東京・赤坂の個室サウナで夫婦が死亡した事故から、1週間が経ちました。
赤坂での事故を受けて、各地のサウナ施設などで緊急点検が始まっています。
サウナブームの中で、問われる安全性についても見ていきます。
■赤坂サウナ火災 進む捜査 届かなかった夫婦のSOS
12月15日の正午過ぎ、東京・赤坂にある高級個室サウナ店の個室で火災が発生し、30代の夫婦が亡くなりました。
死因は、まだわかっていません。
亡くなった2人についてです。
妻は、右肩から腕にかけてやけどを負っていました。
夫は、腕や腰のほか、背中全体にやけどを負っていました。
妻を守ろうと、覆いかぶさったためだとみられます。
サウナの個室内には、壁に非常ボタンが設置されていて、押すと事務室で電子音が鳴る仕組みでしたが、当時、事務室にある非常ボタンの受信盤の電源が入っていませんでした。
「今まで、電源を入れたことがない」と話しています。
捜査関係者によると、他のすべての部屋で非常ボタンを検証したところ、受信盤の電源が入っていれば、非常ボタンは作動したということです。
■各地でサウナ施設への緊急点検 問われる安全性
今回の事故を受け、サウナ施設への緊急点検が始まっています。
福井市では、12月22日から1月末まで、市内のサウナ店など38施設で緊急点検を実施して、非常ボタンの作動などを確認しています。
福岡市では、12月23日から市内のサウナを設置している136施設を対象に緊急点検を実施して、非常ブザーやドアノブなどを点検します。
「多くの皆さんが、サウナを気持ちよく使えるような環境を作っていくのは当然。安全がまず第一だと思っている」としています。
知事に緊急要望したのが、鳥取県です。
鳥取県議会の『サウナアウトドアツーリズム推進議員連盟』が、県内のサウナ施設の事業者に対して、自主点検の実施や安全管理の徹底などを要請するよう、知事へ要望を提出しました。
■サウナブーム 相次ぐ開業 多様なスタイルが登場 課題も
今、『サウナブーム』です。
サウナ利用者は、約1650万人。
サウナ用語の『ととのう』という言葉が、2021年の新語・流行語大賞にノミネートされたり、サウナ活動の略『サ活』という言葉もあり、サウナを楽しむ人が増えています。
サウナの施設数は、1993年がピークで約3000軒でした。
そこからどんどん減少し、2020年には半減しましたが、また増加して、約30年ぶりの増加傾向です。
今、『第3次サウナブーム』と言われています。
サウナの発祥は、1957年、東京・銀座の『東京温泉』に設置されたものとされています。
第1次ブームは、1964年の東京オリンピックの頃、選手村に設置されて注目を浴び、サウナ施設が増えました。
第2次ブームは、1980年頃、健康ランドやスーパー銭湯の開業が相次いだことによります。
そして今、第3次ブームは、2019年頃から、利用者が中高年(特に男性)が中心だったのが、若者や女性に広がり、サウナの業態も多様化しました。
こうしたサウナブームの中、温浴施設の経営コンサルティングを行う望月義尚さんのもとには、2021年頃から、サウナの新規開業希望者から相談が殺到しています。
個別で対応しきれず、オンライン講座を開講して対応しているということです。
相談の中には、
「無人運営の個室サウナにしたい」
「レンタルルームにサウナを設置したい」
といった、難しい相談もあるということです。
個室サウナの新規開業ですが、サウナ・水風呂・休憩スペースを含めて、最小2坪程度から作れるということです。
開業費用は、建設費用・設備費用(サウナストーブなど)・広告宣伝費などで数千万円からということです。
サウナの新規開業のスケジュールです。
事業化を決定して、建物の設計に2カ月、発注して工事に3カ月、工事が終わると開店準備に1カ月、店舗開発に慣れている場合、最短半年で開業できます。
「通常の温浴施設は、億単位のお金が必要だが、小規模サウナなどは、個人で手が出せる金額で開業可能。マイホームを建てる代わりに挑戦する人、脱サラした人、医師など、個人レベルであらゆる人がやってみたいと話を聞きに来ている」
第3次ブームでは、サウナの多様化も特徴の一つです。
コロナ禍以降、集団感染防止のため、3密(密閉・密集・密接)を避けるよう呼びかけられました。
その影響で、サウナ施設の利用制限や利用停止が増えましたが、これが新たな業態が誕生するきっかけになりました。
その結果、
●一人用貸し切りサウナ
●水着着用の混浴型サウナ
●古民家サウナ、ラグジュアリーサウナなどのコンセプト特化型サウナ
●キャンプ場などと一体化したアウトドアサウナ
などが登場しました。
そして、熱源(サウナストーブ)も多様化しています。
まきストーブ、ペレット、アルコールなどです。
ただ、現在のサウナ設置基準は、従来の電気式・ガス式のサウナストーブしか想定されていません。
「サウナの多様化に、ルールや規制が追い付いていない部分がある。新しいチャレンジは、進化のためにも必要である一方、市場に出すためには、慎重な安全確認が必要」
■夫婦死亡の個室サウナ 管理会社の責任は?3つの焦点
赤坂のサウナ事故の責任についてです。
警視庁は現在、業務上過失致死も視野に捜査を進めています。
業務上過失致死は、業務上必要な注意を怠り人を死傷させた場合、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金となります。
「捜査機関は、事故原因と結果の因果関係を具体的に特定立証しなければならず、ハードルが相応に高い」
その高いハードルです。
まず、責任主体、誰が管理責任者なのか、誰が運営していたのか、どのようなマニュアルが作成されていたのかなど、事故の責任の主体を捜査機関が立証しなくてはいけません。
さらに、事故の因果関係です。
事故を予見できたか、どうすれば回避できたか、被害者がサウナ室に入ってからの行動、被害者の死因などの事故の因果関係を立証しなければいけません。
その上で、今回の事故について、業務上過失致死を問えるのでしょうか。
ポイントの1つ目は、ドアノブです。
木製のドアノブが外れて、サウナ室の内側と外側に落下していました。
「取れるんじゃないかと思った時はあった。ちゃちな作りという印象」と話しています。
「緊急時を想定すると、操作しないと開かないものは安全上問題がある」と指摘しています。
ポイントの2つ目は、非常ボタンです。
非常ボタンは事故当時作動しない状況でしたが、店舗がある港区の場合、非常ボタンの設置義務はありません。
非常ボタンについて、事故が起きた店とは別のサウナ店では、正常に作動するか定期点検を行い、メンテナンスも随時実施しているということです。
「なぜ電源を入れたことがないのか理解ができない。点検をしていないのか」と話しています。
ポイントの3つ目は、巡回です。
事故発生時、店舗にはオーナーを含め3人の従業員がいましたが、3人とも別の業務に従事していました。
「従業員が近くにいる感じはなく、必要な時にLINEで呼ぶ形。プライバシーを重視しているという印象だった」と話しています。
「業界関係者の声などから、事故の予見や回避は可能だったのではないか。不明確な点はあるが、業務上過失致死を問える可能性は高いと思われる」
■そのサウナは安全?見分けるチェックポイント
東京・赤坂で起きたサウナ事故をうけて、安全なサウナを見分けるポイントです。
●ストーブと壁との距離が離れているか?
●ストーブガードが不燃対策されているか?
●ストーブ周辺の木材が焦げていないか?
●ストーブ周辺に燃えやすいものはないか?
●ドアは外開きか?
●ドアが押すだけで開く仕組みになっているか?
●非常用ボタンが設置されているか?
その他、おかしいと思ったら、店の人に聞くことも大事です。
「人は想定していない事態が起きたとき、適切に行動できない。サウナは、癒しの場所と同時に危険と隣り合わせの場所。法令を満たしている施設だから安心と過信せずに、管理者も利用者も、常に確認をするべき」
(「羽鳥慎一モーニングショー」2025年12月23日放送分より)
















