社会

グッド!モーニング

2025年12月17日 12:24

「廃虚の女王」見学ツアー 不法侵入を抑制、観光資源として活用「はかなさ伝えたい」

「廃虚の女王」見学ツアー 不法侵入を抑制、観光資源として活用「はかなさ伝えたい」
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 その美しさから「廃虚の女王」と呼ばれ、普段は立ち入ることができない廃虚ホテルの見学ツアーが来月実施されます。歴史を刻んだ廃虚を観光資源として活用する取り組みを取材しました。

国の有形文化財 不法侵入続出

摩耶山再生の会 慈憲一事務局長
「ここが4階の余興場と言われていた場所です。200人入れるホールでステージがあって、一番この建物で大きなスペースですね」

 かつて多くの人でにぎわった場所も今は…。

「表層の部分がどんどん剥離(はくり)して崩落している。(破片は)全部これ上から落ちてきたものですので、ガラスで全部(窓が)ないと思うんですけども、風は吹き込みますし、上から雨漏れもありますので、ほぼ外といっていい感じ」

 不法侵入者によって割られたガラス。これは兵庫県神戸市にある旧摩耶観光ホテルの内部の様子です。

 1929年から1993年まで使われていましたが、その後廃墟化し、いつしか「廃墟の女王」と呼ばれるようになりました。

廃墟としては異例の国の有形文化財に登録
廃墟としては異例の国の有形文化財に登録

 しかし、当時の装飾様式など建物の価値が評価され、2021年には廃墟としては異例の国の有形文化財に登録されました。

 現在は立ち入り禁止の「廃墟の女王」。管理しているのは摩耶山再生の会・慈さんです。特別に中を案内してもらいました。

「ここに勝手に入った人が書いたということですね」

 スプレーで書かれた落書きが目立ちます。下に降りる階段には、天井から落ちた無数の破片がありました。

 大きな照明が床に落ちていたレストランにも、不法侵入の跡が残っていました。

「昭和36年から昭和42年(1960年代)の6年間の間のものだと思いますね」
内線電話として使われていたという黒電話
内線電話として使われていたという黒電話

 入り口にあったのは当時、内線電話として使われていたという黒電話です。

「だいぶ盗まれました。ネットオークションで出品されている例もありましたし。見たら『摩耶観光ホテルで使われていた電話機』みたいなタイトルで売られていたのを一つ確認しましたね」

 外に出ると…。

「外壁がバンバン落ちてきている。鉄筋がむき出しになって、日々崩壊していると言ってもおかしくない」
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観光に活用 行政も支援

公式に廃墟に入ることができるツアー
公式に廃墟に入ることができるツアー

 「廃墟の女王」を悩ませる不法侵入者の存在。こうした状況を改善すべく慈さんが始めたのが、公式に廃墟に入ることができるツアーの提供です。

「不法侵入を抑制するために(ホテルを)公開した方がいいんじゃないかと」

 参加費は一人5000円。周辺の摩耶山を歩き、最後に廃墟ホテルの中へ入ることができます。

「市民団体と行政で安全観光ということで、(行政に)例えば柵をしたりとか、危険がないように手伝ってもらった。日本全国いろいろ廃墟あるんですけれども、ここまで近く寄れるのは、ここだけだということで非常に好評」

 ツアーで得る収益は年間およそ80万円。保全費用やセキュリティー代に充てられます。

見学ツアー ファン感激

摩耶山再生の会 慈憲一事務局長
摩耶山再生の会 慈憲一事務局長

 番組は10月に行われたツアーに同行しました。ケーブルカーを上ると…。

「あそこに摩耶観光ホテル。あれ建てるのに道路なしですから。あのコンクリート全部ケーブルカーで運んだんです」

 中には当時のホテルを知る参加者もいました。

「じかに見たのは昭和38年以来。パーティーで何回か来た。やっぱり見たい。見届けたいかな…」

 昔のホテルを知る人も慈さんにとっては大切な情報源です。次のツアーで、話のネタにすることもあるといいます。

「このツアー、結構昔(ホテルに)行ったという人が来られる。その方の話とか写真をいただくということは結構あります。これツアーしながら、情報収集も兼ねている」
ホテルまでたどり着いた参加者たち
ホテルまでたどり着いた参加者たち

 摩耶山を下り続けることおよそ2時間。ついにホテルまでたどり着きました。

「これが余興場と言われる部分ですね。ここでダンスをしたりとかイベントをやったそうです」

 ツアーでは、ホテルのバルコニーに出ることもできます。当時を知る参加者はこう話します。

「あそこに(自分たちが)ずらっといたなとかね。断片的ですけど、思い出しました。朽ちていくのを見るということもいいことですよね。よく見てあげて良かった。ありがとうという気持ち」

 慈さんもこう話します。

「元々ここはネガティブな施設だったんですね。壊れていますし、悪いことをしに行く所ということで、どちらかというと負の遺産みたいな感じだったんですけど、今となってはこの街の魅力資源の一つに取ってもらえるようになったと思う。人間が作ったもののはかなさみたいなのが伝えられたらいいなと」

「グッド!モーニング」2025年12月17日放送分より)

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