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2026年2月8日 11:00

古代ペルーの神々は“お腹が空く”?黄金といけにえが語るアンデスの世界

古代ペルーの神々は“お腹が空く”?黄金といけにえが語るアンデスの世界
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アンデス山脈に位置する古代遺跡「マチュピチュ」。日本から約15000キロ離れた南米・ペルーで生まれた、謎多き文明の至宝が、今、日本で一堂に会しています。黄金に輝く品々や、不思議な姿の土器から見えてくる、古代ペルーの人々の“神さまとの付き合い方”とは……。

アンデス流・神と人の関係

佐藤ちひろアナウンサー
「すごい、これ鳥の羽のようですよ。まぶしいくらいキラキラですね、圧巻ですね」

現地政府公認、古代ペルーの至宝、約130点が日本に上陸。謎のベールに包まれた古代ペルーの神秘と魅力に迫ります。

案内してくれるのは、古代ペルーの考古学・歴史学・民族学に精通する、東海大学文学部文明学科の大平秀一教授です。

東海大学教授の大平秀一さん
東海大学教授の大平秀一さん
大平秀一教授
「スペイン侵入以前のペルーには、文字がございませんでしたので、わからないこともまだまだたくさんございますので。こういう良い物がまとまって展示されるということは数少ないことだと思います」
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そんな貴重な宝物の中でも、特に注目なのが黄金の副葬品です。

光り輝く黄金
光り輝く黄金
佐藤アナ
「すごいですね、まぶしいくらいキラキラですね。黄金ですよね。これだけ立派な物を付けていたということは、この方はかなり地位の高い方だったんですか?」
大平教授
「ヨーロッパ的な論理で言うと、そういうことになってしまうんですけど、この時代のアンデスというのは資本主義というのはカケラもないんですね。アンデスにおいて黄金は山の神々の所有物と言われることもございますので、神々と関わる人、シャーマンのような行為をする人が身に着けていたり、あるいは彼が埋葬された時に埋葬用に作られるものもございますけれども。貨幣的な価値において価値が高いというわけではないのだろうと思うわけですね」
佐藤アナ
「黄金の価値のほうで考えてしまっていましたけど、神様に近づくために黄金ということなんですね」
大平教授
「そうですね。神々の要素の一部であるということですね」

その黄金の副葬品には、当時の人々が神聖なものと捉えていた生き物の姿も表されています。

佐藤アナ
「これは何の模様?」
大平教授
「口を見ていただくと分かりますよね、いわゆるネコ科動物。そして丸いものが伸びていますけども、あれは鳥の羽でしょうね」
ネコ科動物
ネコ科動物

さらに、耳飾りの波打つ形は、ヘビを表現していると言われています。

佐藤アナ
「どうして鳥とネコ科の動物、そしてヘビが選ばれたんですか?」
大平教授
「一番強い動物というのは着目されていいですね」
佐藤アナ
「ちょっと怖いもののほうが、やはり祀られやすかったんですか?」
大平教授
「やはり力を持つものですのでコントロールしなければ色々なことが起こりうる。ただアンデスの場合はいかなる昆虫にも、生きとし生けるものすべてに意味を付与しますので、背後に神が関係しているという捉え方になる」
佐藤アナ
「日本の八百万の神のような考え方と似ていますよね」
「対大地で人間を捉える」
「対大地で人間を捉える」
大平教授
「似ているというより、そのものだと申し上げてよいと思います。人間という生き物は、言語や文化や慣習が一部違ったとしても、かつてはみんな同じように対大地で人間を捉える」
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“変身する神”の物語

こうした考え方は、アンデス地域で数多く出土している土器からも見て取ることができます。

姿を変えるアイ・アパエック
姿を変えるアイ・アパエック
大平教授
「こちらのほうの土器も結構面白いものが展示されていると思います」
佐藤アナ
「これはカニが模様になっているんですか?」
大平教授
「そうですね。これはモチェと呼ばれる時代の、ペルー北海岸にあった文化の土器になりますけれども」

モチェ文化の神話上の英雄アイ・アパエックが、カニと一体化した姿を表現したこちらの土器。

カニと一体化した姿を表現した
カニと一体化した姿を表現した
佐藤アナ
「横とか見てみますと、カニの脚と人の足、両方ありますよ」
海底目線では“島”は“山”
海底目線では“島”は“山”
大平教授
「神々が動物たちと一体化して示されているという、なかなかユニークな表象ではないかなと思うんですけれども。先ほど山の神と申し上げましたけれども、アンデスの海岸部で聞き取り調査をしたことがございまして。潜水夫を探し歩いて、いろいろなことを聞いていくうちに、実はこういう所に西洋科学的にいう生物多様性があるんだと。それはどういう所かというと、実は島だったりするんですね。我々は“島”と言うんですけども、その人たちの話を聞いているうちに私も気づいてきたのですが、海底目線では“島”は“山”」
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こうした土器は他にも展示されています。

プトゥトゥと言われるホラ貝
プトゥトゥと言われるホラ貝
大平教授
「こちらもプトゥトゥと言われる、いわゆるホラ貝ですね」
佐藤アナ
「何だかかわいらしいデザインですね。貝の中から『こんにちは』というかのように出てきていますよね」
大平教授
「そうですね。おいしいお肉が入っているんですけど、それすらも神々のエネルギーというか活力というか、自然現象なんだけれども、その背後に神の力というものをアンデスの人たちは捉えるわけですね」

英雄アイ・アパエックが姿を変えるのは、海の生物だけではありません。こちらはある植物に姿を変えています。

トウモロコシ
トウモロコシ
佐藤アナ
「トウモロコシですか?もしかして」
大平教授
「そうですね、その通りです。トウモロコシというのはアンデスの重要な穀類。お酒をこれで作る。チチャというお酒で、お祭りや儀礼で非常に重要になりますね」
佐藤アナ
「日本で言うところの、コメのようなもの?」
大平教授
「そうですね。かつては主食だったと捉えて良いですね。作物なんかもカゴの上に乗せて大地に埋めてあげたりする、すなわち神々に供物を渡すということですね。時には黄金を一緒に埋めてあげる。そういうような慣習もありました」
佐藤アナ
「山の神様からいろいろなエネルギーを得て、みなさんも神様が宿ったものをお戻しするような感覚?」
「神様は食べなければお腹が空いちゃう」
「神様は食べなければお腹が空いちゃう」
大平教授
「戻すと言うより、神様は食べなければおなかが空いちゃうんですよ」
佐藤アナ
「なるほど。神様もエネルギーがほしい」
大平教授
「そうなんです。それはどうにもならない」
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山の神は“血”も好物

時に、山の神々へ捧げられたのは植物や黄金だけではありませんでした。

山の神々へ捧げるいけにえの儀式
山の神々へ捧げるいけにえの儀式
大平教授
「山の神々も生きとし生けるものと同様に、おなかが空くのですが、時に大好物もあげなければいけないんですね。その大好物と呼ばれるものが血液、人間でもあるんですね。アンデスの場合、戦いをして捧げる人を、いわば狩ってくると。こちらのほうは戦士が抗争に臨む時の正装のようなスタイルをしていますね。こちら側は捕獲されてあちらの世界に向かうという寸前の姿。だから服を着ていないと」
大好物は血液、人間
大好物は血液、人間
佐藤アナ
「たしかに、耳元も耳飾りをつけていたようなあとがありますね」
大平教授
「(いけにえは)なんて野蛮なというような文化イメージを伴いがちなんですけど、560年から592年、33年間ほとんど雨が降っていないというのが(調査で)確認されていて、それはどういう現象かと言うと神々にエネルギーがない現象。だから何としてもそれを元気づけなければいけない。彼らの論理として、これは必要だった。いろいろ考えさせられるところですかね」

展示の中には、戦いに向かう戦士が身につけていたとされる実際の装具もあります。

中に石などを入れ動くとガラガラ鳴る
中に石などを入れ動くとガラガラ鳴る
大平教授
「象形土器に模様があったと思いますが、ヘルメットのようなものがありまして、イヤリングですね。それと三角になった胸飾りのようなもの、そして丸い円盤のような模様、水玉模様みたいなもの、腰にはチャルチャルチャというふうに呼ぶんですけれども、この中に石なんかが入っていて、ガラガラって鳴る物がついているケースが多いんですね。図像だと。これで戦うとですよ、風が吹くとジャラジャラ鳴るし、いつも動くとガラガラ音がするし、僕はここにいるよと教えてしまうようなものなので、通常の戦争や抗争とは違うイメージで捉えたほうがいいのかなというふうに思いますね」
佐藤アナ
「どちらかと言うと儀式的なものなんですね」
大平教授
「そういうことですね」

(2026年1月23日放送分より)

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