大分県別府市で2022年6月、男子大学生2人が車にはねられて死傷した「別府ひき逃げ殺人事件」。被害者遺族たちの懸命な努力と訴えで、2025年6月、八田與一容疑者に殺人罪・殺人未遂罪が追加されておよそ半年が経った。
八田與一容疑者に関する情報はこれまでに1万件を超える異例の数にもかかわらず、有力な手がかりはいまのところない。ひき逃げの検挙率は死亡事故に限ると、検挙率は90パーセントを超える高い水準となっている。
ひき逃げ事故はどのような捜査を行なっているのか。元徳島県警捜査一課警部の秋山博康氏は「まずは車の特定をする。これが非常に重要。現場は証拠の宝庫で、現場に落ちていた塗料片とかランプの破片、それで車種とか色、そして年式まで特定する。さらには被害者の衣類、服も塗料がついたり、タイヤ痕がついている可能性がある。そのタイヤ痕でタイヤのメーカー、サイズを特定して、まず所有者を割り出して1件1件、車当たり捜査をして犯人を検挙する」と説明。
11月は指名手配犯捜査の強化月間だったが、事件の進展がなかったことについて秋山氏は「何のためにこれが重要指名手配になったのか。大分県警も警察官全員がこの事件を把握して、そして情報が命。日本中からくる情報を1件1件地道に捜査を重ねて犯人検挙に努めてほしい」と訴えた。
また、ABEMA的ニュースショーが取材すると、他府県の市民が八田容疑者に似た情報を県警に連絡しても、たらい回しにされた末「担当者が不在」と言われたり、迅速な対応とは言い難い印象が少なくなく、情報提供者は「勇気をもって連絡したのに」と不満を述べる人も1人や2人ではない。
これに対し、秋山氏は改めて「たらい回しはダメ」と言い切ると「何のために重要指名手配にしたか。11月の指名手配月間というのは全国指名手配月間なので、大分県警だけでなく全国の警察官が各県の受け持ちを探したり検問を増やすとか職務質問をどんどんやる。そして大分県警には情報を与えたり、逮捕状がなくても指名手配を受ければ通常逮捕の緊急執行ができるので、全国警察が本当に八田容疑者探しをしていただいたら検挙に結びつく」と語った。
さらに「担当者が不在」の状況については、「認識の甘さだと思う。例えば、私が経験したのは、(警察の)昇任試験でも徳島で発生した指名手配『この被疑者の名前をおぼえているか』『事案の概要は知っているか』と、そこまで徹底的に全警察官に把握させていた。このぐらいの刑事魂は必要だと思う」との見方を示した。
すでに八田容疑者は自死したのではないかという声も根強いことについては、「自死は絶対にあり得ない」と断言して「生きてどこかに潜伏している。私も現場を見たが、水死体というのは腐敗したらガスで浮上し、上がってくる。そうしたら、あの場所は誰かが絶対に発見する。日本のどこかに潜伏している可能性が非常に高い」と分析した。地元の漁業関係者は別府湾の潮の流れから浜辺に打ち上げられるか、漁船が発見するに違いないと口をそろえる。
また秋山氏は、全国の警察官の認知度にも言及して「これだけマスコミもとらえて、重要指名手配にしているので、全国の警察官全員が八田容疑者の顔写真入りの小さなポスターを携帯している。だから本当に街頭で八田容疑者探しをしていただいたら、検挙に結びつくとは思う。ただ、各捜査員の技量、見当たり捜査ができる捜査員であれば探せるが、漫然と探すと“すべる”可能性はある」と語った。
(『ABEMA的ニュースショー』より)
