社会

ABEMA TIMES

2025年12月30日 16:15

ウルフアロン、金メダルまでの過酷な道のり 半年間の不眠に情報戦も 頂点へと導いた“弱さを力に変える”徹底的な準備とメンタリティ

ウルフアロン、金メダルまでの過酷な道のり 半年間の不眠に情報戦も 頂点へと導いた“弱さを力に変える”徹底的な準備とメンタリティ
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 2026年、ミラノ・コルティナ冬季五輪やWBC、サッカーW杯と国際スポーツイベントが目白押しとなる 。世界を相手に勝ち抜くために何が必要か。「ABEMA Prime」に出演した柔道男子100キロ級金メダリストのウルフアロン氏は、勝負の世界における徹底したリアリズムについて言及 。独自の勝負哲学、さらに東京五輪で金メダルを獲得するまでの道のりで、大きなプレッシャーを抱えていたこと、それをどう乗り越えたかを語った。

【映像】プロレスラーとしてド迫力の動きを見せるウルフアロン

■反則すら戦略に 勝つことが第一のプロの流儀

 ウルフ氏は、スポーツにおける「ずる賢さ」を「戦略の一部」として肯定する 。柔道には「指導」という反則があるが、彼は勝利を確実にするためにこれを意図的に活用してきたという。「試合、ラスト30秒で、こちらが『技あり』のポイントでリードしてる場面で、相手の技で投げられそうになった時、わざと『足持ち』の指導もらうことがある。そこで投げられたら負けなので」。

 こうした姿勢に「卑怯だ」という声はないのか。ウルフ氏は「ルールを最大限に使って勝つのがスポーツ」と断言する。柔道には「道を求める」という武道的側面もあるが、オリンピック種目である以上、競技としての側面が強くなっていると分析する。

 「トップを目指してやるところからして、もう武道的な側面からちょっと外れている。一番を目指すというのも、武道はもともとそういうものではない。オリンピック競技である時点で、もう武道的側面ではないところで争っている」。

 第一線で戦う以上、勝つことが第一であり、「フェアプレーでやらなければ勝てたのに、それをやらずに負けるのが一番ダサい」というのが彼の持論だ。

■ウソの情報も流す 徹底した「情報戦」の裏側

ウルフアロン

 ウルフ氏が強調するのは、心・技・体に加えた「情報戦」の重要性だ。対戦相手を翻弄するため、自ら偽の情報を流すことすらあったという。「ウソの情報も流せる。僕はケガをしていないところを『ケガしている』と話したりして、ちょっと相手を油断させるようなことをした」と明かす。

 具体的には、友人との会話の中で「あいつ、アキレス腱痛めてるらしいよ」といったウワサをあえて流し、それが回り回って対戦相手に届くことを狙ったり、特定の相手を「めちゃくちゃ苦手」と公言したりすることで、相手の耳に入る情報をコントロールしていた 。

 「めちゃくちゃ苦手だって色々なところで言って、最終的にその相手選手の耳に『ウルフが苦手意識を持っている』と入ればいいなと思っていた。情報を出しておきながら、でも裏ではめちゃくちゃ対策した。もう対戦したら絶対勝てるだけの対策をしていたので大丈夫だった」。

■半年間寝付けない苦しみ 不安を消し去るための「準備」

 こうした「したたかさ」を持つウルフ氏だが、東京五輪本番までの道のりは平坦ではなかった。自国開催のプレッシャーは凄まじく、「半年ぐらい、もう夜寝付けなくて。ずっと考えて意識していた」と精神的に追い詰められていたことを明かしている。

 しかし、その不安こそが練習に駆り立てた。「自信があったから練習を頑張ったのではなくて、不安の方が強い」と語るウルフ氏にとって、練習は不安を消し去るための作業だった。

 「道のりを明確にして、この練習だったらこの技術身につくとか、この相手だったらこういう試合をすれば勝てるとか、全部組み立てて不安を消した状態で試合に行った」と徹底的に準備した。

 「こうやれば勝てたのに、やらなかった自分に気づいた時の方が、心がねじ曲がる」。その言葉通り、あらゆる手段と情報を使い切り、ほんの少しの後悔もない準備を整えること。それこそが、ウルフ氏が金メダルを手にするために辿り着いた勝者のメンタリティだった。 (『ABEMA Prime』より)

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