社会

サタデーステーション

2025年12月2日 19:07

外国人を“住民”としてどう受け入れる?「秩序ある共生」4つのヒント

外国人を“住民”としてどう受け入れる?「秩序ある共生」4つのヒント
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高市政権が掲げる「外国人政策」が注目される中、番組ではシリーズで、「外国人との共生」を考えていきます。第一弾は、まもなく本格的な冬の観光シーズンを迎える北海道。貴重な労働力となる外国人を、観光客ではなく、“住民”として、どう受け入れていくのか…取材で見えた共生への「4つのヒント」とは?

(サタデーステーション11月29日OA)

住民の3分の1以上が外国人の村 「大きなトラブルない」秘訣は

星野リゾート

星野リゾート

サタデーステーションが向かったのは、北海道の占冠村(しむかっぷむら)。毎年11月に恒例の光景があります。それは住民登録のために役場を訪れる外国籍の人たちの姿です。この日は台湾出身の4人が窓口に書類などを提出していました。彼らの新たな職場は「星野リゾート トマム」。12月から冬の観光シーズンを迎え、スキー場がオープンしました。春から秋にかけては雲海も見ることができ、年間で約48万人が訪れるリゾートです。取材した10月末、ホテルのフロントでは3人のスタッフがチェックイン対応をしていましたが、そのうち2人が外国人スタッフでした。さらに占冠村にある保育園を訪ねてみると、園児の半分が外国籍だといいます。

役場を訪れる外国籍の人


高市政権が進める「秩序ある共生社会」の実現。27日に初めて、政府の有識者会議や自民党内の会合が開かれ、外国人の受け入れの在り方について議論が始まっています。総務省のデータによると、今年1月1日時点で、占冠村は住民の3分の1以上が外国人。日本で一番、外国人住民の割合が高い自治体です。占冠村の村長は…

占冠村の田中正治村長
「大きなトラブルにはなっていないというのが現状としてはあります」

取材を進めると、外国人との共生につながる、4つのヒントが見えてきました。

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“外国人との共生”ヒント1「海外で日本語も堪能な人材を採用」


ホテルのフロントで日本語と英語を駆使して接客業務などにあたっているのは、韓国出身のぺさん(25)。占冠村に来て3年目で、社員寮に住んでいます。

韓国出身 ペさん
「日本に興味を持ったのは高校からで、最初の職場は日本に行って、ちゃんと自分の日本語が通じて、日本人としゃべれるかどうか確かめたかった」

占冠村で働き始めたきっかけは、韓国の大学での就職説明会。「星野リゾート トマム」は海外でも採用活動を行い、日本語も堪能な人材を迎えています。およそ300人の社員のうち、2割ほどが外国籍です。その理由について総支配人は…

星野リゾート・トマム 渡辺巌 総支配人
「特に人員不足とかではなくて、昨今は訪日外国人の旅行需要が高まってきている。(海外から)来るお客様にも安心感を持っていただきたい」

3年目のぺさんは、すっかり地元に溶け込み、休日には日本人スタッフ2人と趣味のカフェ巡りへ。外国人として占冠村で働く中で、共生がうまくできていると思うか、聞いてみると…

韓国出身 ペさん
「海外から来たから何かができなかったり、やってとか言われたりしていないので、そういう時点で、もううまくいっているのではないかっていう感じですかね」
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“外国人との共生”ヒント2「年2回の長期休暇で母国へ」


占冠村ならではの「長期休み」も外国人スタッフから好評のようです。ベトナム出身のトゥさん(27)は、占冠村の社員寮に住んで3年目。

ベトナム出身 トゥさん
「1年に2回くらい(母国に)帰れることが本当に良いことなので、ホームシックになることはあまりないです」

占冠村は例年4月と11月が観光業のオフシーズンで、リゾート関連施設はほぼ休業となるのが特徴です。この期間を利用して、年2回、長期休暇を取ることも可能で、外国人スタッフの中には、母国に帰り、リフレッシュする人も多いようです。

ベトナム出身 トゥさん
「これから結婚しようと思うけど、家族をここに連れてきて暮らしたいと思います」

実はトゥさん、この取材の直後にベトナムに帰り、5年間付き合っている彼女にプロポーズ。長期休暇で遠距離恋愛を成就させました。

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“外国人との共生”ヒント3「サポート役の“先輩外国人”」


外国人スタッフをサポートする“先輩役”も育ってきています。台湾出身のリョウさん(33)は、占冠村で働いて12年目。

台湾出身 リョウさん
「自分が昔感じていた、文化の違いで困っていたこととか、うまく解決・サポートに繋がっていければいいんじゃないかなと」

このホテルでは、半年前、「海外サポートチーム」を新たに立ち上げました。

星野リゾート・トマム 渡辺巌 総支配人
「親戚や友人がいないなど、生活環境におけるハードルはどうしてもあると思っている。プライベートな時間でもサポートできるようにしたい」
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“外国人との共生”ヒント4「“田舎”ならではの支え合い」


サポートの手厚い大企業に所属しない外国人も占冠村で暮らしています。地元住民との家族ぐるみの付き合いによって、自然と支え合いが生まれていました。

保育園
在住10年の日本人住民
「子どものお母さん同士で話をしたりとか、あとはお料理いっぱいできたので食べに来て下さいと誘われて、『モモ』っていうネパール料理をごちそうになりました」
子ども
「生地はもちもちで中がお肉で、ケチャップかけたら美味しい」
在住10年の日本人住民
「あとはおすそ分けで何かを差し上げたら、ビリヤニが返ってくる」

保育園を訪ねてみると、園児11人のうち6人が外国籍だといいます。ネパール出身の先生もいて、子どもたちの歯磨きやうがいを手伝い、日本語でコミュニケーションをとっていました。

占冠村 田中正治 村長
「子ども同士がすごく仲良く暮らしているので、親も自然といい関係になってくる。うちの人たちは友好関係から入るからね。そこは上手だよね、友達感覚っていうか」

飲食店でも、ネパール出身の女性たちが働いていました。店主は占冠村の現状について…

在住20年の日本人住民(飲食店 店主)
「ほとんどの方が顔見知りにすぐなるので、すごく私はいいと思います。刺激が無さ過ぎなので、田舎過ぎて。悪い事もすぐ広まっちゃうんじゃないですかね。しちゃいけないこととか、全部周りの人が親切に教えてくださるので、そういう感じの人はいらっしゃらないか、たぶんすぐいなくなっちゃうと思います」

田舎ならではの人付き合いの深さが、外国人との共生にプラスに働いているようです。7年前に占冠村に移り住んだ住民は、他の地域との違いを感じていました。

在住7年の日本人住民(ゲストハウス経営)
「バスケットボールとかバドミントンとか、そういうコミュニティーがあったり、役場とかを通じて海外の人に日本語を教える機会があったり、日本の文化的なところも直接教える機会がトマム(占冠村)にはかなり多いと思う」

トラブルの原因になりやすいゴミの分別。占冠村では外国人向けの講習会も開かれています。2年前にスリランカから占冠村に来た夫婦はこの地で子どもを出産。取材した日にちょうど1歳の誕生日を迎えていました。異国での子育てに不安はないか聞いてみると…

スリランカ出身 ラヒルさん(35)
「(不安は)ないです。本当にないです。日本の子どもや他の外国人の子どもたちと一緒に、日本文化を基盤とした環境で成長することができます」

占冠村の日本人住民は10年前より140人ほど減っていますが、外国人住民は、コロナ禍をのぞくと、増加傾向。合計すると、人口は増えています。人口の3分の1を外国人が占める現状について、占冠村の村長は…

占冠村 田中正治 村長
「持続的にこの経済活動が発展していくためには、やっぱり外国人の力を借りなければなかなか難しい環境にはあると思う。今の人口減少時代で人が減らないだけでも、すごく村にとってはメリットだと思う」

占冠村の小学校では学童保育の指導員が不足していましたが、外国人住民がその人員不足を補ったり、農家の手伝いをするなどして、地域の教育や産業を支える役割も果たしています。

占冠村の課題

一方で課題もあります。占冠村の村長によると、住民税を納めない外国人住民が一部存在するといいます。該当するのは、企業に所属せずに短期間働いて村を離れるような外国人住民だといい、村では銀行口座の差し押さえなどの対策を行っているということです。

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