東京都と、その他の46道府県の税収の格差を巡り、政府・与党は偏りをなくすため、東京都に入る税の一部を地方に振り分ける案を検討しています。
東京都との行政サービスの格差に、地方から不満が出る一方で、東京都は、税の再分配案に猛反発しています。
■東京 手厚い子育て支援「羨ましい」 「不公平」近県から不満
行政サービスの格差について街の声です。
「都内は、保育料がタダと聞いてすごく羨ましい。一駅違うだけなのに、なぜこんなに差があるのか」
千葉市在住、20代の女性は、
「そろそろ、子どもがほしいな…」
と考え始めた矢先に、東京では無痛分娩に最大10万円の助成金が出ると知りました。
「東京は、子育てに対しての支援が手厚く、羨ましさと同時に、不公平感を感じている。2年前に戸建てを建てたが、今後も格差が開くようなら、家を売却し、都内に引っ越すことも考える」と話しています。
「以前は川崎市に住んでいたが、東京は保育園が無償化ということもあり、都内に引っ越した。月数万円の負担がなくなるのは大きい」
東京と川崎市では、どのくらい違うのでしょうか。
保育料と給食費の負担額の比較です。
年収600万円〜700万円の世帯で子どもが2人いる場合、3年間の保育料と公立の小中学校の9年間の給食費を合わせた負担額は、川崎市で約385万円ですが、東京は0円です。
東京都独自の主な行政サービスです。
所得にかかわらず、
●すべての子どもの保育料無償化、
●公立の小中学校の給食費無償化、
●公立・私立の高校の授業料実質無償化、
●18歳まで月5000円を支給、
●水道の基本料金を今夏4カ月無料
などです。
東京の行政サービスが充実する理由についてです。
都道府県別の地方税の歳入額です。
東京都は、全国で1番多い約6兆3450億円です。
一方、最も少ないのは鳥取県の約740億円で、東京都は鳥取県の約86倍です。
また、全都道府県の平均は約4973億円です
なぜ東京都は、地方税の歳入が突出しているのでしょうか。
主な地方税ごとに見ていきます。
1つ目は『個人住民税』です。
人口を比較すると、東京は1417万8000人と、大阪、神奈川を大きく上回り全国最多です。
住む人が多いため、住民税の税収は多くなります。
2つ目は、『法人事業税』です。
企業数を比較すると、東京は42万3595社で、大阪、愛知を上回り、こちらも全国最多です。
より多くの企業が東京都に税金を納めるため、税収は多くなります。
3つ目は、『固定資産税』です。
23区を中心に地価が高騰していて、『商業地の変動率』の全国平均は2. 8%ですが、東京都は11. 2%と、2024年から大幅に上昇しています。
そのため、土地代などに課される固定資産税の税収が多くなります。
■人材流出に懸念 近隣3県はサービス格差是正を要望
東京の近隣の3県は、格差の是正の要求をしています。
「うちの初任給は手当込みで約24万円だが、東京都は保育士に対する独自の補助金制度もあり、30万円行くところもある」
その結果、
『人材を呼び込もうと就職フェアなどで説明会を行っているが、東京都のブースのほうに人が流れていく状況』だということです。
「労働環境の面で工夫しているが、すぐそばの東京が給料も手当てもいいとなれば、人手不足は加速してしまう」と話しています。
「医療・介護・保育で人材を確保するために、東京都は2025年度だけで、1100億円の予算を計上している。それぞれの地域が育てた人材を東京都が全部引き抜いている状況」としています。
「医療・介護・福祉・子育てなどは、全国一律で手当てをするべきだが、格差が開こうとしている。隣県であればこそ、人材が流出する傾向が昨年よりも高まっている」と話しています。
「東京都は、金が余って仕方ないように見える。東京都が悪いのではなく、仕組みが悪い」
千葉・埼玉・神奈川の3県は、2025年8月に、行政サービスの地域格差の是正などを求めて、総務省に申し入れを行いました。
■格差是正へ 東京の税収 地方に再分配?都知事は猛反発
政府・与党は、東京都と他の46道府県との税収格差の是正を検討しています。
都道府県に納める『法人事業税』と『固定資産税』を再分配する仕組み作りを検討し、2027年度に結論を出すとしています。
「東京を狙い撃ちにするがごとく、一方的に収奪して他の自治体に分配をするということは、もはや地方税制であるとか、地方自治の根幹を否定するものに他ならない」
2025年度の東京都の税収見込みは、約6兆9000億円です。
独自施策にあてられる住民1人あたりの金額は、46道府県が平均7万8000円なのに対し、東京都は28万1000円で、約3. 6倍という試算もあります。
「言ってみれば理論値に過ぎません」と、首都ならではの警察、インフラ整備、災害対策などが計算に反映されていないとしています。
「自治体の税収と地方交付税を足した『一般財源』は、人口1人当たり全国平均22万9000円。東京都はほぼ同水準の23万8000円。偏在というならば、どこに偏在があるのか」と話しました。
「政府は、東京都の税の余剰分を地方に分配しようとしている。このような税の分配は、憲法違反でない限り、税収の平準化などを理由に立法化できる」ということです。
■東京と地方 なぜ格差?地方交付税の問題点とは
地方交付税とは、すべての自治体が一定の行政サービスを提供できる財源を保障するため、国から地方公共団体に交付される資金で、標準的な経費と税収の差額が配分されます。
自治体の税収のみで需要をまかなえるのは、47都道府県で東京だけです。他の46道府県には、地方交付税が交付されています。
ただ、国が標準的な経費を保障しているため、地方が国に依存し、地方の財政が効率化しないという指摘もあります。
「地方の自治体は、より良いサービス提供のため税収をアップする努力をして、交付税への依存から脱却する必要がある。税金の使い道も、国の定めた水準ではなく、各自治体で決めるようにするべき」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月17日放送分より)














