社会

ABEMA TIMES

2025年12月22日 07:00

赤坂サウナ火災を受け「あそこは危険だ」SNSで暴露大会 “風評被害”も懸念…同業者は憤り「非常ベルが鳴らないのはあり得ないこと」

赤坂サウナ火災を受け「あそこは危険だ」SNSで暴露大会 “風評被害”も懸念…同業者は憤り「非常ベルが鳴らないのはあり得ないこと」
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 東京・赤坂の高級個室サウナで松田政也さん(36)と妻の陽子さん(37)夫婦が死亡した火災。サウナ業界で働く人々はどう感じているのか。ABEMA的ニュースショーが取材した。

【映像】亡くなった松田政也さん(36)と妻の陽子さん(37)

 夫は妻を庇うかのように、妻に覆い被さった状態で倒れていたという。夫の拳には皮下出血が確認され、内側の扉を叩いたような形跡があった。

 元徳島県警捜査1課警部の秋山博康氏は「現場の状況からしたら、ドアが閉まっていて開かない状態。ドアノブが壊れていて、ドアが開かない。閉じ込められた」と語る。原因のひとつにドアノブの破損が指摘されている。なんらかの理由でドアノブが取れてしまい、中から出られなくなったと見られている。

 常連客は「『これ取れるんじゃないか』と思ったことは実際あった。言い方が悪いけど、ちゃちな作りだったという印象」と語った。

 さらに、非常ボタンには押した形跡があったが、電源が切れていたことも発覚。店のオーナーは「今まで受信盤の電源を入れたことはない。触ったことがない」と話している。

 夫は上半身の後ろ全体を火傷しており、妻は右肩から腕の後ろ側を火傷していた。出火原因は、サウナストーンにタオルが触れたことによると見られている。

「本当に苦しかったと思う。だから奥さんを守ろうとして旦那さんが上に重なって亡くなっていた」(秋山氏)

 現段階では死因は捜査中としているが、専門医は「遺体の状況から、長時間、熱い個室に閉じ込められたことが原因ではないか」と推測する。

 常磐病院の尾崎章彦医師は「90度のサウナに閉じ込められた場合、約20分が危険水域」だと語る。「おそらく高体温症という状態だと思う。体の水分が汗という形で失われていく。(汗をかく)限界を超えてしまうと体の中の温度がどんどん上がって、水分も失われ、血圧も下がる。その結果、意識を失ったり、けいれんや心臓の異常、全身の臓器の異常が起きて命に関わる状況になってしまう」(尾崎医師)

 現場となった「サウナタイガー」は2022年8月にオープン。当初はタレントを監修役として起用するなど話題となった。

 サウナ業界に詳しい『週刊SPA!』元副編集長の田辺健二氏は「コロナ中に非接触でハイクラスなプライベートサウナがブームになったが、サウナタイガーもそのひとつ。会費は39万円、ビジター利用もでき、ラウンジでは食べ放題・飲み放題というオールインクルーシブなのが売りだった」と分析する。

 田辺氏によれば、今回の事故を受け、サウナ愛好家たちの間であるやり取りが行われているという。「ドアノブ式のサウナがある施設を実名で羅列して、『あそこは危険だ』という暴露大会のような書き込みがいくつか散見される」。

 その上で「たとえドアノブ式だとしても、個室サウナじゃなければスタッフの見回りもあるし、今回のような事態を回避できる方法はあるはず。ドアノブという一点だけで危険サウナだと言いふらすのは乱暴。風評被害にもつながりかねない」と指摘した。

 今回の件について、サウナで働く人々はどう思っているのか。3種類のサウナ資格を取得し、熱波師としても活動するグラビアアイドルの天木じゅんは「怒りというか、ただかわいそう。本当に楽しんで、夫婦で仲良くサウナに入って、素敵なご夫婦だと思う。最後の瞬間の会話とかまで想像できちゃって。結構私も日常生活していく上で引っ張るくらいショックな気持ち」と語る。

 現場となったサウナは天木の周りでも有名な存在だった。「サウナタイガーはよく耳にしていた。たまたまタイミングがなくて行っていなかっただけ。『サウナタイガー行こうよ』っていう約束までは至ったことがあった」と明かした。

 約200ものサウナ施設を訪れたことがある彼女だからこそ、今回の事故には驚くことが多かったという。「扉は気づかない。取っ手とかわざわざ見たことない。あの“木の取っ手”は見たことないし、まさか取っ手が取れるなんて誰も思わない。扉が半開きになるサウナがあるので、ガチャっと閉め切る構造」。

 一方で今回の事故による風評被害には、「非常ベルが繋がっていないとかいろいろ重なって(事故が)起きているから、必ずしもドアノブのせいとは思わない。それで他のサウナを叩くのはやっぱり違うと思う。気づいたことがあればすぐ店員さんに言ったほうがいいと思う。ちょっとぐらついている、煙が出ている、変なにおいがするとか……」と述べた。

 同業者も憤っていた。北陸の「サウナの聖地」と名高い富山市にあるスパ・アルプス マネージャーの倉知悟氏は「(扉が)ドアノブ式だった、非常ベルが鳴らなかったという点であり得ないこと。通常ではないことが起きてしまったのかなと思う」と語る。倉知氏は25年で10施設に勤めたことのあるベテランだ。

 四半世紀にわたるサウナ勤務で「ドアノブ式のサウナ室自体を見たことがない」という。「浴室自体が湿度が高いところで、サウナの中になると温度が高温になるので、通常の環境ではない場所に通常のドアノブを設置するのは危険。お客様は塩分と汗を含んだ濡れた手で勢いよく、(扉を)開け閉めするので壊れやすい。特に個室だと誰も見ていないので、多少荒い使い方も想定しておかないといけなかった」と警鐘を鳴らした。

 客は1秒でも長くサウナに入りたいし、出るときは1秒でも早く出たい。そのため、扉は「押すだけで開く」のが常識だという。

 非常ボタンについては、「どこのサウナでも事務所があれば事務所、もしくは必ず人がいるフロントの周辺で警報音が鳴るようになっているので、スイッチをつけたことがないというよりは、消したことがないところが大半。おそらくそんなに頻繁に鳴るものではないと思う。でも必ず鳴ったら本当にダッシュで駆けつける」と語った。

「安全とか安心とかよりも、『おしゃれに』『今風に』『“映える”サウナを個室で作ろう』というふうに、SNSとかも発信できたり、そんなところに向けた方がお客様は来る。(大衆サウナとは)別の業態」(倉知氏)

「絶対にもう一度起きてはいけないこと。確実に防げることだと思うので。みんなが楽しく、より安全になるサウナ界になったらいいなと思う」(天木)

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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