青森県で8日夜に起きた最大震度6強の地震では50人以上がけがをし、断水も起きました。今回の地震を受けて気象庁が初めて発表したのが『後発地震注意情報』です。文字通り、後に発生する恐れがある巨大地震への注意を呼び掛けるもので、その対象地域では“備え”も始まっています。
関東の茨城・千葉23市町村が対象
震源から500キロ以上離れた茨城県大洗町。8日夜の地震では震度2を観測しました。被害は確認されていませんが、9日から始まったのは防災無線を使った注意の呼び掛けです。町の職員が文言を作成。全世帯に貸し出されている端末にAIの自動音声が流れます。
「現在、大洗町に北海道・三陸沖後発地震注意情報が発表されています。平時よりも巨大地震の発生に注意し、地震への備えを心がけましょう」
東日本大震災で4メートルの津波に襲われましたが、津波で死者を出さなかった経験は、住民の心に深く刻まれています。
「自然と流れてくれるので、情報が色々分かる」
地震発生時に地域の避難所となる小学校でも備品の確認が行われるなど、いざという時の準備が進められていました。
「海の町なので海とは切ってもきれない。この1週間、万が一災害があった場合に、住民の方を安全に避難所でお迎えできる態勢の準備が必要だと」
「逃げられる態勢」どう作る?
8日の地震を受け、気象庁は2022年の運用開始以来、初めて後発地震注意情報を発表しました。これは日本海溝や千島海溝沿いで今後想定される、より大きな地震への警戒を強めるものです。7つの道と県、合わせて182の市町村が対象で、茨城県や千葉県といった関東も含まれています。2011年の東日本大震災では、東北沖でマグニチュード7.3の地震があった2日後にマグニチュード9.0の地震が発生しました。
「最悪のケースでは3.11のような地震が起きるということを想定する」
ただ、注意情報が発表されても実際に巨大地震が起こるのは100回に1回程度。そのため、事前の避難は必要ないとしています。
「すぐに逃げられる態勢の維持。非常用持ち出し品の常時携帯などの、1週間の間の特別な備えを行ったうえで、社会経済活動の継続をお願いできれば」
対象地域に住む人は。
「バッグは1つ用意していて、その中に防寒具を入れている。寝る時、厚着もできないので、寝ている近くに羽織れるような暖かいものを用意しておく」
(Q.避難するとなると)
「寒すぎます。さすがに。下だけでも普通のズボンをはいて寝るとか。防寒具やカイロを常備しておいて、持って逃げるしかない」
青森市では、小中学校61校を集めたオンライン会議が行われ、子どもたちへの対応について話し合われました。
「保護者の判断で『今週は休ませたい』といった場合は、出席扱いにするということで大丈夫でしょうか」
「その通りでございます」
「学校に改めて防災計画を見直して対応してもらう。子どもたちの安全安心のために緊張感を持って対応していきたい」
初めて発表 どう対処すれば
『北海道・三陸沖後発地震注意情報』は、2022年から運用が始まり、今回初めて発表されたものです。その内容は千島海溝、日本海溝と呼ばれる深い溝が海底を走るエリア、またはその周辺でマグニチュード7以上の地震が発生した場合、さらに大きな地震が起きる可能性が普段よりも高まっているとして、1週間程度、備えの再確認や迅速な避難の準備を国が呼び掛けるものです。
過去の例をみてみると、北海道や三陸沖では巨大地震が“時間差”で発生しています。
1963年、択捉島南東沖地震では、マグニチュード7.0の地震の約18時間後に、マグニチュード8.5の地震が発生しました。
2011年、東日本大震災では、マグニチュード7.3の地震の約2日後に、マグニチュード9.0の巨大地震が発生しました。
8日に発生した地震は青森県東方沖が震源で、マグニチュードは7.5ということで、基準に当てはまったので注意情報が発表されました。
どういったことに注意すればいいのか。京都大学防災研究所・西村卓也教授に聞きます。
(Q.今後、情報が出されている地域の住民はどんな備えで過ごせばいいですか)
「今回の地震がきっかけとなって、さらに大きな地震が周辺で起きるかもしれないので、念のために警戒が呼び掛けられています。この注意情報が出たのを機に、日頃の地震に対する備えを見直してほしいと思います。例えば、避難場所や避難経路の確認、家具の固定や津波の浸水域をハザードマップで確認する。浸水域に住んでいる方は、次に大きな地震が来たらすぐに逃げられるように、身の回りの準備をしておく。特に寒い時期なので、防寒具の準備も忘れずにしておくということです。そのうえで、普段の日常生活を送っていただくことになると思います」
(Q.14年前に東日本大震災がありました。あれほどの規模の地震でエネルギーがある程度、放出されたと思ってしまいますが、その考えは当たらないということですか)
「東日本大震災の震源域は茨城県沖〜岩手県沖の南くらいまでです。今回の震源域は、それより150キロぐらい北の青森県東方沖になります。東日本大震災の時に動かなかった場所で今回地震が起きたということです。まだ解消されていないひずみが、東北や北海道にはまだまだあると考えた方がいいと思います。この辺りは1年間で8センチほど、海のプレートが陸のプレートの下に沈み込んでいます。年数を重ねるほど、プレートの境界辺りにひずみが溜まっていき、それが耐え切れなくなるとプレートが跳ね上がって地震が起きます」
(Q.年間8センチほど動いているということですが、現在はどれくらいの動きになっていますか)
「年間8センチほどですが、これが何十年、何百年と経つと、その分ひずみが溜まっていきます。例えば十勝〜根室の沖合では、最後に地震が起こったのが1600年代と言われていて、それから300年以上かかっています。300年×8センチで24メートル分くらい地下にひずみが溜まっていて、これが一気に解放されてずれ動くことが予想されます」
(Q.改めて、今後、注意すべき点を教えてください)
「本当に最悪の大きな地震が来た場合には、東日本大震災に匹敵する死者や津波の高さの地震が起こり得ます。特に沿岸部に住んでいる方は津波に気を付けてほしいです。地震の予知はなかなかできないものですが、今回の注意情報は少しでも可能性が高まっている時に出されるものです。これをきっかけにして、1人1人の防災意識が高まって、地震に対する備えが高まることを期待しています。大きい地震が起きた時に、少しでも命が助かるように出されている情報だということで、皆さん備えてほしいと思います」
















