社会

ABEMA TIMES

2025年12月26日 11:45

戸塚ヨットスクール・戸塚宏校長「あまり叱られなかった。それを今非常に悔やんどる」 “偏差値秀才”への問題提起

戸塚ヨットスクール・戸塚宏校長「あまり叱られなかった。それを今非常に悔やんどる」 “偏差値秀才”への問題提起
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 文部科学省は12月22日、公立の学校で休職した教員の人数や懲戒処分の調査結果を公表した。それによると、7000人を超える教員が精神疾患を理由に休職していたことが明らかになり、最も多い要因は「児童・生徒に対する指導」だった。

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 最近でも、大阪・堺市では、生徒たちが無断で校外に出たことを注意した担任教師に、保護者が「指導は不適切だった」として学校に懲戒処分や担任から外すことを求めた。熊本市の小学校では、ハサミを両手に持って人に向けていた児童の頬を平手で1回叩いた教師の行為を、市教委が「体罰」と認定した事例も。

 こうした指導について、ネットでは「体罰は暴力なんだから、どんな理由があってもダメ」「厳しい指導が出来ない中で問題を起こす子どもをどう指導していいか、教師が悩むのも分かる」という意見もある。

 そんな中、体罰は「相手を進歩させる行為」と必要性を強く主張する、戸塚ヨットスクール校長の戸塚宏氏が、「あまり叱られなかった」という自身の経験を元に持論を語った。

■「あまり叱られなかった。それを今非常に悔やんどる」

 1976年に開校した戸塚ヨットスクールは、スパルタ指導によって非行や不登校の子どもたちを更生させていると話題に。しかし、訓練生が死亡する事件も発生した。現在、スクールでは体罰を封印している一方、子どものしつけに「体罰は必要」という考えにブレはないという。

戸塚氏とヨット

 教育に対する戸塚氏のスタンスは、「受ける側のためにするのが体罰(善)、する側のためにするのは虐待(悪)」「体罰のやり方の中に“悪”があるだけ」というもの。また、「“叱るより褒めろ”が教育をダメにした」「叱られないと罪の意識が育たない」と、リベラル教育に反対している。

 戸塚氏は、「科学の定義は再現性。その法則に従えば期待した成果が出せるから、教育を科学でやれば教育問題なんか起こらんわけだ。今の教育は科学じゃなくて、精神論から作るリベラル。その結果が今の日本だ」と指摘。

 また、知ることと実行することは表裏一体だという「知行合一」の重要性を強調する。その一方で、教育を語る権威たちの多くは、現場での実体験を伴わない“知識の盗人”であり、戸塚氏が言うところの“偏差値秀才”だとした。

 そんな戸塚氏も、かつては自分を“偏差値秀才”だと認識していたという。あまり叱られたことがない子どもだったそうで、「それが、俺が今非常に悔やんどること。偏差値秀才の気持ちはようわかる。“俺が世界一や”という思いは、小学校から高校時代まで続いた」と振り返る。

 しかし、大学でヨット部に入ったことで価値観が変化した。「ヨットは大学に入るまで誰もやってこない。ヨーイドンでみんなやるわけだが、他のやつはどんどん伸びていく。そこで、“俺はダメなんや”“今まで偉そうに威張っとったのは間違いやったんや”と、己を知る。だからヨットをずっと続けている」。下に見ていた人の上達が早く、ヨットを通して反省と協調ができるようになったということだ。

■戸塚氏「子どもを叱って恥をかかせるのは悪いことか?」

 戸塚氏は、子どもを学校に行かせる理由は「一人前の人間にするため」だとし、「一人前になるためには進歩せないかん。それは人間の宿命。我々が進歩させるんじゃなしに、どう進歩するかという能力を身につけさせるだけ」と言い切る。

学校での暴力行為発生件数

 また、「三つ子の魂百まで」ということわざを引用し、「3歳までに基本的なことは全部つけさせないといかん。ところが今、保育園でも幼稚園でもただ甘やかすだけで、子どもを将来ダメにしてしまう」「例えば“叱るより褒めろ”と、あんな馬鹿なことを真面目にやった。叱られなかった子どもがどうなるかというと、罪の意識ができない」と持論を展開した。

 教育の概念としては、「知育」「体育」「徳育」を紹介。「知育の目的は論理的思考能力、正しく考える力をつけること。それを日本はやってないから偏差値秀才ができる。徳育は人間性を高めることだが、子どもの人格はまだきちんとできていない。そこから進歩して人間性を高めるわけで、人格否定も人間性を高める1つの方法だ」。

 その上で、「子どもを叱って恥をかかせるのは悪いことか?」と投げかける。「風も海も波も気温も、自然が善。人間の中の自然、特に精神的なものは本能で、これが善だ。悪は理性の中にしかない。恥も本能としてあるもので、『恥じありて且つ格(ただ)し』、恥が人間を進歩させると論語にも書いてある。恥をかく能力を高めるのが、そいつを進歩させること。恥をかかせるのは悪だという風潮はとんでもないことだ」とした。

■体罰なしに教育できる教員は「名人芸。普通の人はできない」

 アメリカでは、全米18の州で公立学校の“体罰”が合法とされている。テキサス州では、公立高校での体罰を容認し、子どもに対して体罰を受けさせたくない場合は保護者が学年度ごとに書面を学校側に提出する。フロリダ州では19の公立学校が体罰を認め、学校で体罰を行う場合は事前に書面などで保護者の同意を得ることが義務付けられている(Newsweek、8月22日)。

日本の国際競争力

 戸塚氏は「学校で体罰のあるクラスとないクラスどっちに入ってもいいとしたら、親はどちらに入れると思う?」と投げかけた上で、「必ず体罰があるほうを選ぶ。親が本当に自分の子どもを伸ばそうとするか、教育の成果を上げさせようと考えているかどうかによる」と自身の考えを語る。

 体罰なしに教育できる教員がいることは否定しないそうだが、「我々の頃の高校の先生にそういう人が1人いた。全く叱らないが、見事に引きつけて、みんなを伸ばした。これは名人芸で、普通の人にはできない。だけれども、教育というのは、普通の人間が、普通の人間を、普通の人間にしようということ。ともかく一人前にすりゃええんだ」とした。(『ABEMA Prime』より)

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