東京都と46道府県の税収格差を巡り、政府・与党は偏りをなくすため東京都に入る税の一部を地方に振り分ける案を検討している。東京都の今年度の税収見込みは約6兆9000億円。総務省によれば、独自政策に使える財源は他の道府県の平均の約3.6倍だ。ただ、この案に小池百合子都知事は「東京を狙い撃ちにするが如く一方的に収奪して他の自治体に分配をするということは、地方自治の根幹を否定するものにほかならない」と不快感を示す。「ABEMA Prime」では前都議、現職の県議らとともに、格差と是正について議論が行われた。
■1人当たり一般財源、東京は“平均レベル”

政府・与党が考える税収格差是正策は、東京都のみに納税する大企業が増加し、税収格差が拡大したことを受け、法人事業税の制度の一部見直し、固定資産税による是正が検討され、2025年度の税制改正大綱に盛り込む予定としている。ただし小池知事は、人口1人当たりの一般財源額が全国平均22.9万円(令和5年度決算)で、東京は23.8万円(32位)だったことを述べ「全国平均とほぼ同水準。どこに偏在があるのか」と述べている。
ただ東京では、独自政策に使える財源が他県よりも多いことから今年の夏は物価高対策として水道の基本料金を4カ月無料とし、私立を含めた高校の授業料の実質無償化、公立小中学校の給食費無償化も実現。子育て政策では18歳までの子ども1人当たり、所得制限なしで月5000円の支給も進められている。
2ちゃんねる創設者のひろゆき氏は、1人当たりの一般財源額がほぼ同じなのに東京に財源がある理由について「わかりやすく例えれば、東京ではタワーマンションに200世帯、1000人ぐらい住んでいると、下水道1本で1000人につながる。これが(バラバラに住んでいる)地方だと各家庭まで水道管を作らないといけない。だから人口密度が高い東京の方がコストが安くなり、余ったコストが公共に使えるから東京が豊かになるし、金が余っているのは確か」と説明。
その上で、都の税収を地方に再分配することには「地方で子どもが生まれ、0歳から18歳までコストをかけて教育したものが、首都圏の大学に入り、そこの企業で働き、税金も首都圏に納めている。小池知事は『法的に収奪していいか』という言い方をしているが、18歳まで育てた地方に対して何かしら納めますという方が正しい。育てることを地方に任せた結果、東京の特殊出生率は『0.96』と日本で一番低い。地方から人口を吸収して、自分たちは人口を作り出さないのであれば、人口を収奪しているのは東京だ」と持論を展開した。
■1人当たりの政策経費に大きな格差

東京に隣接する県の議員たちからも、是正を求める声があがる。埼玉県議・田村琢実氏は「偏在がかなり厳しい状況だ。令和3年度で見れば、1人当たりの政策経費は、埼玉県が6600円だが、東京は6万7600円。10倍以上の差がある」と指摘。財源格差が影響している例として、保育士の補助事業では「埼玉の川口市と、東京の足立区・北区は接しているのに、月の給与が5〜6万円も違う状況がある。そのため人材も東京に流出する」と語る。
千葉県議・折本龍則氏は、市川市が東京・江戸川区に隣接している例として「旧江戸川を挟んですぐに東京だが、高校の授業料無償化で言えば、同じ学校に通っている生徒でも東京の生徒は無償、千葉県から通う生徒は授業料を払うような不条理が生じている」と語る。また「コストで比較するのはナンセンス。東京もコストがかかるから財源もあってしかるべきという話では、地方間格差は是正できない。やはりいかに地方の行政サービスを上げて、格差を是正していくかの議論をしなければいけない」と訴えた。
ただ東京都の言い分もある。前東京都議・川松真一朗氏は「本来だったら東京に入ってくるはずの1兆5000億円が国に召し上げられている。地方のみなさんと共存共栄は考えているが、事情も聞かれずに国が一方的にルールを変えるような強引なやり方については、もっと議論をしてほしい」と述べる。また自民党・土田慎衆議院議員も「東京ばかり儲かっているというのではなく、東京も含めてどれだけコストがかかっているかを合理的に分析しなければいけない。地方に財源を出すという話になった時、我々も有権者のみなさん、都民のみなさんに説明が必要だ。都民のみなさんも生活は本当に苦しい。『東京だけいい思いをしている』と羅列されても、みなさんは実感がない。こういう理由があるから地方に金を出さないといけないという『見える化』が必要だ」とした。
■ひろゆき氏「東京が地方に還元を」

都、県それぞれの立場からの意見を聞いたひろゆき氏は、改めて東京都は効率化を進め、かつ得られた税収を地方に還元する仕組みを求めた。「東京から企業を離すというのは間違いで、大企業は東京にあるからより合理的に効率的に利益が上げられる。だから東京でいい。ただ、若い人たちが東京に吸収されてしまうことに対して、若い人を作った地方に還元しないから、日本の人口は毎年80万人も減っている」。
また東京で実施されている行政サービスを、他の道府県で全て取り入れる必要はなく、実施可能な項目を模索し実行することの重要さを語る。「コストの問題というより、たぶん項目の問題。介護を東京の人と同じように受けられるようにしようとしても、東京は救急車が10分以内で来るが、地方では無理。ただし教育ならば全て同じような教育を受けられるような環境を用意することはできる。北欧やフランスは、どの学校でも同じ教育が受けられるようなスタイルになっている。そういうところから東京と地方を同じにはできるはずだ」。 (『ABEMA Prime』より)
