社会

報道ステーション

2025年12月3日 02:50

山上被告「他の政治家では意味が弱い」3度目の被告人質問 安倍元総理銃撃事件

山上被告「他の政治家では意味が弱い」3度目の被告人質問 安倍元総理銃撃事件
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安倍元総理銃撃事件の裁判で、3度目の被告人質問が行われました。山上被告が検察からの質問に対し、銃を構えるような姿勢を示して答える場面もありました。当時の状況を語り、安倍氏を対象にした理由について「他の政治家では意味が弱いと思った」などと述べました。

ビルに発砲“怒り”示すため

奈良地裁の法廷では、事件前日から当日の行動について検察側から質問が重ねられました。パイプ銃を延べ10丁ほど製造していたとされる山上被告。事件前日の未明、そのうちの1丁を持ち、奈良市内にある旧統一教会の関連施設が入るビルに向かいます。そして、ビルに向けて発砲。その理由についてこう話しました。

山上被告
「統一教会への怒りを感じていると示すために撃ちました」
検察側
「安倍元総理を狙うと決めていた?」
山上被告
「そうです」
検察側
「今回の怒りの対象は安倍元総理ではなく統一教会?」
山上被告
「はい」
検察側
「それを示すために統一教会に撃ち込みをしたのはなぜ?」
山上被告
「これも統一教会の関係者なら安倍元総理との関係性が深いのは信者間でも言われているが、一般社会ではそうは思われていない。あらかじめ示しておかなければ、違う理由で取り沙汰されるとも思ったので」

この日、安倍元総理は岡山市で選挙の応援演説の予定が決まっていました。ビルに向けて撃った銃とは別の銃を持ち、山上被告は岡山に向かったといいます。

検察側
「岡山市内に行った目的は?」
山上被告
「応援演説に訪れる安倍元総理を銃撃するためです」
検察側
「なぜ襲撃しなかった?」
山上被告
「中に入るには、実際にはなかったが手荷物検査があると思っていました。市民会館の裏手というか、そこに車を横付けするような形だったので銃撃の機会がありませんでした」
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演説日程「偶然とは思えない」

しかし、銃撃を断念した帰り道、山上被告は自民党のホームページで翌日に安倍元総理が奈良を訪れることを知ったといいます。

山上被告
山上被告
「6月末にも安倍元総理が大和西大寺で応援演説をしたと知っていたので、まさか自分が銃撃に失敗した翌日にもう一度来るとは思いもしなかったので、偶然とは思えないような気もしました」
検察側
「それで翌日、被害者を襲撃しようと考えた?」
山上被告
「はい」
2022年7月8日

そして、迎えたのが2022年7月8日です。期日前投票を済ませ、午前10時ごろ、銃を持って大和西大寺駅に着いた山上被告。安倍元総理の到着まで、駅前の商業施設や現場周辺で状況を見ながら過ごします。午前11時過ぎ、安倍元総理が現場に到着。そしてその後、演説が始まります。山上被告は、襲撃直前には安倍元総理の後ろ側に立っていました。

山上被告
「真後ろにいた警備員がちょうど移動したので、これも偶然と思えない何かと思い、今だと思い車道に出ました。1発撃てば2発目を撃つのは1〜2秒の間なので、撃つならここと思っていました」
検察側
「どこを狙いましたか?」
山上被告
「上半身でした」
検察側
「上半身を狙ったのは被害者に確実に命中させるためですか?」
山上被告
「人を狙う場合はそうなるだろうと。そういうことだと思います」
検察側
「あなたは現行犯逮捕されますが、逮捕した警察官があなたが『当たったか』と発したと証言しているが、その記憶はありますか?」
山上被告
「そんなような記憶はあります。発射直後にどういう状況か分からず取り押さえられましたので、状況を確認したかったということだと思います」
検察側
「発射した瞬間はどんなことを考えていましたか?」
山上被告
山上被告
「射撃か何かの本で、射撃の心得というのが、なるべく無心で撃つこととあったので、なるべく無心で撃つようにしました」

当時、銃の製造などで借金を抱えていた山上被告。検察側は、襲撃対象を旧統一教会の幹部から安倍元総理になぜ変えたのかについても問いました。

山上被告
「何もできなくなるよりは、今やった方がいいと考えました」
検察側
「経済的な理由のため、対象を安倍元総理に変更したのですか?」
山上被告
「そういった要素もあったかと思う」
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「嫌悪感や敵意が徐々に」

裁判所側からも質問が行われました。山上被告は前回の被告人質問で、安倍元総理が旧統一教会の友好団体にビデオメッセージを送ったことについて「絶望と危機感」などと語っていました。そこから殺害に至るまでの心境の変化を裁判員から問われました。

山上被告
山上被告
「困惑したというか失望したというか何というか。今後も安倍元総理と統一教会との関係が公に認められていく。それは私は受け入れがたいことなので、表面における強い怒りではなく、頭の片隅や心のどこかに引っかかり続けるというか、嫌悪感や敵意、そういったものが徐々に強まっていました」

裁判官からの質問では。

裁判官
「あなたの犯行の契機となったのは旧統一教会への怒りだったと思うが、お母さんに向くことはなかったんでしょうか?」
山上被告
「実際に行ったかどうかは別にして、母親に向くことはありました」
裁判官
「実行しなかった理由は何ですか?」
山上被告
「そもそも母が献金している統一教会に抗議したかった。母個人ということでもないと思います」
裁判官
「安倍元総理以外は対象にはならなかったんですか?」
山上被告
山上被告
「安倍元総理は、私の認識では統一教会と政治との関わりの中心にいる方だと思ったので、他の政治家では意味が弱いと思いました」

事件の目的について問われた際に沈黙する場面もありました。

裁判員
「山上さんからしたら目的は達成できたと感じる?」
山上被告
山上被告
「非常に色々な問題を含みますので、お答えはできかねます」
裁判官
「前提として事件の目的とは何だったのですか?」
山上被告
「また別の機会に答えさせてもらえればと思います」

被告人質問は3日・4日と、あと2回実施され、18日には論告・求刑が行われることになっています。判決は来年1月21日に言い渡される予定です。

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