12月5日公開の映画『ペリリュー −楽園のゲルニカ−』。ニュース番組『ABEMA Morning』では、原作者であり映画の共同脚本を務めた武田一義さんに、作品に込めた思いなどを聞いた。
「きみはこの島から生きて帰れると思っているのかい」 「田丸一等兵参りました」 「仕事を頼みたいのだ。功績係という」 「俺が死んだら、お前がうちのかあちゃんに手紙書くってことか」
1944年9月15日から始まった「ペリリュー島の戦い」と、終戦を知らず2年間潜伏し最後まで生き残った34人の兵士たちを描いた映画『ペリリュー −楽園のゲルニカ−』。原作は、第46回日本漫画家協会賞優秀賞を受賞した同名漫画だ。

作者の武田一義さんは、映画で共同脚本も務めている。
「普通の若者である兵隊さんたちが戦争をしているという着眼点の戦争漫画を描きたいと思った」(武田一義さん、以下同)
戦後70年にあたる2015年、上皇ご夫妻(当時の天皇・皇后両陛下)が慰霊訪問されたことをきっかけに『ペリリュー』の制作を始めた武田さん。生還者への取材などを重ねていく中で、常にある「迷い」があったそう。 「戦争を体験していない自分がこんな風に描いていいのかな?という迷いは、描く前も描いている間もずっとあるし、今もふとある」
ただ、「戦争を体験していないこと」が作品を描くうえで、かえってプラスになった部分もあるのだとか。
「当事者が戦争を語る場合は、主体的な語り方になる。自分のような戦争を体験していない人間は、体験者のさまざまな体験をひとつ全部横並びにして、客観的にものを見て描ける。それは体験者が描かない、(自分が戦争を)体験していないからこそのメリット」
映画化にあたり、武田さんは11巻にもおよぶ原作の内容を約2時間の上映時間に収めるため、共同脚本の西村ジュンジ氏とともに原作の漫画を一度分解し、再構築していったという。

さらに、監督の発案で「ある要素」も加えられた。
「映画の中に、原作になかった要素として、吉敷がシャボン玉を吹くシーンや鼻歌を歌うシーンがある。あれは原作にはない。僕も2時間で見きれるものの演出としては、とてもいいなと思っている。彼は本当に勇敢な兵士だが、彼の心の中の柔らかい部分を象徴するようなものとして“シャボン玉”という要素を描写に加えてくれたのはとてもいい」
武田さんは、『ペリリュー』で描いた物語が「現代のことを考える“ヒント”になれば」と話している。
「現代の戦争はどういうふうになっているのだろうと注目して見ていたが、実は前線で起こってることはあまり変わらない。武器がどんなにハイテクになっても、銃弾や爆弾が飛んでいく先にはやはり人がいる」
「80年前の戦争を描いたペリリューの中でも、若い人たちにとって現代のことを考える参考になる部分はある。よりディテールを想像するために、現実のニュースの情報とこの作品を両方読んでもらってもいいのかなと」
(『ABEMA Morning』より)
