社会

ABEMA TIMES

2025年12月21日 10:15

離婚は減少傾向も“熟年離婚”は過去最多 デメリットをより感じるのは男性? 「財産を隠された」女性の後悔

離婚は減少傾向も“熟年離婚”は過去最多 デメリットをより感じるのは男性? 「財産を隠された」女性の後悔
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 80代の両親と暮らすつくしさん。49歳で25年連れ添った相手と離婚し、去年実家に戻ってきた。父親は離婚後、元夫に「離婚してくれてありがとう」と感謝の言葉を述べたが、娘が「いつも悲しい顔ばかりしていた」ことが原因だった。

【映像】実家の本棚から出てきた結婚式の写真

 つくしさんのように20年以上連れ添った夫婦の場合、「熟年離婚」とも呼ぶ。つくしさんは今の気持ちについて、「結婚式の写真を母はとっておいたみたいで。私はもうどうでもいいので、何もつらくはない」という。母も「今は伸び伸びしすぎ」と笑って語るほどだ。

 離婚件数は減少傾向にある一方で、熟年離婚の割合は増加し、2024年には過去最多となっている。ただ、長年連れ添った分、財産分与などのもめ事が多いのも現実だ。『ABEMA Prime』では、つくしさんと弁護士とともに“熟年離婚の光と影”について考えた。

■夫の浮気を一度は我慢も…

 つくしさんは、24歳で職場の先輩と結婚後、転勤が多く専業主婦になった。しかし28歳で夫の1度目の不倫が発覚。離婚届を提示するも「もう終わったこと」と言われ、一度は許すことに。しかし以後、不倫の事実と許した事実で苦しんだ。

 当時の状況を、「結婚4年目で仲が良かった。子どもを作りたいと思い、家庭について2人で前向きに考えている時期だったため、私のほうが折れてしまった。どこかで関係が変わってくれるのではと、最後の最後まで思っていた。結婚時に母親が反対していたこともあり、『何としても幸せにならなきゃ』という気持ちから別れられなかった」と語る。

つくしさんが熟年離婚するまで

 不満を募らせる一方、離婚に踏み切れなかったのには理由があった。「50〜60代からの仕事は何があるか。専業主婦になりキャリアがゼロで、パートに踏み出すことも大変だ」。1人で生きていく不安を抱えながら、49歳の時に夫が2度目の不倫をしたことが決定打になった。

 つくしさんは、趣味だったピアノ講師を仕事にして、SNSでみずからの境遇を発信するなど、自分らしく生きようと歩き始めている。

■熟年離婚 増加の背景

 約350件の離婚案件に関わった、ベリーベスト法律事務所の日原聡一郎弁護士は、熟年離婚が増加した背景として、「女性の社会進出も進み夫に依存する必要も薄れた」「財産分与への認識が広がり経済的にも保証」「離婚時の年金分割制度が確立(2007年)」「シングルマザー・ファザーも増え、世間体も気にならなくなってきた」ことを挙げる。「私が扱った事案では、子どもが大人になったことを期に熟年離婚することが多い気がする」。

離婚件数と熟年離婚の割合

 つくしさんは、協議離婚での決定事項として、持ち家は「売れたら売却益を折半。マイナスが出た場合は元夫が全額負担」、元夫の退職金は「確実にもらえるかわからないと分与されず」、貯金は「『ない』と言われ、1年分の所得を証券で受け取る」、年金分割は「4割で合意」となった。

 つくしさんは、「財産を隠されて、『なんて人と私は25年間も一緒にいたのか』と頭にきて、さっさと離婚しようと思った。早く新しい人生を踏み出したくて、調停や裁判で長引かせたくなかった」という。しかし今となっては、「他の財産は別にいいと思うが、年金については、もらう権利があったのに手放したと後悔している」そうだ。

 2007年からの年金分割制度は、離婚した場合、2人の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができるもの。手続きは近くの年金事務所などへの請求書の提出で行い、期限は離婚の翌日から2年間となっている。

 つくしさんのように財産を隠されていたケースには、日原氏は「大前提が違うため、錯誤や取り消しを主張する場合もあるだろうが、経験上はかなり厳しい」との見方を示す。また年金についても、「国民年金はそれぞれで、厚生年金は夫のみ掛金を払っていても、婚姻期間に対応した掛金は半々で納めていたと考えて、年金受給時に計算する」というが、2007年以前については「2人で合意しなければ、基本的には分けられない」と説明した。

■熟年離婚のデメリット 男女で大きな差?

 熟年離婚で感じたデメリットを男女別に見ると、「デメリットはない」は男性27.2%、女性43.2%、「孤独を感じるようになった」男性27.7%、女性5.0%、「金銭面で不安が出てきた」男性3.1%、女性24.4%といった項目で大きな差が出ている。

熟年離婚で感じたデメリット(男女別)

 つくしさんは、「経済的な自立ができず、モラハラに耐えながら離婚しない人が多い。私たち世代は、結婚すると家庭に入ることが一般的だったため、いまなおそうした声は上がっている」と話す。

 また、熟年離婚した経験から、「今となれば楽しいが、しんどい時に動くのはけっこう堪えた。『25年もの長い間、私は何をやっていたのだろう』と。浦島太郎状態で、なぜ動き出さなかったのかという後悔もあった」と振り返る。

 一方で、悩んでいる人へは「息抜きができるならしたらいい。でも、できないから悩んでいるといって、踏み出せとは言わない。子どもがいる人には、無責任なことを言えない。ただ自分の人生は一度きり。好きに自由に生きるすべを身につけるべきだ」とのアドバイスを送った。(『ABEMA Prime』より)

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