。

秋田県猟友会 佐藤寿男会長(81)
「足りないちょっと、まだまだ」

秋田県では、半数の市や町で箱ワナが不足する事態に。さらに、重さ200キロほどの箱ワナを運ぶ人手も追いついていないといいます。

秋田県猟友会 佐藤寿男会長(81)
「ある程度に年配なっているから、みんな。なかなか少人数で、持てないんだよ。やっぱり、異常も異常、大異常だ、これは」

箱ワナを製造する会社は、この時期になっても対応に追われています。

北日本鉄工 萩野進工場長(28日 北秋田市)
「きょうも2台発注がありましたんで。11月に入ったら、もうそろそろ無いのかなと思っていたんですけどね。びっくりしている状況ですね」

製造しているのは、重さ約70キロ。大人2人で運べる“軽い箱ワナ”です。

北日本鉄工 萩野進工場長
「発注したらすぐ欲しいという感じになると思うので、もう在庫を増やしておくと。猟師さんも高齢になっているので、負担を減らせるように協力できれば」
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対策に欠かせない「個体識別」と「生息数の推定」

複数の被害の関連性やクマの行動の把握に使われるのがDNA分析です。番組が訪ねたのは、自治体から調査を委託されている会社。

野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん(28日 神戸市)
「クマの体毛ですね。毛の毛根部に細胞が残っていますので、これを遺伝子分析にかける」

調査に使うのは、クマの毛です。クマ対策に欠かせない「生息数の推定」にも、実はDNA分析が活用されています。
「ヘア・トラップ」と呼ばれる手法では、有刺鉄線で囲ったワナを使用します。有刺鉄線に触れ、絡みついたクマの毛のDNAを分析します。
周辺の生息数が少ない場合は、同じ個体の毛の割合が高くなるといい、一方で、生息数が多い場合は、さまざまな個体の毛が採取され、同じ個体の割合が低くなるといいます。

野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん
「クマが多すぎるのであれば、管理を強めるという方針にするでしょうし、クマの数が少ない状況であれば、もうちょっと保護に寄った施策を展開していくようなことになる。そういう基本的なデータになってくる」

しかし、こんなデメリットも。

野生動物保護管理事務所 中川恒祐さん
「野外に体毛をずっと放置しておくと、紫外線などでDNAが劣化してきてしまって分析が失敗してしまう」

そのため、定期的な見回りが必要だといいます。

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斑紋を目視で判別 分析作業の舞台裏

手間もコストもかかる「生息数の推定」。もう1つの方法が「カメラトラップ」です。どのようなものなのか、考案者に話を聞きました。

石川県立大学環境科学科 東出大志准教授
「森の中にカメラをかけて、ツキノワグマの胸の模様を撮影するということをしています」

胸にある三日月のような白い模様。「斑紋」と呼ばれ、個体ごとに特徴が異なるため、識別の大きな手がかりになります。「カメラトラップ」では、エサの匂いでクマを立ち上がる姿勢に誘導。取り付けた自動カメラで、胸の「斑紋」を撮影します。

石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授
「クマがちょうど立ち上がったら届きそうな高さにエサを置くようにしています。それが150センチくらい」

斑紋が鮮明に映った部分を切り出し、他の場所などで撮影された画像と比較します。大変なのは、膨大な「斑紋」データを目視で見分けていること。

石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授
「きれいに映っているものを見つけ出して、それを目で見てですね、リストしていくのはかなり大変な作業」

見分けるポイントは、大きさや形の細かい部分が一致するかどうかです。

石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授
「特徴的な形状というのは、真ん中部分や端の部分で出やすい。この個体だと左側の模様の先端がちょっとV字のように、くぼんでいるのが分かると思うが、そういう特徴もこっちも同じように表れていると」

東出准教授によると、9割以上の精度で識別できるといいますが、斑紋が小さい場合は、判別が難しくなるといいます。

石川県立大学 生物資源環境学部 東出大志准教授
「クマと人間がどのように付き合っていったらいいかを考える1つの指標になるかなと思います。将来的には人の目ではなく、機械学習によって自動的に個体を識別できるような未来が来るかなと」
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