社会

ABEMA TIMES

2026年1月17日 14:00

“お気持ち”が科学を止める?動物愛護で世界「最低ランク」の日本 動物福祉専門家「50年遅れている」、科学者「動物実験は不可欠」その是非は

“お気持ち”が科学を止める?動物愛護で世界「最低ランク」の日本 動物福祉専門家「50年遅れている」、科学者「動物実験は不可欠」その是非は
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 鹿児島大学が発表した不適切な動物実験。同大学では、牛の肺炎治療法を確立するための実験において、計画書では「回復した牛」を使用するとしていたが、実際には「肺炎にかかった状態の牛」を使用していた。日本では動物実験や動物福祉に関しての意識、もしくは法整備が世界標準と比較して低い、もしくは遅れているといった指摘がある。また畜産動物福祉のランキング(世界動物保護協会)によれば、日本は世界で最低ランクの「G」に格付けされている。「ABEMA Prime」では、動物福祉の専門家からの意見、脳科学者・茂木健一郎氏からは、科学者としての配慮と動物実験の必要性が語られ、双方の考えがぶつかった。

【映像】これは残酷?実際に行われる動物実験

■日本の法規制は「50年遅れている」と動物福祉専門家

畜産動物福祉 世界ランキング

 動物実験に反対、あるいは現状の体制に批判的な立場の専門家からは、日本の法制度の不備が指摘された。動物保護団体・PEACE代表の東さちこ氏は、日本の現状を「50年遅れている」と批判する。東氏は欧米との差について次のように述べた。

 「1960年代から80年代ぐらいに欧米では規制を設けて、動物実験施設の登録制にするなど整備してきている。日本はその頃に動物愛護法の原型になる法律ができた。ただし実験動物については、理念的なことや、できる限り苦痛を与えないことだけ入れて、何も取り組まずに今に至る。法的保護という面では、日本はすごく遅れている」。

 また、動物倫理を研究する名古屋大学大学院研究員・竹下昌志氏も、日本の科学界における構造的な問題を指摘する。「日本は動物理念において間違いなく遅れている」 とした上で、科学者が実験を継続せざるを得ない背景を語る。「法制度が整っていないせいで、科学者として動物実験をやめていくことにインセンティブが働かないために、どうしても動物実験がなされてしまっている」と、やめることへの動機づけが弱いとした。

 さらに両氏は、日本の動物実験が「不透明」である点でも一致している。竹下氏は「日本は、そもそも統計が全然取られていない。自主的に倫理審査委員会を置いて管理してい状態なので、全然見えてこない」と述べ、東氏も「把握する法的な仕組みがない」ことで、対策が取れていないとの認識を示した。

■科学の進歩に「動物実験は不可欠」

新薬開発と動物実験

 こうした批判に対し、科学者としての立場から反論を展開したのが脳科学者の茂木健一郎氏だ。茂木氏はまず、認知症研究を例に挙げて動物実験の必要性を説いた。「アルツハイマー病とか、本当にかかると大変。今のところアルツハイマーのような認知症を、根本的に治す方法は知られていない。その実験は、やはりラットやマウスを使う。メカニズムはまだよくわかっていなくて、慢性的な炎症が原因になっている説が有力だが、そのメカニズムを理解するためには動物実験は不可欠だ」。

 続けて、癌研究における特殊な事例にも言及し、実験の代替が困難であることを強調する。「ハダカデバネズミという動物がアフリカの砂漠にいるが、この動物はなぜかガンにならない。ハダカデバネズミを研究して、癌になる動物とそうではない動物、何が違うのかを理解するのは、どうしても必要なことだ」。

 また、茂木氏は東氏が主張する「日本は50年の遅れ」という指摘についても、「1人1人の研究者や実験室レベルでも、倫理基準を満たさないと論文を出せないし、そもそも科学ができない。日本が諸外国に比べて極端に悪いという認識はしていない」 と異論を唱えた。さらに化粧品開発についても、「皮膚の様子で体のコンディションもわかる。皮膚を科学的に理解するのも、ものすごく重要な研究テーマ」であり、単なる刺激試験とは異なるサイエンスとしての側面を訴えた。

■感情と現実の狭間 求められる透明性

脱動物実験 世界の動き

 他の出演者からは、動物を愛護したいという「お気持ち」と、科学の進歩という「現実」の間で揺れるコメントもあった。EXIT・兼近大樹は「気持ち的には、僕は(動物実験は)ゼロでいいなと思う」 と吐露しつつも、「科学者が作り上げたもの、声を無視して、一般の人が気持ちでルールを作ってしまうのは怖い」 と、感情優先による研究停滞への危惧を口にした。

 また相方のりんたろー。は動物福祉の線引き自体が「人間が引いた線」であるというエゴを指摘し、「僕が必要だと思うのは我々の生活、食も化粧品もそうだが、そういう実験の上で成り立っているってことをしっかり理解する」と、恩恵を受ける側の責任を強調した。

 さらに改めて茂木氏は「法制度や透明性を確保するのは、ものすごく大事。ただしそれと動物実験でわかる科学の内容は別問題。みんなが科学にもっと興味を持つことで、結局透明性も高まるし、なぜ動物実験が必要なのか、あるいはそれを代替することができるかについての理解も深まる」と加えていた。 (『ABEMA Prime』より)

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