13日も各地で火災が相次ぎました。専門家からは「“大規模山火事時代”に入った」と声も上がる中、頻発する山火事を検証、要因は空気の乾燥だけではありませんでした。(12月13日OA「サタデーステーション」)
続く乾燥注意報 火災相次ぎ各地で死者も
東京都内では13日の夜、一時的に雨に雪が混じった状態に。埼玉県では午後9時半ごろに初雪の便りが届きました。13日には千葉県旭市の住宅が立ち並ぶエリアで火災が発生。東京都心では9日連続で乾燥注意報が発表され、12日から13日にかけて、火災が相次いでいます。全国では、多くの死者も出ました。大阪府守口市では住宅6軒が燃え、13日朝に2人の遺体が見つかりました。広島市では12日夜に繁華街のビルで火事があり、焼け跡から60代の男性客とみられる遺体が見つかりました。愛知県岡崎市では住宅が全焼し、焼け跡から1人の遺体が見つかり、札幌市ではアパートの1室から出火、80代の男性が搬送先の病院で死亡が確認されました。
「大規模山火事時代」専門家が危機感
関東では今週、自衛隊に災害派遣が要請されるほどの、大規模な山火事も相次いでいます。月曜には、群馬県富岡市の妙義山で火災が発生。火曜には、神奈川県伊勢原市にある日向山で火の手が上がりました。火がついた塊のようなものが山の斜面を転がり落ちていき、止まった場所で激しく燃え上がる、といった、“飛び火”のような現象も確認できます。
「日本でも10年20年の時間で考えると、山火事が増えていく“大規模山火事時代”に入ったと考えます」
危機感を口にしたのは、山火事に詳しい日本大学の串田教授です。日向山の周辺で気にかけていたのは、土の湿り具合を表す「土壌水分量」です。
「こちらは8.4%ですね。10%以下ということで極度に乾いた状態」
通常、この時期の山の土壌水分量は20%ほどで、10%以下だと、土の上に積もった落ち葉などもかなり燃えやすい状態になるといいます。関東ではこの1か月、雨がほとんど降らず、東京都心の降水量は平年のわずか1%。前橋の降水量は0ミリです。今年秋の3カ月間でみても、東京都心では、今世紀に入って最も少ない降水量を記録しています。
「今後、乾燥の季節が訪れるので、今以上に乾燥が進むリスクがある。火災のリスクが上がっていくことも考えられる」
大規模山火事を検証 長期化の一因「燻焼」とは?
ひとたび、大規模な山火事が起きると、鎮火までにかなりの時間と労力を要します。実は、妙義山と日向山の火災も、延焼の恐れがなくなる「鎮圧」はできたものの、再燃の恐れがない「鎮火」までには至っておらず、13日もそれぞれ現地で調査などが行われています。
日向山では、12日、煙も出ていないような場所にヘリから水を撒いていました。
「熱源があるんだと思う。燻焼(くんしょう)って言うんですけど、くすぶり続けている」
「燻焼」とは、土の中などがおよそ500℃の高温となり、炎も出さずにくすぶっている状態をさします。
山火事発生2日目、日向山では白い煙が上がっているものの、炎は見えません。しかし、サーモカメラで見ると、広範囲に「燻焼」とみられる熱源が映っていました。
「地中深くでくすぶっているので、なかなか消し止めるのは難しい。完全に消し止められなければ、また大きく再燃する可能性がある」
今年2月、岩手県大船渡市で発生した山火事が、鎮火に至ったのは、なんと、発生41日目でした。延焼範囲が平成以降、国内最大で、市の総面積のおよそ1割が焼け、鎮火を確認するために広大な範囲の調査が必要だったためです。現地調査を行った串田教授は、ここでも「燻焼」が起きていたといいます。
「大船渡では土を掘り返して火種を見つけて、そこに水をかけるというようなことをしていた」
熱源が地中2メートル付近まで潜り込み、発生から1か月ほどが経っても、断続的に白煙が上がるような場所もあったとの報告もあります。
たき火やたばこに罰金も「林野火災警報・注意報」運用開始へ
この大船渡市の山火事を教訓にして、来月からは、全国でたき火や喫煙に関する規制も強化されます。直近で雨が降らず、乾燥注意報と強風注意報が重なった場合などには、市町村が「林野火災警報」を発令できるようになります。指定区域内でのたき火やタバコを禁止し、違反者には罰金や拘留を科すことも可能です。実は、国内の山火事の原因の99%近くが、たき火や火入れ、タバコなど、人為的なものだったという、データもあります。(京都大学防災研究所・峠嘉哉特定准教授らの研究グループ)
「ちょっとした火の不始末で大きな山火事につながる。これまで以上に火の取り扱いに注意をしなければいけない」
