社会

ABEMA TIMES

2026年1月24日 15:00

「女性らしさの象徴が胸。(乳房切除で)自分自身の喪失感を感じた」「見慣れなさ、違和感はある」乳がんで全切除した当事者に聞く葛藤

「女性らしさの象徴が胸。(乳房切除で)自分自身の喪失感を感じた」「見慣れなさ、違和感はある」乳がんで全切除した当事者に聞く葛藤
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 日本では今、年間9万人以上が「乳がん」に罹患(りかん)すると言われている。そのうち半数以上が乳房を全切除する中、葛藤を抱える人は少なくない。

【映像】乳がんで全切除した胸(実際の映像)

 「女性ではなくなってしまう」といった、ためらいから、手術の決断が先送りされる場合もあるという。『ABEMA Prime』では、当事者や専門医とともに“乳房を失う喪失感”について考えた。

■乳房全切除した当事者

YUKOさん

 YUKOさん(41)は1年前、右胸の乳頭の裏側にステージ1の乳がんが判明し、右の乳房を全切除した。手術でがんは取り除けたが、同時に彼女を“喪失感”が襲った。「女性らしさの象徴が胸。それを突然失わないといけず、自分自身の喪失感を感じた」。

 それでも再発を防ぐために投薬治療を続ける中、ある心の変化があったという。「胸がなくなることで、女性らしさや『周りからどう思われるか』が恐怖だったが、『女性として魅力的』というより、『自分がより魅力的に見える、自分が好きな服を着られたらいい』と思えた」。そして、「女性らしく」より「自分らしく」いたいと、今まで身に着けなかったアクセサリーを取り入れるなど、少しずつ自分自身と向き合った。

 発見した経緯は「子ども2人の授乳が落ち着いたタイミングで、大丈夫だと確認するために検診を受けたところ、乳がんだとわかった」のだそうだ。「私の場合は、全摘手術しか選択肢がなかった。乳頭の裏側に、小さいがんが広がっていて、全摘しかないと2人の医師から言われた」。

 手術を受けた後は「40年間左右に当たり前のように付いていたものがなくなり、違和感を覚えた。今も見慣れていない。子どもに授乳した思い出も、胸には宿っていて、その寂しさもあった」と明かす。

 子どもに対しては「見た目でわかるため、全摘手術が決まった時点で伝えた。反応に不安はあったが、思ったよりも動揺せず、むしろ闘病にあたって励まされた」と振り返る。「“喪失感”というと、すごく悲しみに襲われるニュアンスで、自分の場合は違うと思うが、やはり見慣れなさや違和感はある」。

■再建を選んだ当事者

谷澤景子さん

 そこで選択肢の1つになるのが、乳房再建手術だ。「乳がん体験者コーディネーター」の谷澤景子さん(47)は、9年前に左胸の全切除とともに、再建手術を受けた。「乳管の中を7センチほど、乳頭までがんが伸びていた。部分切除もできるが、その場合は乳輪や乳頭など3分の2を切らなければならなかった。それであれば、『全摘して再建手術を受けた方が、きれいに形を直せるのでは』と選んだ」と語る。

 理由を「片側が明らかにないとなると、洋服を着ていても、左右の差が大きく出てしまう。全摘経験者からは『体のバランスが崩れた』という話も聞いていたため、乳房を再建したいと考えた」とする。

 具体的な手術の手順は、「再建にもいろいろな種類がある。がんを摘出し、肋骨(ろっこつ)と大胸筋の間に、ティッシュ・エキスパンダーと呼ばれる水風船のような器具を挿入してから、傷口を閉じる」のだそうだ。

 その後については、「そこへ少しずつ水を足し、中から大胸筋と皮膚を拡張して、健常者と同じくらいの胸のサイズにまで膨らませる。そしてシリコンインプラントという、柔らかい人工物を入れた。サイズ的には健常者の胸とほぼ近いが、取ってしまった乳輪や乳頭はまだ再建しておらず、片胸はのっぺらぼうの状態だ」と明かす。

■再建のリスク

明石定子医師

 これまで3000人以上の乳がんの手術を行ってきた東京女子医科大学病院の明石定子医師によると、「がんのステージは浸潤部、つまり“しこり”の大きさで決まる。浸潤部の切除に加え、乳がんの場合は、母乳を運ぶ“乳管”に沿ってがんが伸びていることもあるため、しこりは小さくても範囲は広い」という。

 また、「“0期”であっても、乳管に沿って範囲が広いと、全摘しないといけない場合がある。外からわかりやすい『しこりの大きさ』だけでなく、『どれだけ広がっているか』や『乳頭を残せない場所にあるか』、最近では遺伝性乳がんの場合は全摘を勧めることが多いなど、ステージだけでなく、状況に応じて術式は変わる」と説明する。

 一方で、乳房再建の実施率は、1割程度にとどまる。明石氏は「海外と比べて非常に低い。日本の保険制度では、乳腺外科医と形成外科医が一緒に手術しないといけない縛りがあるため、形成外科医がいない地域では、選択肢を示しにくい。地域格差も割と大きい」と、その背景を説く。

 再建時の注意点としては、「人工物による再建では、10年程度で破損のリスクが出てくると言われる。絶対破損するというわけではないが、破損時には入れ替える必要がある。また人工物の場合、もし細菌感染をしてしまうと、取り出さないといけない」と話す。

 切除後は周囲の反応を気にする人もいるが、YUKOさんは「夫はショックを受けず、何も変わらなかった。胸が好きで結婚したわけではないため、パートナーとの関係も変わらないと結論づけた」という。

 それでもなお喪失感を覚えたのは、なぜなのか。「10代や20代の時は『胸の大きさが女性の魅力につながる』と言う人は周囲にいたし、私自身もそう思っていた。この歳になっても、『胸が垂れる』と気にする同世代は多い。男性も女性も『胸は女性の魅力』と捉えている部分があり、自分も無意識に思い込んでいた」と推測する。

 喪失感の大小について、谷澤さんは「パートナーの有無でも異なる」と語る。「これから恋愛をしたり、ともに過ごしたい人が出てきたりした時に、胸がないことが踏み出す勇気の足かせとなる人はたくさんいる。本来は胸の有無で、その人自身が変わるわけではないが、どうしてもそこに重きを置いてしまう」。

(『ABEMA Prime』より)

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