社会

ABEMA TIMES

2025年12月30日 09:00

台湾でデマ拡散し話題 HIV・エイズと人類、最新の関係は 専門家「早く見つけて治療すれば発症しない。現代では死なない病気になった」

台湾でデマ拡散し話題 HIV・エイズと人類、最新の関係は 専門家「早く見つけて治療すれば発症しない。現代では死なない病気になった」
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 台湾で発生した無差別襲撃事件で、負傷者の1人がHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の陽性であることが確認されたと、台湾の保健当局が発表した。当局は、現場でケガをした人や、血液が傷口や目など粘膜に触れた人に対し、72時間以内に医療機関で検査を受けるよう呼びかけた。

【映像】HIV・エイズ感染者、新規件数の推移(グラフ)

 HIVは主に性的接触や血液を介して感染するが、ネット上ではいまなお間違った知識やデマを投稿する人が絶えない。今はHIVに感染しても、投薬などでウイルスの増殖を抑え、免疫力の低下を防ぎ、日常生活を送ることができる。またウイルスが一定以下に押さえられると、性行為でも感染しないことがわかっている。

 感染者もピーク時より減っているHIVだが、人類にとってどのような病気なのか。エイズ(AIDS)とは何が異なるのか。『ABEMA Prime』では、専門家とともに考えた。

■今、世界でHIVはどうなっているのか

HIV感染・エイズ患者数

 2024年のHIV感染・エイズ患者をめぐる状況(エイズ動向委員会「令和6(2024)年エイズ発生動向年表」)は、新規報告数が(HIV感染・エイズ患者)994人で、内訳は男性937人(94%)、女性57人(6%)だった。感染経路は、異性間の性的接触160(16.1%)、同性間の性的接触587(59.1%)、静注薬物使用1(0.1%)、母子感染0(0.0%)、その他84(8.5%)、不明162(16.3%)となっている。

 感染症医療を専門とする国際医療福祉大学の田沼順子教授は、台湾の事件について「現場にいた全員に検査が必要なわけではなく、『不安ならいつでも相談できる』という発信だった。台湾当局は、過度に不安をあおりたくないため、『感染リスクは高くても10万分の1程度』と言っている。それを0にする予防薬を届けたいとする発信だ」と説明する。

 背景として「そもそもHIVは日常生活で感染しない。コンドームなしの性交渉や母子感染、注射針の打ち回しといった特定の状況で感染する。今回は刃物による負傷者が多く、大量の血液を受けた人がいるかもしれないとして、台湾当局は対応を決めた」という。

 そもそも、HIVとエイズはどう違うのか。「HIVは病原体の名前だ。感染してしばらくたつと、免疫がおかされて、通常では起きない日和見感染症が起きる。これがエイズだ」。日和見感染症の例としては、「重症なタイプの結核や、免疫が落ちた時に発症するニューモシスチス肺炎」を挙げる。

 HIV感染者の推移は「2013年をピークに減っていたが、そこにコロナ禍が襲った。通常は保健所で匿名の無料検査を受けられるが、コロナ対策に割かれ、検査の普及が滞った。検査件数は戻りつつあるが、コロナ前の4分の3程度と言われる。おそらくその影響もあり、過去2年間、感染者数は増え続けている」という。

 最近では体調不良で検査したところ、“いきなりエイズ”だとわかるケースも、33.4%と増加している。「3割はとても高い。リスクがあると思った人が、気軽に検査を受けられる状況づくりが大事だ。病院でも『性行為で感染した』とは言いにくい。保健所はトレーニングを受けた人がいるが、性感染症や性行為をタブー視や偏見で見なくする努力が必要だ」。

 検査を受けていないが感染している可能性が高い人は、どの程度いるのだろうか。「エイズ対策の重要な指標で、日本でも推計を試みている。10年前の推計では、全感染者の9割弱しか診断できていない状況だった。正確な数字は後になるが、今はそれより進んでいるだろう」。

 約20年前にHIVに感染した福正大輔さん(43)は、「性行為をした男性がHIVと診断された。相手は僕としか性行為をしてこなかったため、『あなたもたぶんHIVだから』と病院へ行き、2回の検査で感染が確定した」と振り返る。

 24歳で感染がわかり、「薬を毎日1錠服用している。それにより免疫が年々高まり、エイズを発症することなく健康に生きている」と語る。「1カ月で25万〜30万円程度の薬と言われるが、国の助成により2500〜3万円の自己負担で服用できている。特に大きな体調不良を感じたことはないが、発熱や下痢はしやすかった」。

■男性の感染者が大半 早期発見・治療でコントロール可能に

HIVウイルスに関する誤情報

 感染を知った当時は「絶対にHIVのことを知られてはならないと思っていた」そうだ。「ゲイのコミュニティー内でも『HIVになったら終わり』『あいつはHIVらしい』といったウワサが広まり、差別を受けることがあった。いまは知識が広まってきたため、カミングアウトしても大きな影響はないと感じている」。

 時代の流れもあり、約5年前に「そろそろ公表して生活したい」と、まず歯科医院を訪れたところ「HIVを持っているため治療できないと拒否された」と明かす。「『お医者さんなのにHIVのこと知らないんだ』とショックを受け、もっと周囲や医療職に知ってもらいたいと、名前と顔を公表して活動するようになった」。

 歯科に伝えた理由としては、「1つは適切な医療を受けたかったから。もし治療上の配慮や、気をつけた方が良いことがあれば、教えてもらいながら治療を受けたい。もう1つは、僕より先に顔や名前を出して活動していた人たちに勇気をもらったから。もっとオープンに生きたいと思った時に、歯医者さんならわかってもらえるのではと希望を持っていたが、拒否されて残念だった」と話す。

 南和行弁護士は、「HIVの感染経路は自己申告のため、実際は『同性間の性的接触』はもっと多いのではないか。やはり自分からは言いづらく、『異性間の性的接触』と答える人もきっといる」と推測する。「日本社会では『HIVはゲイや、男性同士で性的関係を持つ人たちの病気だ』との誤解が広がりやすい。ただ、ほとんどが男性同士の性的接触の中で回っていることには、向き合わないといけない」。

 なぜ同性間の成功による感染が多いのだろう。福正さんは「自分の経験から言うと、男性同士だと、体を傷つけ合う、体温を交換するようなリスクの高い性行為をしてしまうのではないか。例えば、性器がぬれるなど、何も使わなくてもスムーズに挿入できる機能が男性同士にはない」と考える。

 田沼氏が、HIVのいまを語る。「早く見つけて、早く治療して、薬を飲み続けていれば、エイズにはならない。もう死なない病気になった。これだけは伝えていきたい」。 (『ABEMA Prime』より)

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