かつて日本の国際貢献として大きな注目を集めたJICA海外協力隊が今、存続の危機に立たされている。応募数が激減し、さらに不安定な世界情勢も追い打ちをかけている。「ABEMA Prime」では、募集や選考を担当するJICA事務局の内山貴之氏、現在マーシャル諸島で活動中の吉田夏喜さん、そして元隊員・甲賀悠衣さんをスタジオに迎え、当事者たちの実体験を交えた議論が行われた。
■応募者はピーク時の6分の1、直面する「激減」の現実

昨年11月、発足60周年を記念する式典に天皇皇后両陛下が出席されるなど、海外協力隊はこれまで日本の信頼醸成に大きく寄与してきた。途上国のインフラ整備、農業、教育、医療といった幅広い分野で課題解決に取り組んでおり、派遣実績はおよそ5万8000人に及ぶ。
しかし、その勢いには陰りが見えている。ピーク時に年間およそ1万2000人あった応募者は、昨年度には2000人を切るまでに激減。JICA青年海外協力隊事務局の内山氏は、若者の認知度低下について次のように述べる。
「今は若い人の間で、認知度がすごく落ちている。昭和の頃は青年海外協力隊のことを若い方も知っていたが、今調べたら4割ぐらいの人は名前も聞いたことがない。名前は聞いたことあるけどよくわからない、というところまで広げれば7割だ。そういった状況なので、まずは知ってほしい」。
かつては学校現場に協力隊経験者の教師が多く、生徒にとっても身近な存在でもあった。しかし、現在は国内の教員不足などの影響もあり、教育現場から海外へ出る機会が減り、若者に情報が届きにくくなっているという。
協力隊への参加を躊躇させる要因の一つに、現地での活動における理想と現実のギャップがある。2015年にアフリカのマラウイ共和国へ派遣された元隊員の甲賀さんは、当時の苦い経験を明かした。「派遣された最初は、やる気を持っていく。ところが現地で過ごしていく中で、あまり必要とされていないと感じることがある。やる気満々で行ったのに、むしろ何のために来たんだろうと。それはかなりしんどかった」。
甲賀さんは音楽や図工などの情操教育向上のために派遣されたが、現地教師からは「現状で回っているのに余計な仕事を増やしやがって」といった態度を取られることもあったという。内山氏によれば、こうしたミスマッチは「要望を出した担当者が人事異動で変わってしまう」などの要因でも発生し、活動開始直後からスムーズに進むケースばかりではないのが実情だ。
現在、マーシャル諸島でデザイン隊員として活動する吉田夏喜さんも、現地での葛藤を語る。「現地のニーズと、求められていることのギャップはある。私も本当に貢献できているのかと、すごく悩むところは多かった。また、日本の当たり前が当たり前ではない国に派遣されるので、そのギャップもある。例えば勤務態度であったり、締め切りを守る意識だったりとか、そういう基本的なところからも全く違う。その中で仕事するのは本当に大変だと感じている」。
■「自分のために」と割り切ることで見えた新たな価値

現実に直面しながらも、隊員たちはそこから独自の価値を見出している。甲賀さんは、1年間の葛藤を経て、ある「諦め」に到達したことで道が開けたという。「1年ぐらい経った時に諦めた。現地のためもそうだが、まず自分のためにやろうと考えたら、そこから活動ができるようになった」。
この「自分のために」という視点は、現代の協力隊のあり方を考えるヒントになっている。吉田さんは帰国後、協力隊の同期との繋がりを通じて地方創生の仕事に関わることが決まっており、「今回この協力隊での経験も生かしながら活動できたら」と、自身のキャリアにおけるメリットを強調した。
また、内山氏は経済的なハードルの低さもメリットとして挙げる。「経済的に厳しくても、海外協力隊は国のプログラムなので参加できる。経済的理由で社会貢献や社会活動ができないと日本で苦しんでいた人は、協力隊に参加したら日本政府のプログラムとして、海外で本当にいろいろ経験できる」。実際、派遣中は生活費が支給され、帰国時には「活動完了金」という手当もつくため、帰国後の再出発も支えられている。
番組では、これまでの「奉仕」というイメージに縛られない、多角的なメリットについても意見が交わされた。EXITの兼近大樹は、スキルアップと自己研鑽の場だと注目。「ボランティアというよりかは、楽しくスキルアップができる、すごくいいもの。自分では行けないところに行ける。ボランティアを超えた何かであるはず」と、個人的な成長の場としての価値を述べた。
また、yutori代表・ゆとりくんは、SNSでの発信がキャリアに繋がる可能性を指摘する。「(派遣先で)悩んでいる等身大の感情とかも含めた環境があり、そういう訴求があったら、若い子でも行きたいって思うことが結構増える気がする。Vログを撮ってバズって、フォロワーを増やし、一流商社に就職」といった新しい成功モデルを提案した。
さらに内山氏も、日本の信頼を守るための投資としてのメリットを述べた。「日本を本当に信頼してくれる方が増えれば、日本の製品を買いたいとか、日本に自分の国の資源を売りたいという国もどんどん増えていく。もっともっと多くの方に参加してもらいたい」と、国家レベルのメリットを説いた。 (『ABEMA Prime』より)