25日、日本版DBSの「認証マーク」のデザインが発表された。学習塾は対象となるのか? 犯歴に“時効”はあるのか? 日本版DBSの様々なポイントについてテレビ朝日社会部の秋本大輔記者に聞いた。
━━そもそもDBSとは?
「DBSは元々イギリスの制度で、子どもを性犯罪から守るために子どもと関わる仕事をする人の性犯罪歴を確認する仕組みだ。子ども性暴力防止法に基づいて事業者の方に子どもの性暴力を防ぐための措置を義務付けている。実際に子どもと関わる仕事をする人・希望する人に性犯罪歴が確認されれば、子どもと接しない仕事への配置替えや内定取り消しといった措置も必要になる。ある意味国として労働者の犯歴を確認して、さらに就労制限をするという、今まで日本になかった全く新しい、ある意味踏み込んだ制度だ。すでに法律自体は去年制定されていたが、具体的にどこまでが対象になるのかなど曖昧な部分もあり、議論が進められ、つい先日、ルールを決めたガイドラインがまとまった」
━━性犯罪歴がある人は子どもに関わる仕事に就けないということか?
「この法律自体は事業者に義務づけているので、『就けなくする法律』とは微妙に異なる。性犯罪歴がある人がいた場合に、事業者の側が対策しなければならない。今後制度が本格的に始まった未来を想定すると、例えば採用の時に誓約書で『私には性犯罪歴はありません』と証明させて、その上で、後から判明した場合は内定取り消しを行うこととなる」
━━制度が導入された背景は?
「2020年にベビーシッターの仲介サイトを悪用して、派遣された男が性暴力を繰り返すという事件があった。それを契機にこのような仕組み・制度が必要ではないかという導入の議論が本格的に始まり、2024年に子ども性暴力防止法が全会一致で成立した。その後、この制度の詳細が時間をかけて議論されてきた。なお、守られる子どもの対象は、基本的には18歳までだ」
制度の対象となる職業は?

━━制度の対象となる職業は?
「学校の教員や保育士は一律で対象になる。その他、保育園の送迎バスの運転手や直接子どもと関わらない学校の事務職員などは子どもの関わりの度合いによって、現場ごとの判断となる。ただし、学習塾やスポーツクラブなどの民間教育事業は少し複雑だ。施設の側がこども家庭庁に申請し、認定を受けた場合、犯罪歴の確認が義務になるのだ。事業者の側は国から認定を受けたらマークをつけられるようになる。このマークを持つことで『ここは子どもの暴力を防ぐための対策をしています』という証になるので、政府には広げていきたい狙いがある」
━━だが、例えば学習塾の中でも子どもと直接接点がない作業もある。どこまで対象になるのか、事業者が判断するのは難しいのではないか?
「その通りだ。だが、300ページほどのガイドラインが今回まとまり、かなり細かく『こういう場合はこうだ』と書かれている。また、対象はかなり広くなる可能性がある。例えば、所属する子どもに対面でダンスを教える芸能事務所や学習支援を行う子ども食堂なども対象になる可能性がある。そういうところもルールは決まっており、ガイドラインにまとめられている」
犯罪にはある意味“時効”のようなものもある

━━犯歴確認の対象は?
「不同意わいせつや不同意性交といった刑法犯に加えて痴漢とか盗撮といった条例違反も対象になる。確認の対象になる犯罪にはある意味“時効”のようなものもあり、例えば、有罪となって拘禁刑が執行された場合、刑が終わってから20年までのものを対象にしている。執行猶予判決や罰金刑の場合は課されてから10年が経過しないものが確認の対象になる」
犯罪事実の確認の流れ

━━犯罪事実の確認の流れは?
「まず事業者の方がこども家庭庁に申請するのだが、犯歴の情報は法務省にある。そのため、こども家庭庁が法務省に照会して、回答をもらい、またこども家庭庁から事業者に伝えるという流れになる。犯歴がない人であれば、日本国籍を持っている場合、約2週間で『犯歴なし』という結果が返ってくる。犯歴があると申請後、こども家庭庁からまず本人にだけ通知が届く。そして2週間、『本当に犯歴ありで間違いないですか?』と確認する期間がおかれる。その間、例えば本人が内定者の場合、『私は内定を辞退します』と言えば犯歴の情報は事業者には伝えられることはない」
制度は「初犯を防ぐ」ことにも貢献するか?

━━この制度は「初犯を防ぐ」ことにも貢献するか?
「新しく『不適切な行為』という概念を設定し、その対策を事業者に求めているのだが、ある意味踏み込んだ内容になっている。不適切な行為とは例えば『児童とSNSで私的なやり取りをする』『休日や放課後に児童と2人きりで会う』など、こういう行為が積み重なっていくと児童への性暴力等につながり得るとして対策を求めるのだ。ただ、どこまでが不適切なのかは事業者ごとに変わってくる部分もあるため、事業者ごとに『どこまでが不適切か』という共通認識を作ることもある意味義務となる。ただし難しい面もある。例えば子どもを膝に乗せるという行為は高校生であればアウトだが、保育園や幼稚園の場合は必要な場面もあるという。そういうことも踏まえて、事業者ごとに決めていくという制度の立て付けになっている」
━━今後の課題は?
「1つはこの制度自体の実効性を確保できるかどうかだ。民間は義務ではなく任意であるため、どれだけ広がっていくかが課題になるだろう。『認定マークが付いているから安全だね』という世論ができていくかが重要だ。2つ目は現場が萎縮する可能性だ。検討会の中でも最後まで『現場が萎縮しないような制度にしてほしい』という意見が出ていた。ガイドラインではかなり具体的に明示されているとはいえ、あれもダメ、これもダメとなると何もできなくなってしまう恐れもある。過度に委縮しないようにどのように事業者側でルールを作れるかが重要になる」
(ABEMA/ニュース企画)
