社会

グッド!モーニング

2026年2月7日 17:00

浮世絵の“おじさん”が主役に!?太田記念美術館でひもとく江戸のユーモアとリアル

浮世絵の“おじさん”が主役に!?太田記念美術館でひもとく江戸のユーモアとリアル
広告
4

 おじさんが描かれた浮世絵には、どんな秘密や役割が隠れているのでしょうか。太田記念美術館の企画展から、ユーモラスで味わい深い“おじさん”の世界をたどります。

「人気NO.1おじさん」とは?

 東京・渋谷の太田記念美術館では、浮世絵に描かれた味わい深い“おじさん”をテーマにした企画展を現在開催中です。まずは、歌川広重の「東海道五十三次」からです。一見、旅の一場面ですが、実はこの中に人気NO.1のおじさんがいます。

歌川広重の「東海道 五十四 五十三次 大津」から
歌川広重の「東海道 五十四 五十三次 大津」から
上席学芸員 渡邉晃さん
「こっちがちょっと面白いんですけど、なんかすごく怒っているおじさんがいて、暴れているんですよ」
佐々木若葉アナウンサー
「かなり服もはだけて、すごく怒っていますね」
渡邉さん
「すごく怒っていて、けんかとか起きると野次馬って集まってくるじゃないですか。こっちの方がすごく面白くて」
人気投票1位(3年前)
人気投票1位(3年前)
佐々木アナ
「どういう表情なんですか、これは?」
渡邉さん
「ぼーっと『やっているな』という感じで、けんかの様子をちょっと遠くから見ている。前回3年前にうちで同じコンセプトで展覧会をやった時も、SNSでこのおじさんは、人気投票をやったところ、1位になった人なんです」
佐々木アナ
「おじさんナンバー1!?」
渡邉さん
「さらにおじさんだけじゃなくて、もうちょっと斜め上を見ると、牛も見ています」
佐々木アナ
「本当ですね!興味津々な顔をしていますよね」
「これまで見てきて思ったんですけど、広重の絵って、写真でパシャって撮ったかのような」
渡邉さん
「広重の絵はスナップ写真っぽいといわれることがありますけど、例えば北斎の絵って舞台っぽいねって言われることがあって、風景画を描いていても幕が開きました、そこにハイポーズとって下さいって感じでバーンと人がポーズとっているみたいな、完璧に構築されているという雰囲気が北斎の絵はある。広重の絵ってその瞬間をパシャって撮った。だから一人ひとりは全然力は入っていないというか、ナチュラルに生活をしています。そういう印象を受けるというのはあると思います」
広告

 そして、風景画に描かれているおじさんたちには「ある役割」があるといいます。

土地の特色や風俗を説明する存在
土地の特色や風俗を説明する存在
渡邉さん
「例えば武士のおじさんが土地の大津絵を買っているなど、風俗を説明する存在としておじさんが大活躍している」
佐々木アナ
「このけんかをしているおじさんも私たちに大切な何かを教えようとしているということなんでしょうか」
渡邉さん
「広重にそこまでの思いがあったかは分からないですが、実際にこういうことが街道でしょっちゅうあったんだろうなというのは想像しますよね」
おじさんがいれば物の大きさが分かる
おじさんがいれば物の大きさが分かる

 また、風景画に描かれた人物は、暖かみを演出する存在にもなります。こちらは、歌川広重の「木曽海道六拾九次之内」の一枚です。描かれている人物を、AIで消してみると…。

佐々木アナ
「あ!あ!本当ですね!確かにちょっと寂しい感じがします」
渡邉さん
「おじさんがいるといないとでは、絵の雰囲気が本当に変わるなというのがこのAIで再現してみるとすごく想像できるなと」
佐々木アナ
「おじさんがいることで、この右の木がいかに高くて立派なのかということもすごく分かりますね」
渡邉さん
「そうですよね。おじさんがいないと比較対象がないので、縮尺とかを説明する存在にもなりますよね」
同じ場所を同じ構図で描いた浮世絵
同じ場所を同じ構図で描いた浮世絵

 同じ場所を同じ構図で描いた広重と葛飾北斎。人物の大きさが違うだけで、見え方がこんなにも変化します。

佐々木アナ
「おじさんって本当に大事なんですね」
広告

“おじさん”の美学

浪花名所図会 安井天神山花見
浪花名所図会 安井天神山花見

 浮世絵でよく題材とされているのが「花見の宴会」です。こちらは、楽しそうな雰囲気が伝わってきますが…。

佐々木アナ
「この立って踊っている男性は、着物の柄も豪華ですし、この日のために用意して、みんなに披露みたいな感じにしたのかなって思います。楽しそうなんですけど、奥の女性陣は、ぷっぷーみたいな本当に心からは笑っていないんじゃないかなみたいな表情ですよね」
渡邉さん
「実際にこのおじさんの感じを見ると、理解できるというか」

 花見中の一コマにちょっとほっこりしますが、中には、宴会芸だけに着目したこんな作品もあります。

お祭りや盆に飾る切子灯籠を表現
お祭りや盆に飾る切子灯籠を表現
渡邉さん
「『即興かげぼしつくし』というシリーズなんですけど、影絵遊びといったらいいんでしょうか。切子灯籠というお祭りとかでかかるような灯籠」
佐々木アナ
「この動きが、影、シルエット?」
渡邉さん
「そうなんです」

 道具や手足を駆使して、実際にあるものを再現し、障子に映る影を楽しむ宴会芸です。鶴の影絵の後ろでは…。

鶴の影絵の後ろでは…
鶴の影絵の後ろでは…
渡邉さん
「鶴の形を再現するためにもう命を削っています!みたいなおじさんが描かれていまして」
佐々木アナ
「この鶴の後ろにはこんな頑張っているおじさんがいるんですね」
渡邉さん
「馬鹿馬鹿しいことをものすごく一生懸命にやっている見本みたいなシリーズなんですよ」
佐々木アナ
「言っていいのかなって思ったんですけど、やっぱ馬鹿馬鹿しいことやっているんですね」

 さらに北斎が描いた宴会芸も登場します。

ドヤ顔
ドヤ顔
佐々木アナ
「すごい表情豊かですね」
渡邉さん
「すごいですよね。これも全力でくだらないことに取り組んでいる絵なんですけど。僕は一番好きなのは右上のドヤ顔をしている」
佐々木アナ
「すごいドヤ顔ですね」
渡邉さん
「すごいこれがドヤ顔の見本という感じですけど」
佐々木アナ
「本人は、おじさんは全力ですけど、くだらないですね」
「細かく描かれてますし、そのためにちゃんとものを見て、それを細かくうつし出しているんだなというのが分かりました」
渡邉さん
「素晴らしい指摘で、『北斎漫画』って実は、絵を志す人のための見本集みたいな作品なんですね」
佐々木アナ
「そうなんですね」
渡邉さん
「こういう面白い題材なんですけど、骨格とか筋肉とかは絶対間違えないみたいな、そういう意気込みを感じますよね」
佐々木アナ
「細部までこだわっているんだな、しっかり見て描いているんだなってことが伝わってきます」
広告

国芳門下や英泉も

 ユーモアあふれる作品は広重や北斎のものだけではありません。歌川国芳の弟子・落合芳幾による、江戸の“プチ事件”を題材とした作品です。

江戸の“プチ事件”を題材とした作品
江戸の“プチ事件”を題材とした作品
佐々木アナ
「これ、果物の皮みたいなものにすべっちゃってステーンってなっている様子」

 この豪快な転びっぷりに、うしろの担いでいた人も笑っちゃっています。

大笑いする子どもの存在でユーモアな作品に
大笑いする子どもの存在でユーモアな作品に
渡邉さん
「うしろの人もひどいので、笑っちゃっている。ズッこけている人がいるだけだと、なんか気の毒になっちゃうんですけど。ただかわいそうだね、大変でしたねってなっちゃうんですけど、子供が笑う存在としていることで全体として、笑っちゃおうという雰囲気になる」
佐々木アナ
「子供たちがすべって転ぶように仕向けたみたいな」
渡邉さん
「その可能性もないとはいえない、邪悪な作品に。子供たちのいたずらっ子の作品かもしれない」

 続いて、美人画で有名な溪斎英泉の作品です。こちらには、とっても珍しいおじさんが描かれているそうです。

ヒントは「目かつら」
ヒントは「目かつら」
渡邉さん
「ヒントはこちらになります」
佐々木アナ
「え!?これがヒントですか?」
渡邉さん
「はい。これをつけている人が絵の中にいるんです。これをちょっとつけて探して下さい」

 ということで準備完了。おじさん探しスタートです。

佐々木アナ
「え、あれ!見つけたかもしれないです。この左から2番目のおじさん?多分これですよね?」
目かつらとは
目かつらとは
渡邉さん
「これです。『目かつら』というものなんです。落語の方で最初にそういう芸をする人がいて、それを付け替えて、いろんな表情の目かつらをつけて笑わすみたいな芸があって、こういう宴会芸でもみんながつけて楽しんでいたというものらしいんです」
「この目かつらというのが実際につけている人の絵ってすごく少ないんですよ。僕もこの目かつらすごい興味があるので目かつらをつけている絵が出たら、必ずメモをしていて」
「やっぱ浮世絵って細部を見ると楽しいという話がありましたけど、手抜きがなくて、溪斎英泉なんかもおじさんもいれば女性たちもいますし、それぞれなんかやっているということで、探すのが楽しいのが浮世絵」
佐々木アナ
「本当ですね、どのおじさんも表情が違って、見入っちゃいます」

(2026年1月27日放送分より)

広告