社会

サタデーステーション

2025年12月14日 00:30

“車避難”と“夜の避難”取材でみえた課題と対策 初の後発地震注意情報

“車避難”と“夜の避難”取材でみえた課題と対策 初の後発地震注意情報
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青森県で観測された最大震度6強の地震のあと、初めて出された後発地震注意情報。この週末も警戒が続く中、一刻を争う避難の現場で見えてきた「課題と対策」を取材しました(サタデーステーション12月13日OA)

地震後初の週末 氷点下の厳しい寒さ

報告・田中昌貴ディレクター(13日・八戸市)
「寒い…午前8時前です。天気はいいですが、体をさすような寒さです」

地震発生から13日で6日目。青森県八戸市の気温は-0.9℃。倒壊の恐れがある高さ70mのNTT青森八戸ビルの鉄塔は13日もドローンで亀裂をチェック。未だ周辺の48世帯に避難指示が出ています。

近隣住民
「倒れてきたら大変だよ。寝れない、心配性だからビビッてる」

地震の影響で休業していたさくら野百貨店八戸店は、13日から食料品売り場など一部のフロアで営業が再開されました。

買い物に来た人
「ストックしてある麺とか、そういうので過ごして、そしたら次の日が食料品だけでもやっていますよって」
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取材で見えた“車避難”の課題

8日、青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.5、最大震度6強の地震が発生。八戸市ではビルの外壁が崩れ、窓ガラスが割れるなどの被害が出ました。八戸港には40cmの津波が到達しました。気象庁は今回の地震について運用開始後初となる「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表。15日の月曜いっぱいまで北海道から千葉県にかけての182市町村を強い揺れや津波に対して防災対応をとるべき地域としています。12日は茨城県南部を震源とする地震がありました。マグニチュードは4.9と推定されています。
改めて浮き彫りになったのは“車での避難”の是非です。地震や津波などの災害が起きた場合、原則徒歩での避難が推奨されていますが、高齢者など速やかに避難できない人は車での避難を容認している自治体もあります。今回の地震は、夜に発生したこともあり、車で避難する人が多く見られました。携帯電話の位置情報から分析した青森県八戸市内の人流を可視化した動画には、前の週と比較すると、津波警報が出たあと高台方面の道路で渋滞が発生していることが分かります。

近隣住民
「やっぱり車だよね、歩けない私足が悪いから車に乗って逃げるしかない」

今年7月、ロシアのカムチャツカ半島沖で発生した地震でも、千島列島に5mから6mの津波が到達。そのときも車で避難する人で渋滞が起きていました。

石巻市のタクシードライバー
「下までずっと道、車でふさがっていて、みんなこの辺に脇に(車を)とめちゃうので奥に行きたい人とかも全然進まずに」
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渋滞を防ぐには?“分散避難”模索

津波が迫る中、渋滞に巻き込まれないためにはどうすればいいのでしょうか?
私たちが出逢ったのは宮城県石巻市の渡波地区に住む阿部さん。県が公表した津波浸水想定によると最大クラスの津波が発生した場合、地区のほぼ全域で浸水すると予想されています。現在、地域住民を中心に進めているのが“分散避難の計画”です。

新たな津波避難対策協議会 阿部和夫会長
「近くに高台があって、あるいは高層ビルがあって指定避難場所や環境整備もされて、そういった避難場所が1番いいんですけどその基本的なものが整っていない」

この地区周辺には、避難道路が4つあります。2011年、東日本大震災のとき津波警報が出たあと、内陸に向かう2つの道路に車が集中。渋滞が発生していました。阿部さん自身も、自宅から車で避難している途中、渋滞に遭遇。

新たな津波避難対策協議会 阿部和夫会長
「信号の辺りまで行ったら、やっぱり渋滞しているなってみえたんで」

今年7月、ロシアのカムチャツカ半島沖の地震で発生した津波の際には、自宅近くにある万石橋を渡り、高台に避難。

新たな津波避難対策協議会 阿部和夫会長
「車でスムーズに逃げられる場所と経路は毎日考えていますが、答えが出ないです」

阿部さんは、少しでも渋滞を緩和させるため、住んでいるエリアごとに車での避難先を分散させる対策を訴えています。

新たな津波避難対策協議会 阿部和夫会長
「ただ一方的に逃げろじゃなくて稲井に近い行政区ブロック、そこは稲井トンネルを使ってくれないかとか、そういう分散でもしないとただ車で逃げていいよというと、それぞれ本能的に選んでいっちゃうと渋滞発生する恐れがかなりあるわけですから」
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厳しい冬の“夜避難”課題と対策

地震への警戒が続く中、冬の夜に徒歩で避難する場合、夏の避難とは違った難しさがあるといいます。

北海道立総合研究機構 戸松誠さん
「ポイントになるのは“積雪”それから“寒さ”この2点になります。2つが絡むことによって夏場と違って避難時間が延びるということが想定されます」

12日、マイナス4℃の中、避難所に指定されている小学校までの道では…

報告・田中昌貴ディレクター(12日 八戸市)
「現在、まばらに雪が降っている状態なんですが地面に落ちても雪が溶けない状態になっています。半分、凍ったような状態です」

積もった雪などで路面凍結するため、滑りやすく、転倒する恐れも…

報告・田中昌貴ディレクター(12日 八戸市)
「この点字ブロックですが、もうガチガチに凍ってしまっていますね」
北海道立総合研究機構 戸松誠さん
「雪が積もっているとですね歩く速度が低下する場合がある、凍結する場合はですね、さらに遅くなるというのが想定できるわけです」

避難の難しさは他にもあります。

報告・田中昌貴ディレクター(12日 八戸市)
「車通りが多い道なんですが、車が少ないとかなり暗いです」

地震の影響で停電し、暗闇の中で避難することも考えられます。そんな夜間の避難で役立っているのが…

報告・田中昌貴ディレクター(12日 八戸市)
「暗い中でも光を反射する標識があります」

太陽光や蛍光灯などのエネルギーを蓄える「蓄光式避難誘導標識」です。暗闇の中でも避難所までの方向や距離などが読める明るさを保持してくれます。今回の地震が起きた青森県の東方沖。先月もマグニチュード6.9の地震が発生。過去にも度々大きな地震が起きている場所です。

東北大学 災害科学国際研究所 富田史章助教
「1994年の三陸はるか沖地震の震源域を挟む形でプレートが引き続いて動いているだろうと地震を起こす力というのが、より加わっている可能性があるということを危惧しております 」

今回の地震のあと、ゆっくりとしたプレートのずれが続いていて専門家は同じ規模の地震が起きることを危惧しています。いつ地震が起きるは予測できないため日頃から備えておくことが大切だといいます。

北海道立総合研究機構 戸松誠さん
「避難の持ち出し袋というのをきちんとまとめておいておく、冬に着る上着も含めて(避難する時間を)1分でも1秒でも短くするというのが基本になってきます。雪かきをこまめにしておくとか個人できることはきちんとしておくことが大事」
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高島彩キャスター:
改めて『北海道・三陸沖後発地震注意情報』が出ている地域を確認します。

板倉朋希アナウンサー:
12月13日時点で注意情報が出ているのは北海道、そして青森県から千葉県までの6県・182の市町村です。これらの地域では、今後も大規模地震が発生する可能性が高まっているとして、16日の午前0時まで、地震や津波への備えが呼びかけられています。
高島彩キャスター:
なかでも、被害を拡大させる津波への備えは重要ですね。
板倉朋希アナウンサー:
多くの自治体で、避難タワーの設置や避難ビルの登録が進められています。例えば宮城県の石巻市には、35の避難ビルと、4つの避難タワーがあり、タワー内には120人分の防寒着や毛布、100食分の食料などが備蓄されています。
高島彩キャスター:
課題という点ではどんなことがあるんでしょうか?
板倉朋希アナウンサー:
石巻の避難タワーにはスロープがなく車イスでの移動ができないんですが、改修したくてもその予算が足りないということでした。そして、高い場所への避難以外の対策をしている自治体もありまして、 北海道・根室市では、2025年4月に『津波救命艇』を港に設置しました。避難場所までたどり着くのが難しい場合でも、津波に飲み込まれても壊れない救命艇で命を守る。つまり『浮いて生き延びる』という発想です。こちらは25人乗りで、毛布や簡易トイレ、1週間分の食料などが積まれています。国土交通省によると、根室市以外にも、官民合わせて全国30カ所に津波救命艇が設置されているということです。
高島彩キャスター:
地域によって必要な対策が変わってくるということですが、柳澤さんいかがですか?
ジャーナリスト柳澤秀夫氏:
救命艇は水が入ってこない仕組みになっていると思うんでが、真冬ですと海水温が相当低いですから、高齢者にとってはかなりきついですよね。それと雪が降って道路に積もっていると、徒歩でも車でも移動ができないという事になりかねませんよね。備えをしていても想定通りにいかないという事は必ずあります。ですから繰り返しシミュレーションをして問題点、課題を洗い出していく努力というのは必要だと思います。津波とか地震の備えというのはこれでいい、万全という事はないというのは、肝に銘じておきたいと思います。
高島彩キャスター:
先日の大きな揺れも夜でしたから、真っ暗な中での避難というのも一度やってみる。そういった意味での備えというのも必要ですね。
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