社会

ABEMA TIMES

2025年12月8日 11:00

うっかり差別発言「マイクロアグレッション」とは?褒めたつもりが差別と感じることも 伝える側・受け取る側、双方が抱える難しさ

うっかり差別発言「マイクロアグレッション」とは?褒めたつもりが差別と感じることも 伝える側・受け取る側、双方が抱える難しさ
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 埼玉県が制作した啓発ポスターが今、話題になっている。内容は「あなたは心当たりありませんか?うっかり差別発言」。人権尊重社会を目指す県民運動として毎年作られているポスターで、今年はこの文言が使われた。ポスターには「外国人なのに日本語上手だね」「早く子ども作らないとね!」「え?こんなこともできないの!?」という言葉が、意図せずにうっかり相手を差別し傷つける「マイクロアグレッション」なのだという。

【映像】話題となったポスター

 「ABEMA Prime」では、マイクロアグレッションについて企業研修なども行う社会保険労務士が出演。日常にある“うっかり差別発言”について語りながら、どいうシチュエーションで気にするべきか、また言葉を伝える側・受け取る側の双方に難しさがあるのではと、意見が飛び交った。

■「マイクロアグレッション」とは

うっかり差別発言とは

 うっかり差別発言「マイクロアグレッション」とは、意図の有無に関わらず特定の人や集団への偏見から生まれる否定的な表現を指す。悪意がないため自覚がしにくく、差別やハラスメントにつながることもあるという。具体的には人種、宗教、出身地、性別、障がい、年齢などがあげられる。

 社労士の村井真子氏は特に「個人」ではなく「属性」として扱うことが差別につながると表現する。「マイクロアグレッションは(発言している)本人の中では正しい価値観に基づいているケースがほとんどなので気がつきようがない。例示してもらって意識しやすくすることがある」と、今回のポスターのように示すことで、意識が高まると説明した。

 “うっかり差別発言”とも呼ばれるだけに、発言した人が褒めていても受け取る側が不快に感じることもあるところが難しい。「『女性だけど上手い』というものがあった時、男性だったら同じように言ったかどうか。属性で判断しているところが、マイクロアグレッションの問題の深いところ」だと補足した。

 コンプライアンスやハラスメントといった言葉が多く聞かれるようになった中、今回のマイクロアグレッションは批判を受けている側面もある。情報キュレーター・佐々木俊尚氏は「属性について落とすことがダメで、属性がなければOKというのは一つの線引きだとは思うが、それをみんなが理解できるかといえば、すごく難しい。それがマイクロアグレッションが批判されている最大の理由の一つ」と指摘する。

 「ともすれば、自分が差別されていると感じれば、それで差別になってしまう」」「一般社会の側からも、差別の問題に一切口を出さない方がいい、言及すると差別だと言われるという恐怖心を煽り、断絶を生んでしまう」と語る。

■嫌な気持ちへの配慮…”敏感”度合いどこまで?

ポスターが話題

 歌舞伎町ゲイバー「CRAZE」店員・カマたくは、言葉を受け取る側次第で大きく変わっていくという視点を投げかける。「結局、受け取り方によるし、受け取り手も考えないといけない。私は結構差別されるし『オカマだからおもしろい』と散々言われたが、褒められていると思った方が楽だし『ありがとうございます!』で終わらせた方がいい」と述べる。

 これには佐々木氏も同意し「被害者意識は過剰に増幅する問題があり、今の時代はみんな被害者になりたがる。それは被害者の方が得だからで、被害者意識だけが異様に広がる状況があり、全員が被害者になってしまったら社会も回らない」と語った。

 村井氏は女性社員が妊娠した際、職場の上司・同僚に伝えるべきか否かに触れた際のことだ。村井氏が「職場で妊娠を報告するのは、労務管理上必要だからしているはず。こう配慮してほしい、こういう要望があるなどであれば言えばいいが『妊娠した』と言われても、周囲はどうしていいかと戸惑うし『おめでとう』と言っても、その言い方が嫌だと言われてしまったら怖いという人もいる。コンプライアンスとしては仕事に直接関係ない情報は話さない方がいい」と説明。

 これに反論したのが自民党の小林史明衆議院議員だ。職場での円滑なコミュニケーションが阻害される危険性についても言及した。「そういう職場が良いというのは、ちょっときつい気がする。それで生産性が本当に上がるのか、雰囲気も含めていい職場なのか、いいパフォーマンスが発揮される職場になるかといえば、かなり危ない」と反発。

 「リスクマネジメントとしては正しいんだと思う。ただ我々がそういう社会を望ましいと思うのかも、考えた方がいい。今の世の中は、字面だけを捉えて勝負することも多くなった。ただ、なんでそんなことを言ったのかという背景を理解しようという意識をお互い持たないと、言われた言葉だけに敏感になりすぎてしまう。マイクロアグレッションというものは絶対に知った方がいいけれど、その名前がついたことで受け取る側が敏感になりすぎないように普及することも重要だと思う」。 (『ABEMA Prime』より)

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