社会

ABEMA TIMES

2025年12月6日 14:15

柏崎刈羽原発が再稼働へ…なぜ動き加速?地元住民の思いは?元経産官僚「現地の実情が東京に伝わっていないし、東京の人も考えようとしていない」

柏崎刈羽原発が再稼働へ…なぜ動き加速?地元住民の思いは?元経産官僚「現地の実情が東京に伝わっていないし、東京の人も考えようとしていない」
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 新潟県の花角英世知事が、柏崎刈羽原発の再稼働容認を表明した。                           

【映像】地元民の声(実際の映像)

 容認にあたっては、安全性の向上や事故発生時の避難路の整備、交付金の見直しなど、7項目の条件を国に示した。花角知事は県議会で再稼働にともなう予算をはかることで、県民に信を問うとしていて、可決される見通しだ。再稼働すれば、東京電力の原発としては、福島第一原発事故以降、初のケースとなる。

 地元では「東電からすればドル箱を動かしたいのだろうが、なにかあれば止めて」「身内に東電関係者もいる。完全に反対と言いたいが、言いがたい」といった声も。新潟県が行った県民意識調査では「再稼働の条件は整っている」という設問で「そう思う」と答えた人は4割弱にとどまった。また「東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配」という設問に、およそ7割が「そう思う」「どちらかといえばそう思う」と回答。東京電力への不信感も浮き彫りになっている。『ABEMA Prime』では、再稼働に向けた課題を考えた。

■柏崎刈羽原発が再稼働へ

細野豪志氏

 民主党政権で原発事故担当大臣や環境大臣として対応にあたった、自民党衆院議員の細野豪志氏は、「原発行政は、福島第一原発事故を境に、大きく変わった。原子力規制委員会のもと、厳しく再稼働を審査してきたが、それを柏崎刈羽原発は受け続けてクリアした」と説明する。「政府側も1年以上前から再稼働を要請している。東日本の電力体制が、非常にぜい弱であることが理由だ」。

 また、金銭的な要因もあり、「西日本では関西電力や中国電力で原発が動いているため、電力価格が抑えられているが、東日本は比較的高い。日本経済を考えても再稼働させたいと、政府はできる限りの説明をした」といい、「地元の皆さんには心配をかけたが、今回花角知事に決断してもらい、ありがたい気持ちでいっぱいだ」と感謝した。

 再稼働をめぐっては、北海道の鈴木直道知事も、北海道電力・泊原発3号機の再稼働を容認した。元経産官僚で制度アナリストの宇佐美典也氏は、「原子力規制委員会の審査には、非常に時間がかかった。申請して許可が下り、事業者は再稼働に向けて、地元と政治的に調整を続けていた。しかし来夏に東電管内が電力不足になる予測が出たため、まだ反対意見は多いが、政治決断せざるを得ない状況になった。東京の我々は、のんでくれた地元に感謝しないといけない」と解説する。

■「現地の実情が東京に伝わっていないし、東京の人も考えようとしていない」

宇佐美典也氏

 宇佐美氏は「2012年から2014年にかけて柏崎市に半分住み、第2の故郷になった」という。その経験から「柏崎には原発のイメージがあるが、中心産業はブルボンで有名な食品製造業や、リケン柏崎事業所などの金属加工業だ。海にも100万人単位の観光客が来るため、決して産業の中心は原発ではない」と語る。

 こうした事情から、「原発があれば経済的に多少潤う程度だが、その潤い方にも市民に差がある。関わっている人も多いため、表立っては反対と言いづらいが、どちらかと言えば反対の人が多い」として、市民からは「我々は東京のために電力を作っているのに、なぜ東京から『脱原発』『原発利権で潤っている』などと言われないといけないんだ」という雰囲気を感じたという。「現地の実情が、ちゃんと東京に伝わっていないし、東京の人も考えようとしていない」。

 モデルでタレントの西山茉希は、「新潟で生まれ育ち、柏崎が身近だった」立場から、「知事のゴーサインに住民の思いや不安が追いついていない」と指摘する。「中越地震も地元で経験した。その後すぐ東日本大震災があり、そのトラウマは簡単になくならない。いつ自然災害が来るかわからないリスクを抱えている。『そこで生きる人の思い』を受け止めつつ、もし今後再稼働するのなら、生活にプラスになるものがあるべきだ。『見えない未来に向かう不安』は伝わらない部分もある」。

■「原発に保険をかけて欲しい」

竹中平蔵氏

 経済学者で慶大名誉教授の竹中平蔵氏は「当面の措置として、知事の決定は歓迎されるべきものだ。ただ、考えないといけないのは、原発はやはり高くつくということ。難しいと言われるが、原発に保険をかけて欲しい。その分、電力料金に上乗せするが、それもちゃんと負担する」といったアイデアを出す。

 加えて、「耐用年数を終えたあと、原発をどうするのか、エネルギー計画を明確にしながら決定した方が良かった」とも話す。

 宇佐美氏は「柏崎刈羽原発は、福島第一原発と同じく、格納容器が小さいBWR(沸騰水型原子炉)のため、ベントが必要になる可能性が高い。もしベントとなれば、柏崎だけでなく、周りも風評被害に苦しむ。避難経路も地元に根付かせないといけないが、それも我々が『お願いします』と言わないと、心が動かないだろう」と考えている。

 そのため「人と人の関係を、どうやって再構築していくか」が重要になるとし、「安心と安全はセットだ。安心なところにいる我々が、彼らの気持ちに寄り添いながら、安全の議論をしないといけない」と提言した。

 そして、「来年の夏、東京の電力が足りないのは確定している。柏崎刈羽が稼働しないと、来年は東京電力管内で電力が高騰するため、いま仕方なく稼働を決めるしかない。政治的プロセスで、無理を言って持ち込んでいるのだから、やはり『お願いします』という姿勢がないといけない」と、改めて語った。

(『ABEMA Prime』より)

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