アイドルの告白が大きな反響を呼んでいる。8人組アイドルグループ「Pinky Spice」のメンバー・星名ひまりさん(21)が、自身が中学生の頃から心臓のペースメーカを使用していることを公表した。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した星名さんは、見た目には分からない「内部障害」を抱えながら生きる当事者の葛藤と、デバイスと共に歩む未来を語った。
【映像】ペースメーカを埋め込んだ星名ひまりさん(14歳当時)
■14歳で下された決断:胸に埋め込まれた「心臓を動かす機械」

星名さんの病が発覚したのは、小学校1年生の時の検診だった。不整脈と診断され、通院を続けていたが、次第に体育の授業などが苦しくなり、症状が悪化。将来的にペースメーカを入れることになると医師から告げられていた。
その後、心臓の電気信号が心室に伝わらなくなる「完全房室ブロック」と診断され、中学2年生で埋め込み手術を行うこととなった。そもそもペースメーカとはどのような役割を果たすものなのか。東京慈恵会医科大学の山根禎一教授は、次のように解説している。
「ペースメーカは、脈が遅くなってしまう病気の方に対して、心臓に電気刺激を加えることで、正常な脈が保てるようにするために植え込む機械。心臓の中は常に電気が流れている。適切な電気が流れるために心臓の上に発電所があるが、そこから出た電気が電線のようなものを通って心臓全体に流れる。これが正常な状態だ。この発電所からの電気自体が少なくなってしまう方、流れていく途中の電線が弱くなったり切れてしまう、この2つのタイプがある。心臓が適切な数を保てなくなってしまうと、息苦しくなったり、場合によっては失神してしまう。そういう症状を持っている方に機械を植え込んで、足りない脈を補うものだ」。
14歳という多感な時期に、自身の体内にこの機械を埋め込んだ星名さんは、当時の心覚を「手術が終わった後に、自分の心臓を触ってみて『本当に入っているんだ』って。これからこのペースメーカと一緒に過ごしていくんだなと感じた記憶がある」と振り返る。
■21歳の公表:隠すのではなく「伝える」ことを選んだ理由

長年、自身の病について積極的に発信してこなかった星名さんが、なぜ今、公表に踏み切ったのか。そのきっかけは、ペースメーカの「電池交換手術」に伴う活動休止だった。自身のSNSで、「中学生の頃からひまりの心臓をずっと動かしてくれてるペースメーカの電池交換手術のため、その間だけお休みします!」と報告した。
公表の理由について、「1週間ほど長い入院期間があるので、しっかりとした理由を伝えるべきだなっていう気持ちだけだった。エックスに公表して、まさかこんなに拡散されて大事になるとは思わなかったっていうのが正直なところ」と語る。
山根氏によれば、バッテリー寿命は7年から10年程度であり、残量が少なくなれば本体を取り替える手術が必要になる。星名さんは定期検診だけでなく、自宅に設置した遠隔管理用の機械を介して病院と情報を同期させており、残量の把握や管理を行っている。
交換時期が近づいた際の感覚について、星名さんは「私の場合は、交換手術をする1個前の検診の時に残量が少なくなってきてしまい、不安がすごくあった。少しだが運動をした時に息苦しさを感じる部分もあった。残量が少なくなってきたのを自分でも感じれるのかなと思う」と述べた。
■アイドル活動の舞台裏 左腕に課せられた「制限」

華やかなステージに立つ星名さんだが、その裏では装着者特有の細かな制約と向き合い続けている。特に大きな制約となるのが、リード(電線)への配慮を伴う「腕の動き」だ。「左腕を肩から軸に回すと、電線リードの部分が引っ張られてしまったり、圧がかかってしまう。腕を上げる時も上げすぎないようにしたり、肩を軸に回す振り付けも変えてもらう」といった苦労がある。
日常生活における電子機器との距離についても気を配る。「電子機器を胸元に近づけない方が良くて、スマホも寝る時は絶対左側に置かない。空港のゲートでは、ペースメーカで通ると良くないので、毎回ボディチェックに変えてもらったりしている」。また、アイドルとして歌う時も「マイクを左側にあまり近づけないように持つ」工夫までしている。
このスマートフォンの影響について、山根氏は「基本的には今の携帯電話、スマホなら使えるし、大きな障害にはならない。ただ、通常15センチぐらいは離してくださいとなる。あまり神経質になりすぎなくてもいいが、逆側(右側)で使えば大丈夫」と説明した。
番組では、星名さんのような若年層の患者が直面する社会的理解についても議論が及んだ。一見して健常者と変わらぬ生活に見えるからこそ、周囲の理解を得ることが難しく感じる場面も多い。「『見た目は元気なのに』と言われるとしんどさを否定された気持ちになる。結局、黙るか我慢するかの2択になりがち」といった率直な思いもある。
周囲から気づかれない内部障害について、星名さんはコンディションに応じて意思表示をしている。「優先席は他の方に譲ったりするが、どうしても体力的にきつくなってしまった時は、ヘルプマークやペースメーカ手帳も持参している。自分は内部障害があるんだよという意思表示ができるものは持っている」。
■「夢を叶えてくれる存在」デバイスへのポジティブな思い

ペースメーカは一般的に「制限を強いるもの」と捉えられがちだが、星名さんはそれとは異なる考えを示している。彼女にとってペースメーカは、かつては禁止されていた「持久走」や「120分のワンマンライブ」を可能にしてくれたパートナーでもある。
「私の場合はファンの方にしっかりとした理由を伝えるために公表した形だが、ペースメーカを入れていることを公表したくない方もいると思う。ペースメーカがあることがマイナスな面で見えてしまうけど、自分にとってはポジティブなことだなと思っている。自分もそのおかげで夢を叶えられている。そういう当事者の方も(声を)言っていってもいいのかなと思う。当事者のみなさんにも、自分の夢を諦めずにチャレンジしていてほしい。自分はペースメーカを入れてアイドルをしている人がいるんだよと、公表していきたい」。 (『ABEMA Prime』より)