厚生労働省の調査で、全国の病院の7割以上が赤字だったことが分かり、かつてない危機感が広がっています。高市政権が打ち出す支援策は、医療崩壊を防ぐことができるのでしょうか。
なぜ、赤字に?
日本の病院経営の現状です。病院経営が、危機的な状況に陥っていることが分かりました。
厚生労働省が先月26日に公表した医療経済実態調査によると、一般病院(20床以上の病床を持つ医療機関で、大学病院や地域の中核病院などを含む)の72.7%が赤字でした。昨年度の一般病院の損益率は、マイナス7.9%でした。
なぜ、赤字になっているのでしょうか。損益の中身をみると、入院や外来などの収益はおよそ45億円。一方、これにかかる費用はおよそ48億6000万円で、差し引き3億円以上の赤字となっています。
なかでも、診療材料などの消耗品費、給食用材料費、水道光熱費は前年度比で5%以上増加しています。
こうした病院の経営悪化で、医療提供にも影響が出ています。
日本病院会の会長・相澤孝夫さんが理事長を務める長野県松本市の相澤病院では、来年3月末で「陽子線治療センター」を休止すると発表しています。
陽子線治療センターでは、前立腺がんなどの治療を行います。甲信越地方で唯一の設備でしたが、赤字が続き稼働が困難になったといいます。
さらに、医療機関の倒産も急増しています。
帝国データバンクによると、今年1月から10月までの医療機関の倒産は56件で、過去最多のペースとなっています。
医療機関の窮状に対して、高市政権は支援策を打ち出しています。
今年度の補正予算案で、医療への支援に1兆368億円を計上。このうち、医療従事者などの賃上げ支援と医療機関などの物価高対策支援に5341億円をあてるとしています。
診療報酬引き上げで医療費どうなる?
また、病院の収入に直結する診療報酬の改定が迫っています。
診療報酬は引き上げられるのでしょうか。患者の窓口負担増加の懸念も指摘されています。
診療報酬とは、国が全国一律で定める医療行為や薬などの価格。「薬価」と医師の人件費などにあたる「本体」部分からなり、2年に一度改定され、次回改定は来年度となっています。
過去の改定率をみると、本体部分はプラスですが1%以内に抑えられてきて、薬価はマイナス改定が続いています。
日本病院会など6団体は9月に緊急要望を出し、2022年度以降は物価上昇率と診療報酬の改定率が大きく乖離しているとして、本体部分の10%を超える改定を求めました。
5日、これに対して高市早苗総理大臣は「賃上げ、物価高を適切に反映させる」ように指示しました。
診療報酬引き上げで医療費はどうなるのでしょうか。
国民医療費は2023年度には約48兆円。仮に診療報酬が10%引き上げられれば、約4.8兆円必要になることになり、患者の負担が増える懸念もあります。
医師の給料にも地域差
そして、地方では医師不足が深刻化しています。
厚労省が人口10万人に対する医師の数などをベースに医師の多い地域、少ない地域を示す都道府県別の医師偏在指標をみると、去年1月の発表では、青色に塗られた東京や京都、福岡などは医師が多く、赤色の岩手、青森、新潟などは医師が少なくなっています。
こうした状況もあり、医師が少ない地域は医師を集めたい狙いもあるのでしょうか。厚労省の調査では月収の全国平均は約102.6万円に対し、一番低いのが東京で約70万円、最も高いのが岩手で約206万円でした。岩手は東京より3倍近く多い月収ですが、それでも医師が集まっていない現状があります。
改正医療法では、こうした医師の偏りをなくすことができるのでしょうか。
5日に参議院本会議で可決・成立した改正医療法では、都道府県が定める「医師の足りない地域」では社会保険料を財源に勤務する医師に手当を支給することが決まりました。
一方で、外来診療の医師が多い地域では、入院施設のない診療所の新規開設を事前届出制にするなどして、事実上、新規開業を抑制します。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2025年12月16日放送分より)









