東京・赤坂の個室サウナで15日、折り重なるように亡くなっていた2人は、美容の仕事を営む30代の夫婦だったことが分かりました。サウナ室から外に出るドアノブが外れて落ち、閉じ込められる形で2人は亡くなっていました。16日の現場検証では、サウナ室にある非常ボタンの電源が切れた状態になっていて、警察は店側の安全管理に問題がなかったかどうかなど詳しく調べています。
サウナ火事 死亡は30代夫婦
亡くなったのは松田政也さん(36)、そして妻の陽子さん(37)。2人は夫婦でした。政也さんは美容院を経営し、陽子さんはネイリストだったといいます。亡くなった松田政也さんの知人が取材に応じました。
「人柄がいい。知らない美容師さんはいない。素晴らしい人。美容に対する熱心さ、誰にも負けない」
現場となったのは、約3年前にオープンした『サウナタイガー』。ペントハウスが1つに、個室が5部屋。全てが貸し切りでの営業になっていて“完全プライベートでサウナを楽しめる”というのを売りにしていました。ホームページによると、利用料金は1万9000円からだといいます。
火事の通報があったのは15日正午ごろ。松田さん夫婦はその約1時間前にサウナタイガーに来店していました。2人が予約していたのは定員2名の部屋です。鍵を開けて入室すると、リクライニングチェアーが置かれたスペースが広がっています。さらに奥にはガラス張りで仕切られた一角があり、右側に水風呂、真ん中はシャワーがあり、左側にはサウナ室が設置されています。中は2.5畳ほどで、ロウリュウが楽しめます。松田さん夫婦はサウナ室の出口付近で重なるように倒れていました。
この部屋をよく利用するという常連客は。
「このお店の良さだと思うが、利用中に店員さんがどこにいるかも分からないから、他のお客さんと会うことも一切ないんですよ」
(Q.プライベート空間を重視するあまり不安に感じることも)
「それがこのお店のよさだったと思うのですが」
“ドアノブ”外れ落下
捜査関係者によると、サウナ室の座る部分や背もたれが焼けていたほか、室内にあったタオルも燃えていたということです。ただ、現時点では火事と2人の死亡を直接結び付ける事実は明らかになっていません。警視庁は、2人にも腕や背中などにやけどの痕はあったが、命に関わるほどのものではなかったとしています。
いったいサウナ室の中で何が起きていたのか。消防が現場に到着した際に、ある異変を目撃していました。火事の発生時、サウナ室のドアノブが内側と外側、両方とも外れて落ちていたといいます。死亡との関連は分かりませんが、ドアが開かなくなり、2人はサウナ室の中に閉じ込められた可能性があるといいます。
このドアノブに関しては常連客も気になっていたといいます。
「実は使ってて、これ取れるんじゃないかと思った時はもう実際ありました」
(Q.具体的に言うと)
「ちょっと言い方悪いけど、ちゃちな作りだったという印象。スーパー銭湯にあるようなドアノブとはイメージが違ったと記憶してますね」
サウナ室の中には非常ボタンが備え付けられていたそうです。作動させようとした形跡はありましたが、16日の現場検証の時に電源が入っていなかったことが新たに分かりました。
個室サウナの安全対策は
サウナブームを受け、こうしたサウナ施設の数は年々増え続けています。個室の空間で、どのような安全対策がされているのでしょうか。千葉県船橋市のプライベートサウナでは。
「サウナの中はスプリンクラー、煙の探知機が必ず置いてある。サウナストーブがあるので、火災が発生した時には必ず反応する」
そもそもサウナ施設は安全のため、公衆浴場法や消防法といった複数の法律に加え、自治体ごとの条例の基準を満たさないと開業することはできません。そのうえで、利用する側にも「火災につながるものは持ち込まない」などルールを徹底しているといいます。
「サウナで事故があったり、体調が悪いことがあった場合は、必ずサウナ室には非常ボタンがあるので、お客様ご自身で押していただく。バックヤードでアラームが鳴るので、スタッフが駆けつけて対応する。法例で決まっているので必ずつける」
また、火事が起きた施設のように、ドアノブがついているケースは珍しいといいます。
(Q.ドアの構造に規定はない)
「規定は特にないと思う。サウナから出る時に容易に出られるよう、ドアは中から押すのが一般的」
ただ、店側がこうした対策をしても火災のリスクはゼロではありません。
「部屋にお客様が一度入ってしまうと、目の届かないところがある。施設のルールにしっかりのっとって、施設のことを色々聞いて、それに従ってもらえればと」
施設は当面の営業停止
赤坂のサウナで死亡した夫婦について、警視庁は司法解剖をして死因を調べるとともに、事故と事件の両面で捜査しています。一方、サウナタイガーの運営会社は当面、営業を停止することを発表し「関係機関と連携し、原因究明と再発防止に全力で取り組んでまいります」としています。










