社会

ABEMA TIMES

2025年12月28日 17:00

「こども性暴力防止法」“不適切な行為”の事例に弁護士「ハラスメントと教育上のベターなやり方の線引きは非常に難しい」

「こども性暴力防止法」“不適切な行為”の事例に弁護士「ハラスメントと教育上のベターなやり方の線引きは非常に難しい」
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 22日開かれたのは、来年の12月25日から施行が予定されている「こども性暴力防止法」、子どもに関わる仕事に就く人に対して性犯罪歴の有無を確認する制度、いわゆる「日本版DBS」などを含めた法律運用にむけた検討会だ。

【映像】児童との身体接触による不適切行為(詳細)

 検討会では、どう運用していくのか、その方針を示したガイドライン案が示された。犯罪歴確認の義務を負うのは、学校や幼稚園など常に子どもと接する事業者。学習塾や放課後児童クラブなどは、国の認定を受けた上で義務を負う。

 さらに、今回のガイドライン案では「子どもと2人きりで会う」「連絡先を交換し私的にやりとりする」「私物のスマートフォンで撮影する」「業務上必要ないのに子どもを膝に乗せる」など、性暴力につながりうる「不適切な行為」を明文化し、初犯防止対策も整備した。 

 『ABEMA Prime』では、不適切な行為の事例を挙げつつ、その線引きや難しさについて、策定に携わった委員らと共に議論した。

■子どもを守り、教育・保育の現場を守るためのガイドライン

丸山純氏

 子ども性暴力防止法の運用ガイドラインでは、335ページに及ぶ「不適切な行為」の具体例が詳細に記されている。作成に携わった全国私立保育連盟常務理事の丸山純氏は「子どもたちの権利や人権を尊重することが大きなスタートだ」と述べた。その一方で、「現在、保育や教育の現場で働いている方々が困らないように、またその方々も守られるようにということも大きな柱だ」と説明した。

 具体例として挙げられている「不必要に児童等と2人きりで私的に会う」「不必要に児童等を1人で車に乗せて送迎を行う」といった項目について、弁護士の鈴木愛子氏は、事実認定の難しさを懸念している。「近所に住んでいる子どもとばったり会うこともある。いい先生と慕われて関わっていたのが、『あの先生は2人で会っていた』と言われたらどうなるのか。それが偶然であり私的でなかったことを、どうやって証明するのか」。

■現場の負担と「不適切」の線引き

不適切行為

 現場での具体的な対応について、丸山氏は「例えば保育園のバスで最後に1人の子どもを送る場合でも、通常は運転手と付き添いの保育者の最低2名がつくため、1人になるシチュエーションはあまりない」。しかし、緊急時の怪我などで、やむを得ず1人で対応せざるを得ない場面も想定されるため、ガイドラインには「不必要に」という言葉が含まれている。

 また、身体接触やコミュニケーションのあり方も議論の対象となっている。業務上不必要なマッサージや、子どもを膝に乗せる行為も不適切とされる可能性がある。これに対し、丸山氏は「読み聞かせの際に子どもが膝に乗ってくることもあるが、集団に背を向けて乗せるのか、集団の方を向いて乗せるのかでも受ける印象は違う。詳細はガイドラインに記載されている」と説明した。

 これに対し、保護者からの過度なクレームを懸念する声もある。鈴木氏は「ハラスメントと教育上のベターなやり方の線引きは非常に難しい。悪質なハラスメントであれば先生を外さなければならない。制度設計の中で、適切な対話ができるか心配だ」と述べた。

■運用と今後の課題

被害者にならないための教育

 日本版DBSの運用は2026年12月から段階的に開始され、全国で機能するまでには、今から4年かかる見通しだ。参照されるのは特定の性犯罪歴であり、下着の窃盗や体液をかける行為などは、現時点では窃盗罪や器物損壊罪に分類されるため、データベースには登録されない。丸山氏は「まずは法の成立と子どもたちの安全確保を急いだ。4年後の見直し時に議論される可能性がある」と述べた。

 一方で、鈴木氏は「不起訴処分や示談で終わったケースは登録されないため、データベースで防げるのはごく一部だ」と指摘する。その上で、「子どもに対する性教育、いわゆる命の安全教育が最も大切だ。子どもが被害を被害だと認識し、相談しても大丈夫だと思える環境を作ることが、再犯防止よりも効果がある」と主張した。

 最後に丸山氏は「この法律の第1は子どもの安全、第2は適切に仕事をしている保育者や教育者を守るためだ。現実的な難しさは運用を開始しながら1つずつクリアしていきたい」と述べた。

(『ABEMA Prime』より)

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