東京・赤坂の個室サウナ店で、客の夫婦2人が死亡した火災です。現場となったサウナ室は、全室個室の会員制のプライベート空間でした。警視庁は夫婦が非常ボタンを押した可能性があるとみて調べています。
夫は美容院経営…妻はネイリスト
現場となったサウナ店は、およそ3年前にオープンしたばかり。サウナルームのほか、ヒノキでできた水風呂、外気浴ができるベッドも完備され、部屋はすべてが貸し切りの完全プライベートが売りです。
ホームページによると、利用料金は1回1万9000円のビジター利用から月会費39万円の会員利用まで。
警視庁によると、火災があったのは5階建てビルの3階にあったサウナルームの一室。
定員2人の部屋で、鍵を開け入室すると、リクライニングチェアが置かれたスペースが広がっています。
さらに奥には、ガラス張りで仕切られた一角があり、右側に水風呂、真ん中はシャワーがあり、左側にはサウナ室が設置されています。中は2.5畳ほどのスペースです。
15日、この店のサウナ室で亡くなったのは、川崎市の会社経営・松田政也さん(36)と妻の陽子さん(37)。政也さんは美容院を経営し、陽子さんはネイリストだったと言います。
亡くなった政也さんの知人は、次のように話します。
捜査関係者によると、当時、松田さん夫婦はサウナ室の入り口付近で重なるように倒れていたと言います。また2段目の座る部分と背もたれ、そしてタオルに焦げ跡が確認されています。
常連客も気になっていた「ドアノブ」
火災から2日、“不可解な点”が複数浮かびあがってきました。
不可解な点の1つが、サウナ室の“ドアノブ”。内側も外側も両方取れて、落ちていたと言います。
サウナ室の映像を改めて見ると、扉には木製でL字のドアノブがあります。
死亡との関連は分かりませんが、2人が個室サウナに入ってからドアが開かなくなり、サウナ室の中に閉じ込められた可能性があるといいます。
このドアノブに関しては、常連客も気になっていたといいます。
「実は使ってて『これ取れるんじゃないか』と思った時は、もう実際ありました。ちょっと言い方悪いけど、ちゃちな作りだったという印象」
通常、個室サウナの安全性はどのように保たれているのでしょうか?
取っ手外れた今回は「極めてレアケース」
番組では、川崎にある個室サウナ店を取材しました。
こちらの店では個室のサウナが25部屋あり、サウナや冷水シャワー、休憩スペースなどを貸切で楽しむことができます。
「(Q.安全対策は?)まず1つ目として、扉の取っ手ですね。内側から押すだけでも開くようになっています。もちろん外側は取っ手がついてるんだけれども、中から何かあった時に押せば開くというような取っ手の仕組みになっています」
仮に体調が悪くなった人がいても、ドアにもたれかかると内側からすぐに開く構造になっているといいます。
数多くのサウナを設計してきた専門家は、火災があった現場のドアノブについて、こう話します。
「(現場のものは)『ドアハンドル』という呼称のものだと思う。『ドアハンドル』については、弊社では基本的にはサウナ室に設計しません。通常ですと『押し板』という手を当てる部分だけのプレート状のもの、もしくは取っ手になっていて、それを押すだけになっているもの。基本的には弊社ではその2種類に限って設計している」
今井さんによると、サウナ室の扉の多くは押し引きするだけで開閉できるタイプのものだといいます。
「緊急時を想定すると、操作しないと開かないものは安全上問題がある。“安全寄り”の商品を選ぶということで操作が必要なくても開く設計にしている。(現場の取っ手は)ワンステップ操作が必要になってしまうので、そちらより“安全ではない側の商品”かなと」
もし仮に、今回と同じ状況が起きた場合、どのような行動をとるべきなのでしょうか?専門家は、取っ手が外れた今回の火災は「極めてレアケース」だと指摘したうえで、次のように話します。
「中に設置されている非常ボタンを押す。異常を知らせることが一番だと思う」
「非常ボタン」設置されていたが…
もう一つの不可解な点が、その「非常ボタン」です。
警察によると、火災のあったサウナにも非常ボタンは設置されていて、ボタンを作動させようとした形跡があったといいます。
しかし当時、店の従業員は非常ボタンではなく、個室サウナの外にある煙を感知する機械のベルが鳴ったことで火災に気づいたと言います。
以前に利用したことのある人は、こう話します。
16日、番組で取材した別の個室サウナ店にも、非常ボタンは設置されていました。
「もし例えば体調が悪いよとか、事故とかトラブルが起きた時用のナースコール的なのが、ここにあります。このように押していただくと、事務所のほうに警報が鳴るっていうものになりますね」
こうした非常ボタンは、座った時に視野に入る場所に設置されているといいます。実際に押してみました。
事務所内に響き渡る警報音。これを聞いたスタッフは異常があった部屋へ1分ほどで、駆け付ける仕組みになっているそうです。
火災のあったサウナ店の運営会社は、15日付でホームページにコメントを発表しています。
「お亡くなりになられたお客さまお二人のご冥福を謹んでお祈り申し上げますとともに、ご遺族の皆さまに対し、言葉では尽くせぬほどの深い悲しみとご心痛をおかけしておりますことを心よりお悔やみ申し上げます」
警視庁は司法解剖をして死因を調べるとともに、事故と事件の両面で捜査しています。
捜査の狙い 原因と責任は?
警視庁記者クラブから、社会部の山本光悦記者です。
「警視庁は17日、2人の司法解剖を行うとともに、会社の責任の有無を調べる方針で、17日も現場検証を行う予定です。ある捜査関係者は取っ手などを中心に、施設上の不備がないかなど、建物にあるすべての部屋を一つひとつ検証していくとも話していて、このような会社の責任の有無を調べる捜査は、難しい捜査で長い年月がかかる場合もあります。今回もこうした難しい捜査になることから、捜査一課が加わって捜査にあたっています」
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2025年12月17日放送分より)









