番組が独自に取材しているNPO法人「フローレンス」の問題です。取材を進めると、去年1月、フローレンスは保育以外の幅広い用途に使える運転資金として5000万円を借り入れていたことが分かりました。
区に異なる申請“目的外利用”は
「十分に理解していなかったという認識でおります」(11月14日 1回目)
認定NPO法人フローレンスに浮上しているのは、補助金の使い方に違反があったのではないかという疑惑です。
2017年、補助金を使って保育施設「おやこ基地シブヤ」を建設し、10月に開所したのですが、12月、行政に認められていない「根抵当権」が設定されていました。
「ローン自体が返済し終えれば、『抵当権』は解除されるのが一般的」
「『根抵当権』の場合なんですが、その不動産の価値の上限額まで、借りたり返したりを何回もできる。その使用先についても、不動産以外の事業目的としても借り入れができるというところが大きな問題」
「抵当権」と「根抵当権」。「根抵当権」では、施設を建てるための補助金をもとに、別の目的での借り入れができてしまうため、行政が許可を出すことはほとんどありません。
フローレンスは、渋谷区に対して「抵当権」を設定すると申請しておきながら、実際は「根抵当権」で建物を“担保”にしていたのです。
「本来、本交付金を活用して整備した施設に対して、根抵当権を設定することは、適正ではないものと考えております。今後の対処方針については、確認結果を踏まえて検討したい」
見えてきた資金管理のずさんさ
番組は、12日を含めて合わせて3回フローレンスを取材。なぜ違反行為が起きたのか調査したところ、資金管理のずさんさが見えてきました。
「ほとんど建物の建設の事業負担分を支払う部分に使っている」(11月14日 1回目)
あくまで「建物を建てる」ために借り入れたと説明しますが。渋谷の施設は2017年10月オープンで担保の設定をしたのは12月です。
「登記簿を見ると、12月1日になっている。建物のために借りたというのであれば、当然もっと早い時期になるんじゃないか。この建物のために借りたのですか」(渋谷区議会 11月27日)
2回目の取材でこの疑問をぶつけると、こう答えました。
「(Q.いつ借り入れをした?)2017年の2月です」(11月28日 2回目)
渋谷区に、担保の許可を求めたのは10月。そこから8カ月も前にすでに借り入れていたのです。12日の説明では…。
「2017年2月の借り入れの時点で、建物を担保に入れることを前提に区と協議をしておりました。金融機関からはその前提で融資を受けているということになります」(12月12日 3回目)
フローレンスは、10月は書面での手続き上の話で、前々から区と担保の協議を進めていたと説明します。
5000万円借り入れ“目的外利用”
番組はさらに、フローレンスのカネの動きを調査。フローレンスが出している関係資料を見ると、東日本銀行から新たに借り入れがあります。
フローレンスは「根抵当権」でカネを借りた東日本銀行から2023年度に5000万円を借り入れ。「小規模保育園改装資金等」という名目になっていました。いったい何に使われたのでしょうか。
「こちらは運転資金という名目で金融機関から借り入れを行っておりまして。本来の抵当権設定で認められている建物建設の費用でないというのは、間違いないことだというふうに認識しております」(12月12日 3回目)
渋谷の施設を建てるための補助金をもとに、結果的に、目的外の利用を含む「運転資金」として5000万円を借り入れたことになります。
「当時金融機関とのやりとりの中では担保に関するやり取りが一切なかった。私どももこの時点で根抵当権に気づくことができないまま5000万円の借り入れを行ってしまった」(12月12日 3回目)
一部のおよそ2000万円は、別の借り入れの返済にあてたといいます。「小規模保育園改装資金等」という記載については東京都に訂正申請したということです。
「補助金を受けて活動する事業者として、不確かな認識のまま手続き等を行ってしまったということは、非常に問題があったというふうに思っております」(12月12日 3回目)
フローレンスによると、2023年度の総収益は40億円を超えます。うち補助金は19億4900万円で、寄付金は6億4300万円でした。更なる運転資金の借り入れが必要だったのでしょうか?
「資金繰りの安定化のために、手元の現金を増やすということを選択しておりましたので、安定的な運営に必要な現金残高を踏まえてそのような判断をした」(12月12日 3回目)
「補助金の返還義務」発生の可能性も
補助金で建てた建物を担保に、目的外に使用してしまったらどうなるのでしょうか。
「補助金を受けて設立した施設について、承認を得ないで担保を提供した場合は補助金適正化法違反になります。『補助金交付決定の取り消し』と『補助金の返還義務』が発生する可能性」
渋谷区議も警鐘を鳴らします。
「完全に目的外使用。不当な行為だと思います。国の方も対応すべきなんじゃないでしょうか。当時の理事長だったのは今の会長ですから。ちゃんと駒崎会長本人が説明責任をしっかりと果たすべきなんじゃないでしょうかね」(12日)
認定NPO法人フローレンスの広告塔になってきたのは、現在、会長の駒崎弘樹氏です。問題の担保を設定した当時は代表理事で、今月いっぱいで会長職から退任すると発表しています。
「認定NPO法人は透明性の高い経営が求められており、寄付者の皆様にはきちんとした収支報告書を送らせていただいております」
フローレンスは今後どうしていくのでしょうか。
「駒崎含めて当時の関わるものについての処分ですとか、そういったことにつきましては、現時点では是正対応を最優先に取り組んでおりますので、そちらが優先だというふうに認識しておりますが、並行して本件に関する責任問題につきましては、弊会の理事会にて検討しているという段階になります」(12月12日 3回目)
(「グッド!モーニング」2025年12月13日放送分より)













