埼玉県八潮市で道路が陥没してトラックの運転手が亡くなった事故からまもなく1年です。復旧工事が続く現場周辺では、今も悪臭と振動が続いていて、硫化水素が原因とみられるエアコンの故障など、新たな被害も出てきています。
現場どうなった?
八潮市の陥没事故からまもなく1年。直径40メートルほどの“巨大な穴”。中に取り残されたトラックの運転手が亡くなりました。
陥没現場は今、どうなっているのでしょうか。
陥没があった交差点では現在も、大掛かりな工事が行われていて信号は消えたまま。道路は通行止めとなっています。
「買い物へ行くのにも(通行止めで)車が通れない」
「(Q.道が混んだりは?)ありますよ。朝、夕はすごい交通量」
「振動のほうが気になった。騒音も含めてだが」
「(Q.今も結構音が)そうですね」
住民の生活は今も不自由なままです。
県からの補償は10万円
20年ほど前からスナックを営んでいる松井多恵子さん。店の目の前が、陥没があった交差点です。
「(Q.穴はどのあたりに?)目の前です」
「(発生当時)『助けてあげるよ』って一生懸命、救急の人が声をかけていて、(トラックの運転手が)返事していたのも聞こえていた」
2階の自宅からは、重機などが復旧作業を行う様子が確認できます。
松井さんは店の休業を余儀なくされ、帳簿は去年4月以降、白紙のまま。店内に貼ってあるカレンダーは。
「(Q.今年のカレンダーじゃない?)違います。そのままにしてあります。お店もそのまま。だから時が止まっている。ここは」
陥没現場から半径約200メートル内の事業者に対して支払われた埼玉県からの補償は10万円です。
相次ぐエアコン故障
そのうえ、自宅でも“深刻な問題”が起きています。
「クーラーもダメになった。うちは2台ダメに。(周辺で)軒並みクーラーがダメになるということはないでしょう」
埼玉県によると、この1年で「エアコンが壊れた」という相談が複数寄せられていると言います。
エアコンの故障と道路陥没。因果関係はあるのでしょうか。
3カ月ほど前にエアコンが壊れたという住民が撮影した写真。室外機のバルブ部分が黒く変色しています。元々は金色だったと言います。なぜ黒く変色してしまったのでしょうか。
中山佳則氏
「硫化水素が原因ではないかなと思う。腐食によって(器具が)外れやすくなる可能性もありますよ」
中山さんによると、破裂した下水道から広がっている硫化水素でエアコンの部品が腐食し、劣化したことが故障の原因ではないかと言います。
松井さんはすぐに修理を業者に依頼。費用は自己負担となり、2台で約23万円に上ります。
エアコンの修理費用ついて県は、硫化水素との因果関係を調べたうえ、個別に対応していくとしています。
「お金が欲しいわけじゃない。苦しみを分かってほしい」
車に貴金属まで腐食
陥没現場から約70メートルの場所に住む木下史江さんは、この1年で“日常が一変した”と言います。
「毎月とにかくいろんなことが起こりましたし、自分の心の変化も今まで経験したことのないことが続きました」
取材を進めていくと、現場周辺で共通する、“生活への3つの影響”が見えてきました。
実際に見せてもらうと…。
硫化水素が原因とみられる金属の腐食被害。住民から埼玉県に「車が変色した」などと62件の相談が寄せられていると言います。
金属の変色被害は家の中でも…。
去年7月、近隣住民から「洗面所の金属が黒ずんだ」という話を聞き、自身のお風呂場を見に行ったところ、腐食し、黒くなっているのを確認しました。
2カ月後には、黒い部分の面積が大きくなり、先月もさらに広がっていったと言います。他にも…。
「(Q.アクセサリー)これ本当に普通のシルバーだったんです」
「(Q.こういう色じゃない)じゃないです。元々はシルバーで、置いてあっただけなんですけど、黒く…気が付いた時にはこうなってしまいまして」
こちらのアクセサリー。保管場所を変えたことで、10日ほどで黒く変色してしまったと言います。
悪臭問題「外にいられない」
木下さんが深刻に感じていることは他にもあります。
硫化水素が原因とみられる「悪臭問題」。
この問題に対し、県は。
「硫化水素の濃度が低いため直接的な健康被害はないが、臭いやストレスによって自律神経が乱れることはあるので、間接的な影響はあるだろう」
「精神的な不安って皆さん持っていて、それを誰にどう伝えて自分たちのことを分かってもらえば良いのかということがつらかった」
これらを受け、県は心理士による個別の相談などを行っています。
振動問題 部屋の壁の亀裂
日常生活への影響は他にもあります。
「24時間、何カ月も何カ月もこの家が(工事の影響で)揺れていました」
激しい振動の影響か、約築20年の木下さんの家には…。
「(Q.これ元々なかった)なかったです」
「実際に部屋の壁には亀裂も入っていますし、ここにいても、いつこの家が崩落するんじゃないかという不安の中、過ごしていました」
2階の子ども部屋の壁にできてしまった亀裂。さらに取材中、部屋の天井にも亀裂が入っていることに気が付きました。
陥没現場周辺では、「工事の振動で家に亀裂が入った」など住宅被害の訴えが約40件寄せられています。
工事の振動と家の亀裂の因果関係について、県は。
「工事が終わり次第、それぞれの住宅で調査を実施し、費用を補償する方針」
「5月に(転落したトラック運転手を)救出するまでの間の揺れはすごく激しかった。救出されるまではじっと耐えながら見守る生活が続いた」
振動は5月以降、徐々に弱まってきたと言いますが、今も工事の影響で室内の観葉植物は小刻みに揺れ続けていると言います。
陥没事故から約1年経った今も続く“3つの問題”。そこで木下さんは去年、近隣住民らとともに“被害者の会”を設立しました。
影響いつまで?補償は?
八潮市の陥没事故からまもなく1年。住民は、低濃度とはいえ硫化水素にさらされることや、子どもへの健康影響など、精神的な不安を抱え続けています。
現在も続く復旧工事の今後のスケジュールについてです。
去年の12月に新しい管の設置を完了しました。現在は、その下水管の内側に腐食が進まないような工事が行われています。
この先、2月から3月では新しい下水管に水を流せるように切り替えていきます。
そして、陥没箇所の穴や水道・ガスなどインフラ関連の復旧は、やはり数年程度はかかる見通しとなっています。
そして、悪臭がいつまで続くのかについてです。
埼玉県の担当者は「臭い元が小さくなるような努力はしているが、完全に臭いがなくなるのがいつかというのは今の時点では言えない」と話しています。
そして、補償についてです。
半径200メートルの住民が対象となっています。
八潮市は見舞金として1世帯あたり3万円の補償。埼玉県は1世帯あたり3万円、これに加えて1人あたり2万円。あるいは事業者に10万円の補償となっています。
その他に、「臭いなどのストレス」による医療費を賄い、「車の変色」に関しては今月5日から受け付けを始めました。
その他の「黒いサビ」が出てくるものに関しても、今後補償を案内していく予定だということです。
(2026年1月23日放送分より)




























