冬眠の時期を迎えても、各地でクマの目撃情報が相次いでいます。秋田県の温泉旅館ではクマを理由に予約のキャンセルが出るなど影響があるなか、さまざまな対策に乗り出しています。
「天空の温泉郷」 関東の名湯で…
湯船に身を委ねれば、目の前には遮るもののない雄大な自然。乳白色のお湯とその香りは、旅人たちの心と体を癒やしてくれます。
ここは、緑に囲まれた国立公園にたたずむ群馬県の万座温泉。標高1800メートル、スカイツリーのおよそ3倍の高さに位置することから「天空の温泉郷」と称されています。
先月、全国77の温泉地からNO.1を決める「温泉総選挙」では、2年連続で1位(秘湯/名湯 部門)の座に輝くほどの人気ぶり。その特徴は、日本有数の高濃度の硫黄泉です。
「疲れが吹っ飛びました。肌もなんかちょっと潤った感じで」
「非日常をやっぱり味わいたくて、こういう自然豊かな所と温泉と、という所でくつろぎに来ました」
山あいにある温泉郷・万座温泉に今、ある異変が起こっているといいます。それが…。
「この雪で真っ白になっている時に、クマ(出没)は聞いたことない話なので、異変があると思います」
例年10月ごろにはクマの目撃情報がなくなるといいますが、今年は先月26日にクマが出没。万座温泉では、急きょパトロールを再開しました。
頻繁にクマが出没する場所を2人で巡回します。万座温泉付近で出没するクマはほとんどが人を見ると逃げていくといいますが、最近、変化があるといいます。
「車やバイクがガンガン通る時は、一日中監視していても(クマを)見ない時が結構あったけど、最近はあまり関係なくなってきているような気がします。慣れてきているような気がします」
これまで人身被害は起こっていませんが、今後も警戒を続けるといいます。
出没相次ぐ…いつ冬眠?緊迫の街
クマの人身被害が最も多く出ている秋田県では、この週末も目撃されました。
福祉施設の裏にある木に飛びつき登ろうとしたり、茂みに頭を突っ込み、一心不乱に口を動かすクマの姿がありました。
前日にも、近くの住宅街で周囲をうかがう姿が目撃されていました。
冬眠の時期に差しかかっても、クマの出没が続きます。
秋田の温泉宿 風評被害で疲弊
「露天風呂っていうだけで(別の旅館で)事故があったので、その影響がやっぱり大きいのかなと思うんですよね」
秋田県湯沢市にある阿部旅館。湯けむりが立ち上る大湯の沢添いに作られた露天風呂からは、大自然を眺めゆったりと過ごせます。しかし…。
旅館周辺ではこれまでクマの目撃情報はないものの、客からはクマに関する問い合わせが相次いでいます。
湯沢市ではクマが4人を襲い、住宅に居座るという騒動が発生。さらに、同じ日に300メートルほど離れた市内では、クマが自動ドアを使って消防本部に入り込む姿や、市街地を歩く姿が確認されるなど、その後もクマの目撃情報が相次ぎました。
阿部旅館では、クマを理由にしたキャンセルが10件発生し、日帰り温泉の利用客も2割ほど減少したといいます。
さらに、ある日を境に阿部さん自身の心境にも変化がありました。
10月16日、岩手県北上市で露天風呂を清掃中の従業員男性がクマに襲われて死亡した痛ましい事故です。
宿泊客や従業員、阿部さん自身の安全のために行っている対策がロケット花火です。
爆竹の音にびっくりしつつも、そのままカキを食べ続けるクマ。爆竹で逃げないクマのニュースを見た阿部さんは、より大きな音が鳴るというロケット花火を購入したといいます。
旅館周辺での出没はなく、対策も講じているものの、歯がゆい思いを抱えています。
そんななか、阿部旅館に宿泊を決めた客はこう話します。
自然か安全か 老舗が苦渋の決断
秋田と青森との県境近く、山と森に囲まれた明治26年創業の歴史ある宿「日景温泉」。白濁した硫黄泉が特徴で、「東北の草津」とも言われ親しまれる温泉宿では、異様な光景が広がっていました。
「左右に露天風呂が2つありまして、通常ですと、こういうベニヤ板は設けておりません」
温泉への渡り廊下にはびっしりと貼り付けられたベニヤ板。本来壁はなく、開放感のある渡り廊下でした。
それが一変、クマが進入しないよう板を取り付け、閉じられた空間になっていました。
さらに、旅館の要ともいえる露天風呂でも苦渋の決断を迫られていました。
本来であれば、雄大な自然を独占できる貸切家族風呂。雪のシーズンには情緒ある雪景色が楽しめますが、景色の半分を柵が覆います。
温泉に入ると、当然目線は柵より低い位置になるため、景色が遮られてしまいます。別の貸切風呂も…。
一番人気の数メートル先で滝が流れる大迫力の露天風呂も、柵が設置されています。
「ちょっとクマ入ってこないように柵がしてあるので、少し眺めが遮られているので、そこは残念でした。でも、全くないと不安だからやってくれたので、ちょっと安心できましたけど」
この温泉宿も周辺でクマの目撃情報はありませんが、岩手県北上市の人身被害をきっかけにキャンセルが相次ぎ、およそ50件に上りました。
都会の喧騒を忘れ、静かな時間を過ごせる宿というコンセプトのため、客室にはテレビは設置されいません。
およそ6000坪の広大な敷地内には、自然を満喫するための散策コースもあります。しかし…。
「主人が散歩好きなので、本当だったらこの辺歩いたりして散策したかったところを、今回はそれはやめました」
「今回は我慢してね」
「(Q.でも、温泉良かったしっていうところですかね?)そうですね、堪能しました」
温泉宿は「自然の恵み」と「クマ対策」の両立に頭を悩ませます。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年12月2日放送分より)




























